Travestito─裏社会で恐れられる最凶の美少女(男)
けら
Prologo
Pulizia
サンディエ王国の辺境にある小さな街、
サライアの裏通りには一際目立つ豪華な建物がある。
ここは最近この街で幅を効かしている犯罪組織、オルテンシアファミリーのアジト。
構成員は50人程と少ないがこの組織のボスであるジネッタはかなりの武闘派で、更に厳選した人物のみをファミリーに入れているため一人一人が精鋭であり、元々この街を仕切っていた穏健派の組織、ジラソーレファミリー150人を潰して吸収し勢いに乗っている組織だ。
店を荒らし、違法な薬を売り捌き、拉致した女を犯して殺し、スラム街で孤児を攫って臓器売買にかけるなどとやりたい放題している。
この世界の犯罪組織は総じてマフィアと呼ばれていて、大小様々な組織がある。
それで言うとこのオルテンシアファミリーは規模的に言えば小さいマフィアなのだが、それでもこの小さな街からしたら十分に驚異的な存在だ。
勿論それを取り締まる組織もあるし、国に救援を求められた際に派遣される治安維持の精鋭はその誰もが一騎当千の猛者だ。
よって本来ならいくら犯罪組織とは言えここまで堂々と犯罪行為をしない。
オルテンシアファミリーもサライアに常駐している治安維持組織程度なら軽く蹴散らせるくらいの力は持っているものの、国に救援を求められ上位の治安維持隊が派遣されたら一瞬で壊滅させられるだろう。
だが不幸な事にサライアは辺境にあり、国の目が届きにくい。そして街を治める人物はその側近も含めて腐敗しており、オルテンシアファミリーと元々とある伝手があったこと、そして裏金を受け取ることで国に報告をしなかった。それなのに外面は良く、出してもいない救援を無視する国を批判するポーズを取り住民に寄り添うフリをして、日々恐怖に震えている住民達からは良い領主だと思われてるのだから救えない話だ。
そんなオルテンシアファミリーのアジトは、普段は酔っぱらいの下卑た笑いと女の悲鳴が絶えないのだが、今は一風変わって男の野太い悲鳴のみが聞こえてきていた。
銃声が響く─
「ファック!何者だよあのクソアマ!信じらんねえ!一瞬でボスがやられたぞ!」
「俺が知るかよクソッタレ!ボスは何か知ってそうだったけどよ!チクショウ、サンディの野郎、とんでもねえ女を連れてきやが─」
「おい!エディ!クソッ!テメェぶち殺してや─」
揃いの黒スーツを纏う、見るからにカタギではない2人の男が口汚く罵り合っている最中、突如何者かの攻撃を受け血を流し絶命する。
「ふぅ。これで掃除完了ですわ」
そう呟いた女の言葉の通り、現在この建物に生きた人間はこの者を除いて誰一人いない。
「さて、ミスター・サンディ。貴方で最後ですわよ?」
「ひぃぃぃっ!ゆ、許してくれぇ!そんなつもりじゃなかったんだ!俺は、純粋にあんたと仲良くなりたくて─」
─いや、物陰にもう一人、無様に腰を抜かしながら命乞いをする男がいた。
だが必死の懇願虚しくまたもや鳴り響く銃声によりその儚い命を散らす。
「残念でしたわね。
それを行った人物はまだ20にも満たないだろうか。165cmと女性にしては長身の持ち主で、胸元に膨らみはないが全体的にスレンダーな金髪をツインテールにした人形の様に整った顔の美少女。
「それにしても弱すぎましたわね。折角こんなに沢山の殿方がいましたのに全く歯応えがなくて正直物足りません。一度帰宅してシャワーを浴びたらもう一掃除するのもいいかしら?確かこの街にはまだ小さい
異様に似合うゴシックロリータの黒と赤のドレスを全身返り血で真っ赤に染めながら、年齢に似合わぬ妖艶な表情で口元の血を舐めとり物騒なことを呟くと身を翻し建物から去って行った。
◇◇◇
「ヘイお嬢ちゃん。一人でこんなとこふらふらしてたら危ないぜ?俺が送って行ってやるよ」
「ありがとう、優しいお方。でも大丈夫でしてよ。お構いなく」
「まぁまぁそんなこと言うなよ」
「あら、強引なお方」
同日、先の惨状より数時間程経過した頃、
身を清め服をまた違うゴシックロリータのドレスに着替えた女が街の路地裏を一人で歩いていると、ガタイのいい見るからにチンピラの様な男に声をかけられていた。
一見するとナンパのような声がけに丁重にお断りを返した女だったが、男はまるで気にも止めずに腕を掴み、強引に路地裏の更に奥に引き摺り込んで行く。
「悪く思うなよお嬢ちゃん。大体そんな綺麗なナリしてこんなところを一人で出歩くなんて殺されても文句は言えないんだぜ?まぁ俺は優しいから殺しはしねえけどよ。今からされることは勉強代とでも思ってくれ。なぁに、すぐに気持ち良くしてやるよ」
下卑た笑みを浮かべながらズボンを下ろした男はそう言葉をかけ、女を蹂躙しようとする。
「ただのナンパだと思って優しくしてあげましたのに、悍ましい...。それでしたら、今から貴方がされることも勉強代とでも思って下さいまし?」
「は...?」
だが叶わず、鳴り響く銃声と共にあっさりと男はこの世から退場することになる。
「あぁ!思っていたよりも数段気持ち悪くてつい反射的にこちらの力を使ってしまいました...。
あぁまた返り血が...。
これでは他の殿方に見向きもされません。
全く...こんな小物ではなくもっと大物を釣り上げたかったのですが...。仕方ありませんね。まだまだ掃除は終わっておりませんが今回はここまでにしておきましょう。
折角着替えたのに...。
またラベンダに怒られてしまいますわ...」
そう一人愚痴て、またもやドレスを血で染め上げた女はとぼとぼと帰路について行った。
◇◇◇
「オルテンシアファミリーがいなくなったぞ!」
「全員血塗れになって死んでたみたいだ」
「一体誰が...」
「そんなこと今はどうでもいい!これでやっと俺達は自由になったんだ!」
「あぁ..もう家で震えてなくていいのね...」
「今日は飲むぞー!!」
突如としてオルテンシアファミリーを筆頭にマフィアと名のつくもの全てが街から消えて歓喜に震えている住民達を尻目に、一組の男女が歩いていた。
「ねぇ、ロメオ?やっぱり考え直さない?」
「あぁん?ラベンダ、テメェも分かってんだろぉがよ?あんなチンケなゴミを掃除しても、元凶を断たなきゃ結局繰り返しちまうだろうがよ?あぁ?」
「でも...!今のあなたじゃ...」
「うっせえな、安心しやがれ。別にやりようはいくらでもあんだよ」
そんな会話をしている2人はとても目を引いた。
方や、やや長めの黒髪を無造作に掻き上げている、鋭い黒い目と高い鼻を持つかなり整った顔をしている恐らく20を過ぎたばかりの色男。
身長は165cm程と低めだが、それでも高級そうなグレーのスーツを着こなしている。
その見た目から放たれる、やや粗野な言葉遣いも不思議と雰囲気に合っていた。
方や、身長は155cm程だろうか?
サラサラとした金色の長髪に金色の目、顔立ちは全体的にハッキリしており、ハリウッド女優のような見た目をした絶世の美女と言っても過言ではない。
小柄なはずなのに異様にオーラがあるその姿はとてもじゃないがまだ15歳の少女には見えない。
その女も揃いのグレーのスーツを着こなしており、美男美女の組み合わせと言うこともあって目立ちに目立っていた。
「んじゃ、俺ぁ行ってくるからよ。後始末の手配頼んだわ」
「はぁ...。はいはい。どうぞ?愛しのマリナと仲良くね!!」
「チッ..面倒くせぇなあ」
別れ際、マリナと言う名前を出した女は
不機嫌を隠そうともせずに男を見送った。
後日、オルテンシアファミリーの壊滅に歓喜していた住民は、この街を治める人物とその妻、そして側近の全てがその命を散らしたことによって今度は大いに戸惑いを覚えることになる。
街を治めていた男の名前はケイ・サライア
その妻はマリナ・サライア
随分と昔に家出した彼等の一人息子、
サンディ・サライアの所在は未だ掴めていない。
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ファンタジー挑戦します。
拙い文章ですがお付き合いください。
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