第13話 王都へ
朝になり爺さんと船員が中心となって、暴徒の鎮圧をしている。
当然俺も協力をした。
「さすが、アスラ殿ですな。あっという間に治まりましたな」
「じゃあ、俺は帰ってもいいのか」
俺は焦っていた、家にフォリスさんとイルナを残してきたからだ。
「おかえりーー」
「お帰りなさい」
二人は何事も無かったように笑顔で俺を迎えてくれた。
フォリスさんの顔を見ることが出来て心からほっとした。
二人の笑顔を見ていると、このままではいけないと思いはじめた。
俺は、こんな出会いを考えていなかった。
だから、魔王になった。
魔王であることは隠して生きていくつもりだけど、バレたら恐らく勇者に殺されるだろう。
「二人とも頼みがあるのだけど……」
「なんだよ、気持ちわるいんだよなー」
「アスナ様なんですか」
「レベルを上げたいと思うんだ」
俺が勇者に殺されたあとでも、二人にはしっかり生きて欲しいと思っている。
俺が協力すれば二人はいっきにレベルを上げて強くなれるはずだ。
勇者と戦わなければ死なない程度には強くなって欲しい。
「かあちゃんと一緒なら、おいらはどこでも付いていくよ」
「わ、私は、アスラ様がそうしろとおっしゃるのでしたら。何でも致します」
フォリスさんが赤い顔をして返事をしてくれた。
「よし、じゃあ、まずは三人で爺さんの所へ行こう」
爺さんは町の中央の公園にいた。
「爺さん、俺たち三人は、王都に用事が出来た」
「そうか、わしもそろそろ、出航してしばらく帰れなくなる所だった。丁度よかったのかもしれんな。船はそのままにしておく、戻った時には自由に使ってくれてよいからな」
「ああ、ありがとう」
「じいちゃん、またね」
「お爺さま、ありがとうございました」
俺たちは、爺さんにあいさつを済ますと、移動魔法で王都に移動した。
「なあ、父ちゃんなんで王都になんか来たんだ」
イルナが質問すると、フォリスさんの目が輝いた。
俺は、迷子にならないように手をつないでいるのだが、なぜかフォリスさんは俺とは手をつないでくれなかった。
イルナを中央に挟んでフォリスさんと俺が並んで歩いている。
ちなみに俺にしか見えないが、ランロンもしっかり付いてきている。
「神殿でジョブの登録をする為だ」
ジョブは無くてもレベルは上げられるが、やはりあった方がはやく強くなれる。
例えば魔法使いになれば、魔法をガンガン覚えて魔力の上昇も多い。
「父ちゃんは神殿の場所がわかるのか」
「ふふふ、俺が住んでいた街だからな」
「えーーっ、すげーー」
「ほら、ここが神殿だ」
この世界での、ジョブは神殿でしか登録出来ない。
神殿は教団が管理して、その教団を教祖様が牛耳っている。
教祖様の権力は絶大で有ることは言うまでも無い。
そして、天神の勇者はこの教祖様に、大いに嫌われている。
神殿は換骨奪胎の神殿と全く同じ造りだ。
違うのは教団の作った作法に従わないといけないところだけだろう。
「今日はどの様なご用ですか」
受付の巫女が、話しかけてきた。
視線はイルナに向いている。
イルナは、汚い服を着た汚れた体の子供だ。
「ジョブの登録だ。この二人のジョブを登録したい」
「はい、かしこまりました。一人金貨百五十枚ですので、三百枚になります」
「白金貨三枚でもいいよな」
「は、はい。えっ、収納魔法が使えるのですか」
「こんなの、珍しくないでしょう」
「あ、はい……」
珍しくないよな。俺も使えるし、天帝の勇者も使えるのだから。
白金貨三枚を巫女に渡した。
「では、案内いたします」
案内係の巫女が案内してくれるらしい。
実は俺は、生まれた時から勇者だったから、利用したことはない。
神殿の中に案内された。
フォリスさんもイルナも緊張している。
供物で飾られた祭壇の中央に、登録用の台座がある。
「ここに手を当てて下さい」
言われて、二人が祭壇に手を伸ばした。
「さあ、どんなジョブでもいい、選択するんだ」
「では、私は武闘家にします」
「えっ」
俺と巫女は驚いた。
フォリスさんが選ぶジョブじゃ無いでしょ。
大丈夫なのか。
「じゃあ、おいらは上級神官だ」
「えっ」
また俺と巫女が驚いている。
普通は下級神官しか選べないはずなのに、いきなり上級神官はありえない。
「少々お待ち下さい」
そう言うと慌てて、巫女が走り出した。
「さあ、登録も終ったし、さっさと帰ろう」
俺は嫌な予感しかしないので巫女を無視して、大急ぎで神殿を後にした。
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