第二章
2-1 初めての仲間
「グアアアアアッ!!!」
両手を大きく振り上げながら、ハンマーベアがこちらに向けて
「うわあ!!」
つい叫び声をあげて尻もちをついた。でもそんな風にみっともなく慌てているのは僕だけだ。座り込んでいる僕のそばに、アリアちゃんが駆け寄ってきた。
「アリア、ラウル。下がっていろ」
「はーい」
リーダーのジャウマさんの言葉に、アリアちゃんが手を挙げて明るく返事をする。
二つにまとめた金髪の横に垂れた黒いウサギの耳が可愛く跳ねる。ベアの威嚇だけで慌てている僕と違って、アリアちゃんは
「ラウルおにいちゃん、こっちだよ」
彼女に手を引かれ、すでに戦闘態勢をとっている3人の後ろまで下がった。
僕らを
組み合って動かないベアとジャウマさんに向かってセリオンさんが
ジャウマさんがこちらも見ずに体を
「ギャン!!」
顔を押さえたベアが腕を離したすきに、ジャウマさんは飛び
「セリオン、焼いちまうと高く売れなくなるぞ」
木の上から、ヴィーさんのお
「顔なら多少焼けても構わないだろう。そう言うのなら
セリオンさんも少しキツイ言い方で返す。
3人の攻撃を受けたベアは、今度は僕に狙いを定めて向かってきた。怯えている僕はあの3人よりもずっと弱い相手に見えるのだろう。まあ、その通りなのだけど。
「ラウル、結界だ」
「は、はい!!」
ジャウマさんに言われ結界魔法を発動させる。僕とアリアちゃんを囲むように、光の壁が輪の形で現れた。ベアは僕らの前で立ち止まると、ガンガンと両腕を結界に叩きつける。
そのくらいじゃ結界は壊れないと思うのだけど……でもやっぱり怖い。僕が身を
と、そのベアの動きが止まったかと思うと、足からずるりと崩れた。
倒れたベアの向こう側に、
* * *
ただでさえ背が高くて体つきの
町の入り口では門番が目を丸くさせていたし、町中では歩いているだけで注目の的だ。
この町に
そのせいか道中ではしょっちゅう魔獣と遭遇した。でもあのハンマーベアのように、オークも、ワイバーンも、まったく彼らの敵ではなかった。
「まあ、俺らも一応Aランクだからな!」
ヴィーさんは親指を立てて笑いながら言うけれど、多分そんな甘いものじゃない。もしかしたらSランク並みの実力があるんじゃないだろうか。
一番戦闘が得意なのは、リーダーのジャウマさんだ。背も高いし、体つきもがっしりとしていて、筋肉もすごい。その見た目の通り力も強くて、大きな盾を持ち、なんなく大剣を振り回す。いつも皆の一番前にでて戦っている。
ヴィジェスさんも武器を持ってるけど、彼は前には立たずに、遠距離の武器で後ろから攻撃をしている。ジャウマさんと違って、体つきは比較的ほっそりしているけれど、その分身が軽くて、動きも素早い。戦闘以外でもその機動力を生かした偵察が、彼の役目になっている。
戦闘役の二人に対して、セリオンさんは魔法使いだ。彼が言うには水魔法と氷魔法が一番得意なのだそうだけど、それ以外の魔法もひと通り使えるらしい。でもそのルックスも、銀の髪も、メガネの奥に光る鋭い目も、氷使いのイメージにぴったりだ。
ヴィーさんが言うには、セリオンさんは『真面目過ぎる』のだそうだ。そのヴィーさんはセリオンさんに『不真面目すぎる』と言われている。そんなわけで、この二人が文句を言い合っている光景は珍しくはない。
そんな二人に、リーダーのジャウマさんがおおらかな言葉で穏やかに
そんな感じに、この一行はいい
ひょんなことから、僕も彼らと一緒に旅をすることになった。あの3人と違って僕はまだEランクのひよっこで、しかも戦うことすらできなくて、できるのは薬草採集くらいだ。
でも彼らは僕を仲間だと言ってくれた。そして、この幼い兎耳の少女――アリアちゃんを守るのが、僕の役目なのだそうだ。
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