第17話
「朝だ………」
ただただ、精魂尽き果てた。
隣では、すぅすぅと眠る凛風。冷たかった肌も、俺の体温のせいですっかり人肌の暖かさになっている。
何があったかは聞かないでほしいが、ともかく体力がない。ある意味天国だったのだが、13歳VSモンスターでは勝てない。前世の俺は、ほとんど孤独な陰の者だったし……経験も……。
今日は軽く購買とかだけ行ってから、ゆっくり休んでしまおう……。
「というわけで、刀を2本粉々にしました」
「……え?」
呆然とする鍛冶屋さんに頭を下げ、説明をする。
「あの髪切りの刀、壊れたのかい……?壊れたというか壊したというか……ともかく、流石だね」
「いや、不可抗力というか……」
お兄さんに説明すると納得はしてくれたが、それでも呆れた顔だ。
購買のお姉さんなんか店員さんなのにお腹を抱えてものすごい笑ってる。失礼すぎないか?
「……ッ〜〜!!お腹痛い!」
「うん。で、新しい刀が欲しいという事ですね」
「はい……すみません……」
「いいですよ。素材は今何があります?」
「手負蛇の牙と魔石……あとコンシーが持ってた剣ですね」
「うぅん……これまた微妙な。牙は合成に使ったら面白い効果にできますが、ハルキ君向きではない気もしますね。コンシーの剣は売ったほうがいいかもしれません。★2の武器としては最低限だけどそのまま使えるという感じでしょうか」
「購買の素材をまた買うよりは、また何か集めた方がいいかもね〜、獄門街で他に何か手に入れてきたりしてない?」
2人に、火魔法スキルやキョンシーの事についても説明する。それを聞くと「大成功だったみたいだね、刀は壊れたけど」「良かったじゃない!刀は壊れたけど」と祝われた。半分くらいからかわれてないか?
「となると、余計にね〜、素材を自分で集めたほうがいいと思うわ。私は専門じゃないから、知りたければお兄さんに聞いてあげてね」
「私も持ってこられたものを見ているだけなので……知っている★2ですと、刀に合いそうなものはそれこそ髪切り、あとは鎌鼬とか……?あれは★3でしたっけ……?」
ツェルニ先生に聞いた方がいいと言う事で、2人に礼を言って先生の部屋に向かう。
ちょうど呼ばれていた事もあり、凛風を起こして連れて行く。
少しばかり目立ってしまったが、俺が隣にいれば敵でない事は分かる。無事にツェルニ先生の所に着いた。
「は〜い、どうぞ〜」
ドアを開けて先生の部屋に入ると、そこにはいつも通りの、ほんわかとした笑顔を浮かべている先生がいた。
「こんにちは〜、噂には聞いていましたがユニークモンスターをテイムするとは、侮れませんねハルキ君も〜」
「失礼します。そうですか……?」
「ユニークモンスターに会えるハンターはそこまで多くありませんから〜、激戦区に行けば増えますけど」
「は、はあ……ありがとうございます?」
「いえいえ〜、というわけで〜」
にこりと先生が笑みを浮かべて……その瞬間、先生から寒気の様なものを感じる。息が詰まる。今ここに行けば殺される。でも逃げたら殺される。どうすればいいんだ?俺は死ぬしかないのか?
極度の緊張に倒れそうになる中、ふっとプレッシャーが緩む。
倒れそうになるのを、先生が抱き止めてくれる。
「ごめんなさい〜、刺激が強すぎましたね〜」
お詫びです、と何故か膝枕をされながらツェルニ先生が申し訳なさそうに言う。
「ハルキ君のテイムしたその子がユニークなので〜、どれくらい動けるのかちょっとちょっかいをかけて見たんですけど〜」
と見られた凛風は、無表情のまま俺のそばにぴったりとくっついている。なんとなく心配そうにしているのと、ツェルニ先生に対して警戒しているのも分かる。
「でも何も動かなかったので〜、ちょっと長めに威圧しちゃいました〜」
授業のために必要でと謝られると、こちらも許すしかない。でも何故?
「そうですね、ハルキ君なら宿題も問題ないでしょうし先に言うと〜、2学期以降は本格的な実践に入るので〜、集団行動をする中に実力の飛び抜けた子がいるならその子は別にしようかな〜って。あとはキョンシーちゃんの実力が気になって〜」
「最後の方がメインでは……?凛風って名前なんですけど、こいつと戦って勝つまでは戦闘に参加させられないんです。そういう契約で」
「ふ〜ん、難儀ですね〜。わかりました〜」
そのお詫びとして?★2モンスターのおすすめについても軽く聞いてみた。そちらについては軽く二、三箇所のおすすめを聞いたが、それとは別にとっておきの情報とやらを教えてくれるそうだ。
「ハルキ君には怖い思いをさせちゃいましたから〜、リターンはあって然るべきで〜」
曰く。ここオウミ領からしばらく東にあるナンバ領では、大きな夏祭りが行われる。その時期に合わせて、一部の区画ではモンスターの生体も販売されているとか……。
「会員制の所とかもあるので〜、気絶しなかった事も評価して行くなら紹介状を書いておいてあげます〜。1人知り合いがいるので~」
「あ、ありがとうございます……」
夏休みの時期と丸かぶりする事になるか。行きたいが、地元に顔を出したい気持ちもある。しばらく考えないといけないだろう。
凛風と一緒に頭を下げて、ツェルニ先生と別れる。
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