第24話
「異動命令?この時期に?」
「です。簡単に言うとそうってだけで、実際には違うけど」
「え、次どこすか。伊豆?掛川?それとも沼津?」
「全てにおいて営業所がないよ…。ニュース見てない?」
昼休み終わってすぐに課長のもとで言われたのは異動の話だった
夜斗は技術者としてはまだ1人前とは言えないが、事務において右に出る者はいない
それも全てソフト開発による自動化のせいだが
「最近テレビ見てないっすね」
「ああそう…。はいじゃあこれ異動命令書と異動手間賃」
「誰に渡すんすかこれ」
「話聞いてた?冬風君の異動命令だってば。ほら早く異動先見て」
「えー…新婚なのに…」
封筒を開けるとA4の紙が三つ折りで入れられていた
それを取り出して開く
「…県立静岡商業高等学校システム情報工学科とか書いてあるんですけど」
「じゃあこれ教員採用試験の日程と対策参考書と過去問。あえてここで言うけど試験は2月だから頑張って。あとあれだ、引き継ぎもよろしく。深沢君が君の後任だから」
「この状況をおかしいと思ってるのは僕だけですか」
「仕方ないな、質問を受け付けよう」
夜斗は全て列挙してやろうかとも思ったが1番強い疑問をぶつけることにした
「何故私」
「各支社から一人推薦することになって私が推薦した。んで、本社会議で決まった」
「…いや他の候補者どうなったんすか」
「簡単に言うと、乗り気じゃなかったんだよ。でうちの支社の子は同棲5年目で早く帰りたいだろうから適任だって言ってみた」
「あんたのせいか!」
つい勢い余ってツッコミを入れる
しかしその気持ちもわからなくもない。まさかフラグを見事に回収したのだから
「午後休ください、本社に殴り込むんで」
「殴り込んだところで意味はないよ。県に報告してるから」
「やってくれたな人事部…!」
「まぁ引っ越しは必要ないからさ、許して」
「…支社に戻るのはいつになるんすか」
「未定だね。ぶっちゃけ、定年までいたほうがいいと思うよ。退職金がうちからも向こうからも出るから」
「…この高待遇の裏には超ブラックが…」
「ないから。企業募集の教員は部活とかないし、学祭の担当義務もない。ある程度年数経つと生徒会の話が出るらしいけど断れるっぽい。んでもって残業は基本できないから」
「なんすかこの超優遇」
「お上も必死なんだよ。教員は年々減る一方で、増やそうにも辞めた奴らが嘘八丁並べて希望者を減らしてる。だから我々のような大企業に声がかかる」
「…理由はわかりましたが…」
「断ってもいいよ。だがしかし、僕の権限を忘れないように」
「脅す気ですか…」
「とんでもない。最も、聡明な君がそう判断したならその可能性も視野に入れるといい」
こんなことを言うが実際に職権乱用したことはないのがこの男だ
しかしリスクを取ってでもこの男がもぎ取ったモノは、夜斗にとってはある意味理想とも言える
要するに、早く帰っていちゃつきたいわけだ
「…お受けしますよ。全く…」
「いい判断だ。ああ、席は置いておくから暇なら来るといい。超非常時はこちらから呼ぶこともあるが、その際は時給2000円をつけよう」
「おおぅ…。あんた何やったらそんな高待遇取れるんだ…」
「多少の腹芸ができなくては営業の頃に戦果を上げることはできなかっただろうね」
書類をもって机に戻る。あと5分ほどで会議再開の時間だ
「…あ、結婚報告してねぇわ」
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