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 後で判った事だけど……この前の「山奥の謎の農場」は「正義の味方」に潰された暴力団「安徳グループ」の「遺産」だったそうだ。

 ハウス栽培だけど、無農薬・有機栽培で水も地下水を使用という……これだけ聞けば体に良さそうな植物を栽培していた……けど、それらの植物は食用じゃない。

 ビニールハウスの中に有ったのは、ハシリドコロ・チョウセンアサガオ・トリカブト……その他、麻薬・毒薬の材料。

 元々は、岡山かどこかの民間信仰系の「魔法」流派で使われてた、それらのヤバそうな植物から作られる「一般人にも一時的な霊視能力を与える」薬だったけど、気分がハイになる上に中毒性が有る事が判り……とってもオーガニックな「植物系の麻薬を主成分に、致死量にならない程度の毒薬をスパイスとして混ぜる」という少しも安全・安心じゃない代物が「高級麻薬」として「裏」で販売されていたらしい。

 もっとも、元々の用途を考えると、その「高級麻薬」を摂取したら見える「幻覚」の正体は……多分、その「高級麻薬」のヘビーユーザーの何割かの身には心霊系のトラブルが起きてた筈だ。

 そして、その販売・製造元が潰れたので、色んな暴力団が「遺産の横取り」に動き出したけど、あっさり、「正義の味方」達に阻止されたようだ。

「じゃあ、当分、『戦闘』は無しで……今度の土曜に市役所の人と広報イベントの打ち合わせやるから、それまでに資料の内容を理解しといて……」

 放課後に事務所に来たら、江見さんからどっさりと資料の束を渡された。

「人権啓蒙活動ですか……」

 名目は言う事は無い。

 「関東難民」向けの住宅の整備や補償に関する話がメインらしいので、あたし達にも関わりが有る。

 でも……。

 難しい話の筈なのに、スラスラ読めて、内容も理解出来る。

 でも、内容が理解出来るのに、後には何も残らない。

「これ……結構、印刷費かかったんじゃないですか? カラー印刷だと」

 瑠華ルカちゃんが、いつものツッコミ。

「あ……まあね」

 文字よりも、写真やネット上で配布されてるフリーの画像が多め。

 だから、カラーで印刷する必要が有る。

「打ち合わせの資料じゃなくて、広告じゃないんですか、これ?」

 「プリティ・トパーズ」の「バカかわいい系」かつ「あざとい系」のキャラ設定からは、想像も付かない鋭いツッコミをする瑠華ルカちゃん。

 瑠華ルカちゃんは、あたしだったら「何となく違和感を感じる」ような場合に、その「違和感」を「何となく」じゃない明確な言葉にするのが巧いけど……多分、あたし達のファンに、この光景を見られたら、SNSで「キャラ崩壊」とか騒がれる。

「大体、こんな真面目な話に、何で、あたしらみたいな『萌えキャラ』が出て来る必要が有るんですか?」

「仕方ないだろ……この資料作ったの、市役所の専門部署の人じゃなくて、広告屋さんなんだから。広告屋さんの発想だよ」

「はぁ?」

「十年前の富士の噴火で仕事先が無くなった大手広告代理店の人が、市役所の広報に再就職してるみたいなんだよ。そのせいで、どこの自治体でも広報は『広告屋の発想』になってしまってるんだよ」

 頭を抱える瑠華ルカちゃんに、イマイチ話に追い付けてないのが丸判りな「んっ⁇」って感じの表情かお瑠華ルカちゃんを見てるりんちゃん。

「あと、このイベントに出る事が公式に発表されたら……身の回りに気を付けて下さい」

 その時、PC作業をしていた村松さんが、そう言った。

「え……?」

「えっと……?」

「何ですか?」

「ここ数ヶ月、久留米市内で『関東難民』排斥派の活動が活発化・過激化してるみたいです」

「あ……あの……この仕事、断わる訳には……」

「でも、他に仕事無いんだよ……」

「大体、これ、コラボするなら、あたしらじゃなくて『正義の味方』でしょ。人権啓蒙活動でしょ? 出たら身に危険が及ぶんでしょ?」

「向こうは正体を隠してるんで、コラボしたくても、連絡が取れないみたいなんだよ」

 あ〜あ……要は、あたし達「御当地魔法少女」は御当地系「正義の味方」の……「下位互換」「代用品」なのか……。

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