第34話

 コウは咄嗟に身を伏せる。オレンジ色の銃弾のエフェクトが頭上を通り過ぎて行く。

 どうにか直撃は免れたけれど、これではドラム缶の陰から出られない。それに相手は二人いる、もしも一人が銃を撃って、こちらを足止めしている間にもう一人が別方向から近づいて来たら……

 コウは歯ぎしりする。身動きも取れない。このままでは……

 そう思っていた時。


 だんっ!!


 と音がする。誰かが近くのドラム缶の上に飛び乗ったらしい。

 そのまま銃声が轟く。それと同時に頭上を通り過ぎる銃弾が止まる。

 コウはそっとドラム缶の上から身を乗り出す。

 紅だ。銃を撃っていたのはどうやら朧だったらしい、大きくもんどり打って倒れ、光の粒になって消えてしまう。ちゃんと見たのは初めてだけれど、倒された相手はこうなるらしい。

 後は。

 コウは銃を構える。

 相手は……どこから来る?

 跳躍してドラム缶の上に飛び乗る、相手は一人、隠れられる場所が多いとは言えない『ステージ』だけれど、まったく無い訳じゃない、ましてや一人なら、いくらでも隠れる場所はあるだろう。コウは周囲を慎重に確認し、そしてようやく見つけた。少し離れた場所に、一台のトラックが停まっている、かなり大きな荷台が取り付けられたトラックだ。

 その車体の横を何かが通り過ぎる。

 そして。

 ばっ、と。誰かが跳躍するのが見えた。ドラム缶の上に飛び乗り、さらに荷台の上へと飛び乗る。そのまま上から銃を乱射してくるその人影。

「……佳子」

 こうは呟く。紅や兵がばっ、とドラム缶の上を飛び降りて銃弾を回避する中。

 コウだけはその場を動かずに、佳子に向かって銃を発砲する。

 放たれた銃弾が……

 佳子の足首を貫通した。

 ぐらり、と。

 佳子のキャラクターが膝を曲げて頽れ……

 そして。

 白い光の粒になって消える。


 これで……相手のチームは全滅だ。

 コウがゆっくりと安堵の息を吐いた時。ステージ全体にホイッスルのような甲高い音が響いた。

 そしてさっきまで映っていた雪のステージが消え、画面にはあの死神が映っていた。きっと正面のモニターにも映っているのだろうが、コウは見る気も無かった。

「試合終了」

 死神の淡々とした声が響く。

「試合結果は、この様になっている。こちらはチームは関係無く、トップから発表していこう」


 『コウ=10ポイント』。


 すぐにコウ自身の名前が出た。コウが倒したのは刃と佳子。つまりは一人につき5ポイントが貰える、という事になるのだろう。

 考えていると、次の名前が表示される。


 『兵=5ポイント』。

 『朧=5ポイント』。

 『紅=5ポイント』。


 兵は、最初に自分に向けて銃を撃っていた空を撃ち。朧は神威を横からの襲撃で倒した。

 コウはぼんやりと試合の様子を思い出す。

 紅は、自分に向けて発砲していた朧を撃ち、点を取得したのだろう。

 コウは頷く。おかしいところは何も無いはずだ。


 そのままポイントの表示は消える。どうやら発表されるのは点を取得した相手だけらしい。現在コウは10ポイントを取得した事になる。

「このポイントって」

 声がする。

 紅だ。

「二回戦でも継続するんですか?」

 その問いかけに死神は頷いた。

「うむ、残りの二回戦で、もっとも多くのポイントを取得した者が次の『ゲーム』に進める、という事だ」

 死神が告げる。

「だから今の一回戦でポイントが0だった四名。神威、刃、空、佳子は次の二回戦では一人でも敵を多く倒せるように頑張りたまえ、でなければ『脱落』だからな」

 死神は淡々と言い、再び姿を消す。


 画面には再び『死神GUN』のタイトルが映っていた。

 次のステージが始まる、という事だろう。

 コウはボタンを押した。

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