029.遭遇

 学校の近くにアイス屋さんが新しくできたらしい。いつ知ったのかは知らないが、それを知ったアオは僕に連れて行ってほしいと懇願してきた。


 たしかに、アイス屋ができたとなれば僕も行きたい。そういうことで、今日は2人でアイスを食べにいくことにした。


 しかし、ここで問題が発生してしまう。学校の前を通らなくてはならないと言うことだ。つまり、誰かに会うとかなり面倒くさい。


 でも、これは仕方がない。誰にも会わないように。ただそれだけを願って僕たちは街の中を歩いていた。


「あ、暑いねー」


「う、うん」


 お互い暑さに弱いらしい。2人ともぐったりとなりながら目的地まで歩いていく。


「ねぇ、アイスってどんなの?」


 涼しげな姿をしているアオ。ワンピースをヒラヒラとさせながら僕に尋ねてきた。


「……そうだなー。とりあえず、冷たい。そして美味しい。甘いんだ。


 チョコレートのやつもあったり、いちごとか、抹茶とかもあるなー」


「えっ?!チョコレート??アイスにもチョコレートあるの?」


「チョコレート味のアイスってことだ」


「す、すごい……!!それにする!」


「はは。まだ着いてないんだからまだ決めるのは早いよ。じっくりメニュー見てからでも遅くはないよ?」


「いや!それにする!」


 アオは意見を曲げなかった。その子供っぽい姿を見て僕は笑いそうになっていたが、堪えていた。


 その時だった。


「おっ?!おーい!!ユーウ!!」


 やばい!!この声はカイだ。そうか、ここは本当に学校のすぐ近く。ここが一番の難所だ。早く突破しないと。


 目の前からものすごい勢いで走ってくるカイ。真っ赤な服が映えている。


「おっす!久しぶり!元気してたか?」


 部活着のカイを見るのは新鮮だった。


「うん、元気だったよ。暑さには殺されそうだけど。てかあの距離で、よく僕って分かったね」


「俺は目がいいからな」


 カイは笑って親指を立てた。


「そう言うユウこそ、なんで、こ、こ、こに……」


 カイはアオを凝視した。カイは開いた口が開かなかった。


「って、え?!だれ??この人!ユウの彼女か?」


 大声で言うカイはとても驚いていた。両手を上げて後ろへ退いていく。


「違ぇよ!!前言ってた俺の妹だ!!」


 そう。カイにはアオさんのことを妹として紹介している。なんとかここは切り抜けられそうだ。


「えっ??あっ!この人がユウの妹か!ユウのい、妹。妹?


 ……えっ、全然似てない」


 カイは目を細めながらアオのことを見る。


「そ、そうなんだよ。悪かったな、俺の顔が悪くて」


「いやいや、そんなことはねえよ。ユウもまぁまぁ顔はいい。メガネさえ取れば。ただ、ちょっと妹はレベルが違うって言うか」


 カイはアオの周辺を回って見る。顎に手を合わせ、考えている。


「うるせぇよ。てか、僕のメガネ取ったとこ見たことないくせに」


 カイは一周し終わった後、口を開いた。


「まっ!いいか!ユウの妹はめっちゃ可愛いかったってことで!


 君、名前は?」


 カイはアオに話しかける。


「私?アオって言います」


「そうか、斎藤アオさんかー。俺はユウの友達の坂丘カイって言います!よろしくね」


 カイはユウの方を見た。


「いいなー、ユウ。アオさんみたいな妹俺にも欲しかったよー!羨ましいなー」


「うるさいなー。さっさと帰ってシャワー浴びなよ」


「相変わらずユウは塩だなー。まぁ、いいか!」


 僕とカイは別れようとしていたその時だった。


「おーい!おふたりさーん!」


 僕とカイは声のした方を振り返った。


 そこにいたのは、委員長ことサヤさんとカイの好きなマキさんだ。


 声の主はマキさんだったのだ。


 そして、アオも振り返った。


 どこか委員長の顔は陰っているように感じる。となりのマキさんは相変わらずの毒ありで活力みなぎる感じだ。


 あー……どうしてこうなるかなー。

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