第88話 戦いの果てに訪れるのは
※聖哉視点
外海の繋がる沖で
だが、直ぐに新しい足が生えて首元を締め付ける。
二頭のSランク害獣が決戦を始めて早一ヶ月が過ぎ去ろうとしていると聞いているが、お互いに決定打を放てない距離での戦いとなり、決着をつける手段に手詰まりを感じている様子も感じられた。
「ワズリンの人達のためにも、そしてイシュリーナのためにも、二体とも僕が討伐させてもらう」
僕は柊主任のバフ系魔術で能力値を底上げしてもらい、Sランク勇者としてもLVを上げてきたことで、目の前で絡みあうSランク害獣二体を見ても恐れを感じることはなくなった。
増強された能力は柊主任には遠く及ばないものの、柊主任が鑑定した情報から得たステータスでは目の前の害獣達を凌駕しており、グエイグさんに頼み込んで新調したオリハルコン製の槍を持ってすれば勝てない相手ではない。
現に、二体の害獣の動きは緩慢であり、あの程度の動きであれば、攻撃を一度も喰らうことなく、害獣討伐を達成できる気もしている。
おまけに、今回の戦いは涼香さんの使い魔である大鷲を通じてビーチでイベント放映されており、イシュリーナもお忍びで見に来ているので、下手な戦いはできない。
自分から志願したこととはいえ、まさか海パン一丁で戦うハメになるとは思ってなかったが、柊主任のサポート付きでも、一人でSランク二体を討伐すれば、親父も少しは僕の言葉に耳を傾けてくれるはずだ。
「さて! ショーの開始とさせてもらいますか」
僕は槍を構えると、手前にいた
すでに
近づいてきた僕を感知した
攻撃をかわすまでもなく、近寄ると槍で足を斬り落とした。
傷口を指定して
ジュウジュウとイカの焦げる匂いがすると、醤油を垂らして食べたくなるが、今は戦闘中のため自重しておいた。
足を焼かれた
イカの口元がモゴモゴしたかと思うと真っ黒な粘液が僕に向って飛び出した。
だが、そんなものは当たるわけもなく、颯爽と躱すと足を駆け登り、
目を貫かれた
不意に攻撃された
「Sランク害獣って言ってもこの程度か……でも、これも柊主任の魔術のおかげなんだよな。もっと、強くならないと独り立ちはさせてもらえないか」
柊主任の能力向上系バフ魔術はエルクラスト最高クラスの魔術であり、その恩恵を受けて戦いを有利に進められているだけであることは自覚しているつもりだ。
その事も含めてまだ自分の未熟さを知ることができるには、柊主任の存在が大きかった。
柊主任はこのエルクラストで他の追随を許さない圧倒的な力を持っていながらも日本での鍛錬を欠かさないからだ。
あの暴力的ともいえる力を持っている柊主任ですら、鍛錬を欠かさないのであるなら、僕如きがなおさら鍛錬を怠っているわけにはいかない。
「僕は柊主任の背中を追って、エルクラスト一の派遣勇者になってみせるんだ!」
近寄ってきた
害獣退治で修行していた最中に使えるようになったスキルであるが、意外と魔力を消費するため、僕のとっておきの切り札だ。
その切り札を
「喰らえ!
身体から何かが抜け出す感覚とともに槍先に空気の刃がまとわりつき、らせん状に回転し始めていく。
回転刃の付いた槍を
投げた槍は
ビクビクとしばらく足が脈動していたが、やがて動かなくなると、どす黒い液体を垂れ流して海中に沈んだ。
水深の浅い場所であったため、身体の半分が沈んだところで動きが止まる。
一ヶ月に渡り争っていた
せっかく、ライバルを倒してあげたのに恩を仇で返されたような気もするが、
吸い上げた海水による水圧レーザーがかすめていくが、スロー再生と同じくらいのスピードで迫るため、当たりたいと思わない限り避けるのは楽勝だ。
ヒョイと水圧レーザーを避けると、その発生源である
痛みに悶える
尻尾をサラリと避けて、身体に飛び乗ると手元に戻っていた槍に再び気合を込め直して本日二度目の
「悪いけど、害獣には消えてもらうからね」
最後の言葉を
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