契約結婚
さむがりなひと
契約結婚と少しの危惧
第1話
事実婚が契約結婚と名前を変え、大きく制度が変わった
それに伴い契約結婚を前提としたお付き合いというものが広まり、結婚詐欺すら不可能となった現代において、とある同棲中の男女が明日契約結婚となる
「5年か。長いようで短かったな」
「うん。少し、感慨深い?」
「せやな。とはいえ俺は23、お前は21になったわけだが」
「…年齢はタブー。どうせ私たちは老いて見えないけど」
寡黙な少女・
目の前に座る弥生はココアを飲みながら空中に開いた画面で何かの記事を読んでいる
「何読んでんだ?」
「契約結婚のメリットデメリット。知ってるでしょ?」
「あんま覚えてねぇよ」
夜斗は弥生の口車に乗せられただけであり、そこまで乗り気ではなかったのだ
「…メリットについてはサックリ言うと税金免除。具体的には消費税と固定資産税、それと車関係以外の税金がなくなる。所得税とか相続税とかガソリン税とか」
「確か電気代とかも安くなるよな」
「うん。電気代については、2000円くらい。オール電化だと5000円安くなる。あと水道代は半額。契約結婚の結婚式をする場合、100万円まで補助が出る」
「するのか?」
「場合による」
そもそも夜斗は親友夫婦にしか同棲を伝えていない
弥生に至っては誰にも話していないのだから、呼ぶような人もいないのだ
「申請すれば無条件に毎月5万円の婚姻補助金が出るし、子供ができれば10万円まで増える。さらに学校についても、給食費以外は全部タダ」
「メリット多いな」
「ただしデメリットもかなり大きい。具体的には、もし契約結婚から5年以内に離婚した場合補助金の返還を要求される。結婚式補助金とか契約結婚補助金とかその他諸々。税金も遡って請求される。5年経過してれば請求されないけどね」
「つまりは補助金詐欺がしにくくなってるわけか」
「やろうと思ったら一回で十年かかるし結構しんどいと思う」
まだ実装から5年しか経っていないため、そんな詐欺は横行していない
ただ、やろうとすればリスクが高いのは事実だ
「んで、忘れてたが俺ら別に契約結婚目的じゃねぇよな?どうすんだ?」
「…そうだった」
「俺らの目的は生活費や家賃の折半による節約だろ?別に契約結婚する必要なかったよな?」
「…逆を言えばしない必要もないから、私は構わない。職場的にも、出会いがあるわけでもないし」
「まぁそれについては同意だ。工業系の職場は女性がいねぇ」
二人は相反する職場に勤めている
具体的には夜斗が探偵業、弥生は商業系
外回りと事務所勤務、さらにいえば当直がある
「なら、別にいいと思う。必要なら5年後に離婚すればいいだけ」
「まぁそうか。その頃には30代秒読みなわけだが」
「私は26だから、チャンスはあるはず。なくてもいい」
「色がねぇなぁ…」
「お互い様。私は明日、職場で公表するけど夜斗は?」
「一応上司には伝えるさ。同僚は勝手に聞き耳立ててるだろうし、祝儀目的じゃねぇから適当に流す」
「なるほど。なら、
「そうだな。じゃあ、あいつの家行ってくる」
「いってらっしゃい。夕飯は?」
「あー…いいや。多分あいつと食いに行くし。行かんかったら連絡する」
「了解」
夜斗は準備を5分ほどで終わらせ、ヘルメットを持って玄関を出た
その背を見送りつつ手を振っていた弥生は、少し微笑んだ
「妻…。争奪戦の報酬には、大きすぎるかも」
弥生は空中に投影された画面に表示された、夜斗の幼馴染に電話をかけた
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