第90話 亀が硬いのは分かっていたけど硬すぎた。
眼下に姿を現した巨大な亀の姿を視認すると神の眼のスキルが発動して魔物鑑定をしていく。
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魔物LV80
害獣系統:動物系
HP:84450
MP:44340
攻撃:11390
防御:16360
素早さ:3020
魔力:12800
魔防:10400
スキル:熱線 攻撃阻害 棘矢 硬質化 巨大化
弱点:氷属性
無効化:火属性
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うはっ! これはやばいかも知れない……。
ステータスに関してもちょっとぶっ壊れ系の害獣だ。
数値的には静流さんよりも強い値を叩き出してきているから、ひょっとすると討伐できないかもしれない。
それに【巨大化】のスキルが不安しか感じさせねえ。
ディスプレイに表示された数字の羅列を見て『SSランク』害獣が今までの害獣よりも際立った強さを持つ害獣であることを再認識した。
ディスプレイを眺めていると、眼下の
数千の棘が上空に撃ち出されると、意思を持っているようですべての棘がオレに向って飛んできた。
直ぐに
オレの生体反応を示す光を発する光弾に向けて、急遽進路を変えた棘が次々に着弾した。
棘が光弾に触れると大きな爆発が連続して起こり、付近の棘も誘爆する。
「ゲホ、ゲホ、あの棘は爆発するのかよ。まじで危険生物だな。これなら、国一つくらい簡単に潰せる力を持っているんじゃねえのか」
初めて出会った『SSランク』級の害獣の攻撃力に思わず怯みそうになる。
でも、ここでオレが怯んでしまったらビーチへの侵攻を許してしまい、結果としてドワーフ地底王国の主要港であるワズリンは壊滅的な打撃を受けて、復興することが困難な廃墟の街と化してしまう。
派遣勇者をとして、それだけは避けなければならない。
オレはビーチへ近づこうとしている
オレに興味を持った
熱線の触れた障壁が大きくひび割れを起こして削られた。
その度に熱線の発する熱量が障壁の隙間から入り込み、オレは額から滴った汗が顎の先まで伝わって、胸もとに流れ落ちる。
このままだと蒸し焼きにされちまうかもしれないぞ。
何とか手を考えないと……。
試しに
「強い……。仕方ない。被害が出にくい海上だからちょっとだけ本気を出させてもらうか。今なら誰も巻き込まずに行けそうだしね」
オレは
何もない空間から突如現れた武骨な実用性重視の青い刀身を持った剣を手に取り、一気に甲羅の島に目がけて急降下する。
接近するオレの姿を見た
今回は棘が追撃に入る前に降下スピードを上げて潜り抜けると、背後から迫る棘ミサイルを多数引き連れて
通過後、背後から追尾していた棘が
やったぜ! 自分の棘でダメージ受けてたら世話がねえなぁ。へへ。
自らの棘を甲羅に受けた
痛みでのたうっている
おっし、ここから一気に行くぜっ!
急降下して、攻撃が薄くなると思われる
グエイグさんの作ってくれたコイツなら折れることはないはずだ。
全力であの甲羅を断ち斬る。
握った手にじっとりと汗が浮かぶが少なくない時間を修練につぎ込んできた成果をこの害獣で試させてもらう。
オレは東雲さんに教えられた通りに無駄な力みを抜いて刃筋を立てることだけを意識した。
急降下の勢いを使いつつ、刃筋を立てることを意識した剣が
コォオオンと甲高い音ともに甲羅にひびが入ったが、断ち切ることまではできずに刀身ごと弾き返された。
「くそ、まだオレの腕じゃ、コイツの硬い甲羅は断ち切れねえか……」
大質量の剣で叩かれた
失敗こそしたものの、ダメージは与えられることが判明したので、今一度、上空に浮かび上がって攻撃のチャンスを窺う。
「剣に関してはまだまだなんだから、絶対に練習を怠るなよ」
「にしても、あたしは海が嫌だって言ったはずなのになんで……。まぁ、数百年に一度の『SSランク』を狩るためか……。柊翔魔、そこをどけ! その獲物はあたしの物だ。手を出すな!」
背後から男女の声が聞こえたため、振り返るとそこにはクロード社長が救援依頼を出していた天木料理長と静流さんが浮かんでいた。
転移ゲートを使って飛んできた救援隊が到着をしたらしい。
「二人がいるとなるとビーチの方は避難が済んだのですね?」
「ああ、お前のチームがある程度避難させてくれていたからな。今は俺のチームも静流のチームも応援してほぼ避難を終えた。今回はクロード社長より三チーム合同で害獣に対処しろと命令がでているので、主任三人の共同戦線といこうか」
「あたしは一人で狩れるから邪魔するな」
静流さんが天木料理長の提案を突っぱねようとした。
「この指示に従わないと、静流には日本での三か月間の謹慎処分が下るのだが、それでも一人で戦うか?」
天木料理長の言葉を聞いた静流さんがギョッとした顔をした。
「そ、それは困る。し、仕方ない。お前等はあたしのサポートに回れ」
それだけ、言い残すと静流さんは一直線に
オレも天木料理長も苦笑いで静流さんを見送ったがサポートしろと言われたので、彼女のあとを追って再び
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