08 一人目
<レベルアップしました! レベル21→61>
<能力値:3960ポイントを割り振ってください>
<特殊能力:ダイス目操作がレベル2になりました 仲間のダイスに干渉できます>
またレベルアップしたようだ。四十も。ポイントが凄いことになってるな……。
あと、ダイスチートもレベルが上がった。仲間っていうのは、パーティ組んでる人のことかな。
ともかく、能力値を振ってしまおう。
前回は全てに三百三十ずつ割り振ったが、よく考えたら魅力なんて特に必要ない。
今回は魅力以外の能力値に均等に割り振った。
+++
名前:デガ
種族:ヒューマン
レベル:61
年齢:18
筋力:1130
敏捷力:1134
耐久力:1131
知力:1130
判断力:1130
魅力:339
特殊能力:ダイス目操作 レベル2
+++
「うーん……」
右手を開いたり閉じたりしながら、思わず唸ってしまう。
数字の上では途轍もなく強くなっているが、実感は湧かない。
「デガさん? 何か不調でもありますか?」
ベルに心配されてしまった。
「いや、ちょっとこれ見てくれる?」
僕はベルにステータスを見せた。
「これだけ数字が上がってるのに、自分自身実感が湧かなくて」
「凄まじいですね……。デガさんがこの力を無意識で制御できているのでは」
「そうだといいな」
百個ものヴァジュラと、五百個のハヌマーンの爪は、ベルのバッグに全て収まった。
「えっ、デガさんのバッグ、普通のバッグなのですか?」
「普通のじゃないバッグって何?」
「冒険者なら武器と防具の次に必ず入手すべきものです。あの国本当にもう……」
「ベル落ち着いて」
また黒い言動を吐こうとしたベルをなだめて、普通じゃないバッグについて尋ねた。
「マジックバッグです。物にもよりますが、見た目より多くのものが入って重量は変わらないという、冒険者必携のバッグですよ」
ベルはこう言って、僕にバッグを見せてくれた。
バッグの中は真っ暗で、手を入れると内容物一覧が頭の中にパッと浮かぶ。
生き物の全身以外は何でも、バッグより大きなものでも入るそうだ。
「デガさんのお仲間を蘇生させるのが第一目標ですが、その前にデガさんの装備も整えましょう。今後に差し障ります」
僕の持ち物は城で渡されたもののみだ。そのうちダガーの一本は壊れてしまったし、あとは予備のダガーと最低限の着替えのみ。
そういえば食料も、陶製の小さな水筒に水を持たされただけ。
全員が生きていても、ベルみたいな人に出会わなかったら、あの森を抜けるのすら難しかったのでは。
「着替えなんて二の次三の次ですよ。安いものだけ与えておけばというあの国の底が伺い知れますねぇ……」
またベルが黒いオーラを纏い出した。
「よ、よし、ベル、今日はこのくらいにして町へ戻ろう。冒険者に必要なものを教えて欲しい」
本当はまだメモ二枚分の仕事が残っているが、それぞれ期限は一週間以内。まだ余裕がある。
僕の必死の提案は無事に受理された。
「ヴァジュラ、九十九個!? しょ、少々お待ち下さい!」
冒険者ギルドのアイテム換金所へハヌマーンのドロップアイテムを持っていくと、受付の人がつい最近見たようなリアクションをして後ろの扉の向こうへ走り去った。
数分後には、ギルド長と一緒に出てきた。
「また君か。ふむ、確かにこれはヴァジュラだな。数は多いが、本物なら俺を呼ぶまでもないだろう。正規の処理をしてくれたら問題ない」
「は、はい、すみません、気が動転してしまって……」
受付さんがギルド長に叱られている。
「なんか、ごめんなさい」
思わず謝ってしまった。
「君……確かデガと言ったな。君に落ち度はない。かなり運のいい人間のようだな。今後とも励んでくれ」
「はい」
ヴァジュラが一つ九十万マグで、猿神の牙が一つ五千マグ。手元にヴァジュラをひとつ残すことにしたから、合計金額は九千百六十万マグ。
ハヌマーンの討伐報酬が一匹あたり十万マグなので、百匹で一千万マグ。
一日で、一人分の蘇生費用が稼げてしまった。
「ハヌマーンが群生していたことは気になりますが、上々の結果ですね!」
上々どころか、一日でこんな大金いいんだろうかと不安のほうが大きい。
「ありがとう、ベル。ベルが色々教えてくれたから」
「私なんて少し口を出しただけです。全てデガさんのお力ですよ」
ベルは目の前の人間が大金を持っているというのに、まったく動じずいつも通りだ。見習いたい。
冒険者ギルドの建物を出た僕らは、町で少し買い物をしてから宿へ引き上げた。
買い物内容は、僕の装備の充実と、冒険者の必須道具が主だ。
あとベルが好きだというお菓子や果物を、半ば無理やり聞き出して買い、プレゼントした。こうやってハードルの低いものから、ベルに恩返ししていこうと思う。
宿でベルに借りていたナイフを綺麗に手入れしてから返却し、今後について話し合った。
「全員分貯まってからにしますか? それとも、明日にでもどなたか蘇生しますか?」
ベルに示された二択のうち、僕は後者を選んだ。
早く全員を蘇生するのに、仲間は一人でも多いほうが良いと踏んだのだ。
もしかしたら、僕とは違うチートを持ってるかもしれないし。
「わかりました。では明日はこの町の教会で、聖石を買い求めましょう。蘇生の儀式は私が執り行います」
「よろしくお願いします」
僕が改まって頭を下げると、ベルが慌てた。
「そんなっ、デガさんが頭を下げることないのですよ! 救世主様たちを蘇生できるなんて、聖女の誉れですから!」
「僕には蘇生の儀式なんてできないし、ベルに会わなかったら蘇生自体思いつかなかった。仲間が死んで詰んでた僕を助けてくれたのはベルだ。いくら感謝してもしたりないよ」
僕が本心からこう言うと、ベルは真っ赤になって顔を背けた。
「なんて良い人……尊い……救世主だからってだけじゃなくて……」
何かブツブツ言っている。
「ベル?」
「はいっ! さ、もう寝ましょう! 教会へは朝早く行けば空いてますし、蘇生後明日中にまたこの宿へ戻ってこれますよ!」
あたふたしたベルは僕を無理やりベッドへ寝かしつけ、自分も衝立の向こうへ行ってしまった。
「おやすみ、ベル」
「おやすみなさい、デガさん」
翌朝。日の出とともに起きて軽く朝食を取り、すぐに町の教会へ向かった。
聖石は、お金を出したらすぐ譲ってもらえた。
なんというか……僕を見て怪訝そうな顔をしたシスターが、ベルが名乗ると驚いて跪き、僕が昨日買ったマジックバッグから一億マグの小切手を取り出して見せたら迅速に聖石を持ってきて……教会って俗っぽいなぁ、という感想を抱きました。
一億マグは大金貨でも千枚になり、マジックバッグがあるといえど持ち運んだり渡して数えたりするのが面倒だし、どうせ一億マグは一括で支払う予定なので、冒険者ギルドで小切手化しておいた。
「ここの教会は少々問題がありそうですね。大教会に通報しておきます」
ベルが憤慨してたから、俗っぽいのはここだけらしい。
「きっとあの国の近くだからですね……」
ドルズブラのイメージ、まだまだ下降する模様。
三日ぶりに、皆が眠る洞穴へ戻ってきた。
保存魔法のお陰で変化も臭いもなく、皆はただ静かにそこで眠っているように見える。
「では蘇生の儀を始めますね。対象が複数の場合、無作為に蘇生者が選ばれます。もし順序があるなら、その方だけここから移動させることになりますが、どうしますか?」
順番なんて決められない。僕は
「わかりました」
ベルが目を閉じると、両手で掲げていた聖石が光を放った。
この世界へ来る直前にパソコンのモニタが発した暴力的な光と違い、優しくて暖かい光だ。
光は、一番奥にいたカイトの元に集まり、カイトの全身に降り注いだ。
「……ん? あれ? 俺は……」
「カイト!」
起き上がろうともがくカイトに思わず縋り付く。涙が出てきた。良かった、本当に、生き返った。
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