第20話 魔法陣ぐるぐる◎
「魔法陣か……」
俺はいつも魔法を使うとき、無詠唱だから、魔法陣なんてのは描いたこともなかった。
アイリもそうだったし、魔法陣についてはなにも習っていない。
アイリも言っていたが、俺の魔法適正は史上最強レベルらしいからな。
魔法陣ってのは、本来誰でも魔法を使えるようにするためのものらしい。
だから、適性のあるものは魔法陣なんて描かなくてもいいというのが本来だ。
大昔は、ごく限られた人間が無詠唱で魔法を使うのみだったそうだ。
それを、一般人でも使えるように生み出されたものが魔法陣というわけだ。
「まあ、なんとかなるだろう」
ということは、魔法陣というのは、魔法を分解して図に起こしたものだ。
俺がこの場でゼロから生み出すことも、理論上は可能である。
設問は「無属性の衝撃波を生み出す魔法陣を描け。威力は問わない」というものだった。
普段俺が頭の中でやっている魔法の組み立てを、そのまま図にしていけばいい。
見たことのある魔法陣の記憶を呼び起こしながら、みようみまねで描いていく。
「だいたいこんな感じかな」
さすがにこの場で魔法陣に魔力を流して、起動して確かめるなんてことはできないし……。
あとはこの魔法陣で点数がもらえるかどうか、祈るしかなさそうだ。
たぶん俺の魔法陣の描き方は基本とは違うだろうし、点数は低そうだけど……。
念のため、なるべく威力が高くなるように術式を組んでおいた。
威力は問わないと設問にわざわざ書かれているということは、威力が高いほうが高得点をもらえるということに違いない。
少しでも点数が高くなって、合格の可能性があがるように、俺は最高効率の魔法術式を考えて、魔法陣に組み込んだ。
「よし、これで提出だ!」
俺はさっそく挙手してテストを回収してもらうことにした。
筆記試験は、終了したものから退席が認められている。
ただし、一度席を離れるともちろん再度解答用紙に触れることはできない。
おもむろに手をあげた俺に、見回りの教師が反応した。
「おや、なにかありましたか? お手洗いなら先に済ませておけとあれほど……」
「いや、そうじゃない」
「なら、なにか問題が……?」
「テストが終わったので、提出を」
「は…………? ま、まだ始まって14分しか経っていないですよ!? わからなくてもあきらめずに、最後まで解答を続けなさい」
「いや、だからもう全部書いたって」
教師はそんな馬鹿なという顔で、驚いて俺の解答用紙に目を通した。
「そんな……本当に全部埋めてある……。で、ですが、どうせデタラメでしょう。まあ早く帰りたいのはわかりますが、本当にこれでいいのですか?」
「ああもちろん。最善は尽くした」
「ふん、そうですか……。ならもうなにも言いません。帰っていいですよ」
「よし、じゃあ採点よろしく」
俺は教室を出た。
◆◆◆
俺以外の受験生はまだみんなテスト中だった。
まあ、当然俺が余裕の一番だった。
大魔境についての知識がかなりのアドバンテージになったな。
魔法陣では点数を落とすかもしれんが、普通の筆記問題はおそらく満点だろう。
まず間違いなく合格はできそうだ。
まあ、仮に点が足りなくてもローゼンベルク王がなんとかしそうだが……。
こういうのは実力で受かってこそだからな。
「暇だな……」
しばらく待っていると、カンナが別の教室から出てきた。
「くそぅ、レルギアに負けた……」
「で、どうだった?」
「まあ、簡単じゃったわ」
「だろうな……」
カンナも俺と同じく、大魔境の知識には事欠かない。
それに、魔王とも呼ばれるようなやつだから、魔法についての知識も十二分だろう。
あとはライゼとティナだが……。
さらにややあって、今度はライゼがテストを終えやってきた。
「おうライゼ、どうだった?」
「な、なんとかなったとは思います……。勉強の甲斐がありました!」
「そっか、ならよかった。ライゼと学校に通えるのが楽しみだ」
「ていうか、さすがレルギア様……何分前から待ってたんですか……?」
「一時間前くらいかな」
「す、すごいです……」
ライゼもかしこいから、大丈夫そうだ。
最後にやってきたティナは。
「申し訳ありません姫様……。魔法陣の問題、正直自信がありません……」
「ま、まあ……なんとかなるでしょう……きっと」
「うう、私だけ落ちたらどうしましょう……」
女騎士は堕ちるものだからな。しょうがない。
てのは冗談で。
「まあティナなら実技でなんとか取り返せるだろ。剣は得意なんだろ?」
「そ、そうだな! レルギア殿の言う通り、剣で取り返してみせます!」
筆記試験の次に待っているのは、魔法と剣の実技試験だ。
◆◆◆
その後、レルギアの解答用紙を見た教師たちは、ひっくり返ることになる。
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