第18話 熟練の戦士

ヒサは六問と会話をしている間に仲を深めて行き、古代の戦士の先輩としてしたう様になる。


「ヒサくん、君は六問日叉として生きるんだ。俺はもう1人のザーガとして生きるから」


「そこまでしなくたって、幕昰さんはきっと分かってくれますよ」


「それじゃあ君が狙われるハメになる。もし世間がヒサ君のことをクローンと認識した時、きっと批判を受ける。俺はどうなってもいいんだ。1つの命を守れなきゃヒーローにはなれないからね」


彼の自己犠牲で自分は生きられる。

申し訳なさがいっぱいになり、歯を噛み締める。

そんな時だった。


バイクに乗ったローカスト・ダークエンジェル達、そして飛行するプテラノドン・ダークエンジェル達がバックミラーに映ったのだ。


プテラノドン・ダークエンジェル。

その姿はまるで古代に存在した恐竜プテラノドンを模しており、灰色の肌に大きな鶏冠とさかと腕と一体化した羽を持つ。


「ヒサ君」


「分かってます。六問さん」


2人はザーガの腕輪を出現させ、右手をかざす。

光に包まれ変身を完了すると、ゆっくりとブレーキをかけ歩道の横に付ける。


止まった車から降り戦いの体勢に入ると、堕天使達はその場で静止する。


「お前達。どうやら俺達を全力で潰しにきた様だな」


「我々はゼッツ様とファパー様の命令でここにいる。覚悟しろ!」


一斉に堕天使が攻撃を仕掛けると六問が変身した姿である〈オリジンザーガ〉が重たい拳に破壊エネルギーを重ね、敵にたたみ込む。

あまりの一撃に爆散するローカスト・ダークエンジェル。

その光景に堕天使達は唖然となった。


なぜなら装着しているベルトにはダメージを力に変えるの機能があるからだ。


「バカな!? まさか故障こしょうか!?」


「お前達の上司の設計は正しい。だが的確に狙えば撃破は容易だ」


再び破壊エネルギーを拳に宿し、ベルトを狙い殴り続ける。


「ヒサ君、破壊エネルギーは体力を使うのは知っているね。だけどザーガの腕輪と共鳴することで消費を軽減できる。君ならやれるさ」


「はい!」


集団の堕天使に立ち向かう2人の戦士。

そこにバイクで駆けつけたZ3ズースリーとゴアドは驚いた様子で思わず2度見する。


「六問さんが2人? 一体これは………」


「事情は後で聞こう。まずは堕天使を倒すぞ」


「分かりました」


如鬼は〈サイコロプスハント〉を、西前は〈ガンバロン〉と〈スピアーグリフォン〉を装備し戦いの場に身を投じる。

ローカスト・ダークエンジェルのベルト部分を蹴り飛ばしたヒサは追撃の剣で両断する。

さらに逆手に持ちプテラノドン・ダークエンジェルに目掛けて投げつけると、ベルトごと腹を貫通し悲鳴を上げながら爆散した。


この現状にファパー側の堕天使は2人の戦士に強者の貫禄かんろくを感じ興奮すら覚える。

一方でゼッツ側の堕天使は使命を全うするため全力で戦士達に向かっていく。


そんな中ゴアドは〈スピアーグリフォン〉による突きと〈ガンバロン〉の射撃で撃破を重ねていた。


「チィ、数がなかなか減らねぇなぁ」


いくら竜神の戦士でも体力の限界がある。

戦闘時間が長引けば長引くほど徐々に疲れが見え始める。

その隙を狙われるのは必然だ。


しかも市民の避難はまだ行われていない。

自分達が倒されれば確実に殺されてしまうと言う恐ろしさ。

それを感じた途端、特大の責任がのしかかる。


(俺は加害者であり被害者だ。ザーガに助けられていなければ死んでいた人間。死んで当然のクズ野郎だった。そんなやつにチャンスをくれた神様に感謝しなくちゃな)


それでも重圧を跳ね除け、連続突きで堕天使を貫き、爆散させるのだった。



『ターゲットをオールロック。やっちゃえ如鬼!』


「ありがとう。このまま全弾命中させる」


AIエーアイの指示通り如鬼は〈サイコロプスハント〉のトリガーを連続で弾き、言葉通り貫通弾を12発すべて12体に命中させる。

全員爆散し、リロードを欠かさず行う光景をモニターで観ていた光炎は予期していた事態に足をガクガクさせた。


その姿に右に座る幕昰はいら立ちを覚え、鼻息を立てつつ、肩を組んだ。


確かに如鬼はAIエーアイに頼り過ぎている。

だが最悪のシナリオに到達することがあるのだろうか?

彼には到底思えなかった。


スマホ依存症の様に彼女がZ3ズースリーを何もないのに装着したがるなどの症状は今のところ見られなかった。


ジャーミーから預かったデータを元にした新型であるZ2+ズーツープラスZ3+ズースリープラスを、現在製造している。

とは言え堕天使の撃破数を増やす必要がある。

彼女を心配する光炎の気持ちは分かる。

しかしそれよりもAIエーアイとの共存を幕昰は望んだ。


(別に如鬼くんの事を兵器として見ているわけじゃない。AIエーアイの進化が悪い結果だけを生むなんて思ってもない。だから、だからこそ頑張れよ)


これを口に出せば光炎が激怒するだろう。

それゆえに言わなかった。


「相手は六問を狙ってかなり数を投入してきた。それほどまでにザーガの力を恐れてるのか?」


「おっ、おそらくそうですね。2日前に現れた堕天使はかなりの強敵でした。それが幹部の1人だとしたら、敵も黙ってないでしょう」


幕昰の質問に足のガクつきを止め、返事を返す光炎。

動揺を隠せない様子で再びモニターの方を見つめると、如鬼の活躍に嫌な汗が出るのだった。

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