一日一編集『毛布を出して敷いて寝て朝が来る。』

朶骸なくす

詩の第1話

どうでもいい話だけれど聞いてくれ

最近購入した人形が可愛かったんだ

可愛かったから購入したんだ

どっちが先か、という問題になるが

前者でも後者でもどっちでもいい


人形が薄汚れてきたんだ

困ったからネットで検索して掃除方法を見つけた

少し時間がかかるが大切にしているものだ苦じゃない


隣の人から異臭がすると言われた

困った


ネットで検索して保存方法を調べた

特殊なものがいるらしい

あしがついてしまう

でも、人形は綺麗でいてほしい


ここまで言えばわかるだろう

人形は大好きな人の死体だ

いつも浮気ばかりするから

首を絞めて殺してしまったのだ

嫌悪感はなかった

なんで、こんなにもなかったのかわからない

頭の中では、どうやって暮らそうか

それだけが頭をよぎった


なんか思いついた

せっかく買った粉だけど、それよりいい方法だと思う

食べる

昔の事件であった気がするので

挑戦してみようと思う


無理だった

どうも美味しくない、いや、美味しいはずはないけれど

食べられたもんじゃない

やっぱりと浴槽に戻した

また異臭がすると隣から言われた

もう時間切れかもしれない


どうすればいいかわからない

一緒に死にたいとは思わない

ただ殺して手元に置いておきたいだけだった

本当に手元に、好きだから置いておきたかったんだ


嘘だと気づいた

ただ発覚して刑務所に行くのがやだっただけだ

やっと気づいた

このまま自首をするより解体して山でも海でも捨てに行こう


解体は思ったより進まない

神経、筋肉繊維、骨

死んでから、かなりの時間だから身体が硬い

一つひとつの作業が大変で汗をかく

その汗は浴槽に垂れていた

また近所から文句を言われた

そんなに臭っているだろうか


……好きだった


ネットで繊維やなんやらの記事を見た

これで楽に切れそうだ


……なんで浮気相手を殺さなかったんだろう

あいつは今もぬくぬく生きている


手と足と首は切れた

もう捨てることを考えるのはやめだ

あいつを殺しに行こう


殺しに行ったら叫ばれた

格好がいけなかったらしい


私はテレビで見た裁判に立っている

「なぜ殺したのか」

その質問に私は答えなかった

もう好きだったか覚えてないのだ


根性無しが中途半端に殺人を犯して

周りは浮気したからと持ち出して

あいての方は「浮気」としられて距離をおかれているらしい

ざまあみろ、とは思わなかった

何もかもが「無」だった

なんで、好きだったはずなのに

後悔はしていない、ただ笑っていた顔だけが頭の中で浮かんでいた

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