第27話 魔人の国
馬賊達は行動不能にして、港町ソロンの中央広場に魔法で転送した。
その時、商人バンさんの使用人一人に同行してもらった。
バンさんの話しでは、貨物船が帰港中との事なので、爺さんも船員もいる。
適切に処置してくれるだろう。
まあ、馬賊も山賊も賊達は捕まれば縛り首だ。
「アスラ様は何をしに魔人の国へ行くのですか」
再び移動を開始すると、バンさんが質問してきた。
「あー、魔王になる為です。正確にはもうなっていますけどね」
「はっ!!」
「魔王になる為です」
「いえいえ、聞こえなかった訳ではありません。驚いたのです。そうですか……」
バンさんは何か深刻な顔になった。
「……うーーん」
なんだか、うなりだした。
「アスラ様、人間を雇うことは出来るのですか」
「はっ? 人間でもと言われましても、まだ求人はしていません」
「ふふふ、いい商人が仲間に入りたがっています。雇ってみませんか。きっと必要になる戦力だと思いますよ」
「あははは、僕はまだ何もできていないですし、今日死ぬかもしれない男ですよ」
「いいえ、これでも私は人を見る目には自信があります。アスラ様は人々から賞賛と名声をほしいままにする大魔王になると思います。そんなお方に直接お仕えできる好機を逃すわけにはいきません。この取引が終り次第アスラ様の配下としてください」
なんだか、バンさんが仲間になってくれた。
話しているうちに、国境に着いたようだ。
国境には魔人国の商隊がすでに到着していて、馬車ごと交換して取引は終了した。
「バンさん、この馬車をソロンへ運ぶのですか」
「はい、では私はこれで。荷物を置いたらすぐに戻ります」
「もしよろしければ魔法で転送しますけど、中央広場でよろしいですね」
「そ、それなら、使用人と荷物だけでお願いします。私はアスラ様に同行いたします」
バンさんは使用人に今後のことを託すと、俺にうなずいて見せた。
それを見て、荷物をソロンの中央広場に転送した。
「あんた達、人間のくせに魔人の国に来る気か」
魔人国の商隊のあるじが俺をにらんできた。
「はい」
「悪いことは言わねえ、やめときな」
「何故ですか」
「魔人の国は長くの間、魔王が不在だ。国が乱れきってしまっている」
「ふふふ、エドさん、だからこそアスラ様が、行かれるのです」
バンさんが口を挟んできた。
「なんだと」
「このアスラ様こそが魔王様になられるお方なのです」
バンさんが手のひらで俺を示した。
「あーはっはっは、こんな餓鬼がか! バンさん、あんたとは長い付き合いだが、魔人の国でそんな事を言ったら命を落とすぜ」
そう言うとエドさんは、相手をするのもアホらしいと、黙々と町に向って進み始めた。
俺たちもそれに付いていった。
「あの、町に着いたらどうする予定ですか」
バンさんが聞いて来た。
「まずは、領主屋敷へ行きます」
「はい」
「今日よりお前達は、俺の配下にしてやる。あー間違えた。僕の配下にしてあげますだ」
俺は、魔人の国では、乱暴な言葉遣いは封印するつもりだ。
まあ、激高した時は出来ないと思うけど。
「はあ?」
バンさんの目が点になった。
「ダメでしょうか」
「ふふふ、いえ、驚きましたが、アスラ様らしくていいです」
「あんたら、バカなのか」
魔人商人のエドさんがあきれてとうとう口を開いた。
「何がですか」
少しムッとしてバンさんがエドさんにくってかかった。
「領主の元にはオウブという強い将軍がいるんだ。殺されるぞ」
「そんなに強いのですか?」
俺は、強い将軍と聞いて目がキラキラしている、フォリスさんに変わって聞いて見た。
「ああ、強いね。オーガと互角に戦った話しは有名だ」
「な、なんだって、オーガと互角!!」
バンさんがすごい勢いで驚いた。
エドさんが、自分の事の様にどや顔をしている。
相手の戦力がわからなかったので少し心配していたが、どうやらオウブ将軍には負けなくて済みそうだ。
バンさんはハッと我に返った。
「アスラ様、オーガと互角の将軍です。少しやばくありませんか」
「どのレベルのオーガと互角かわかりませんが、僕もオーガとは互角以上に戦えます。会うのが楽しみです」
バンさんとエドさんが顔を見合わせている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます