第二章 役立たず付与魔術師、【嫉妬の大罪】レヴィアタンを討伐する

第一一話「スローライフが送りたい俺としては、そんなのパスに決まっている」

 九十七日目。

 体の傷も癒えてきたので、そろそろ外に出かける。

 クロエと一緒に行動するのは、念のための警戒である。もし万が一また森の王に遭遇した時、俺だけ迷宮から脱出しても、彼女が迷宮の中に取り残されてしまう。それはまずいので、原則一緒に行動することにしたのだ。

 とはいえ今日は狩りではなく、街への買い出しと冒険者ギルドでの素材換金がメインの目的だ。


 かつての騒動以来、クロエは街に行くのをかなり渋っていたが、それでも無理やり同行させた。

 俺が心細いから一緒についてこいという名目でお願いするとしぶしぶ従ってくれた。「もう、怖がりさんですわね、そこまで頼まれたなら仕方なくてよ?」とかほざいてたので鼻をつまんでおいた。






 ミロク

 Lv:31.38→3.38

 Sp:0.22

≪-≫称号

 ├×(藍色の英雄)

 └森の王の狩人

≪-≫肉体

 ├免疫力+++

 ├治癒力+++

 ├筋力+++++++

 ├視力+++

 ├聴力+++

 ├嗅覚++

 ├×(味覚) 

 ├造血 

 ├骨強度+++

 ├×(肺活量)

 ├皮膚強化+++ 

 └精力増強

≪-≫武術

 ├短剣術++

 ├棍棒術+++++ 

 ├盾術++

 ├格闘術+++++ 

 ├投擲

 ├威圧+++ 

 └×(呼吸法)

≪-≫生産

 ├道具作成+

 ├罠作成++

 ├鑑定++

 ├演奏

 ├清掃

 ├測量++

 ├料理

 ├研磨

 └冶金

≪-≫特殊

 ├暗記

 ├暗算

 ├魔術言語++

 ├詠唱++

 ├治癒魔術+++++ 

 └付与魔術+++++++++



 クロエ

 Lv:15.02(22)→16.02(31)

 Sp:0.88→3.58→0.58

 状態変化:腐敗 免疫欠乏 皮膚疾患 呼吸障害 視力× 味覚× 嗅覚×

≪-≫肉体

 ├免疫力+++

 ├治癒力++

 ├筋力+++++

 ├視力++++ 

 ├嗅覚+ 

 ├味覚+

 ├肺活量+++ 

 ├不死性+++

 └異常耐性(毒+ / 呪術+++)

≪-≫武術

 ├棍棒術+++++ 

 └呼吸法++ new

≪-≫生産

 ├罠作成+ new

 ├裁縫+

 └測量

≪-≫特殊

 └吸魂+++++++






 冒険者ギルドに行くと、ちょっとした騒動になっていた。

 なんでもあの筋肉ダルマのB級冒険者が、ユニーク討伐を成し遂げたのだという。その名も「森の王」の討伐。


 それ完全に俺じゃん、とは言えなかった。横から口を出すつもりはない。

 ユニーク討伐報酬がもらえないのはちょっと残念だが、それでも身バレするのは避けたい。正直、隠し迷宮のことを嗅ぎまわられたくない。

 今回のユニーク討伐の名誉は、喜んであの筋肉野郎に譲るつもりである。


(というか、レヴィアタン討伐隊の募集来てんじゃん。ユニーク報告しなくてよかった)


 募集掲示板には、レヴィアタンの情報と討伐隊の募集要項が書かれている。

 流石は迷宮開拓街、掲示板のそばには人だかりができており、やんややんやと議論が活発に行われている。

 やれ、今回の大罪討伐はメスガキ華撃団のモモが出るだとか、司馬孔策が発起人となって声掛けを行っているだとか、遠巻きからでもいろんな情報が掴めるものだった。


 こんな状況下でユニーク討伐報告なんてしたら、目立って仕方がない。

 それに空気的に、ほぼ強制的に討伐隊に組み込まれる羽目になりそうだ。

 スローライフが送りたい俺としては、そんなのパスに決まっている。


「参加しなくていいんですの? レヴィアタン討伐。S級冒険者は招聘依頼がでてますけど」


「いいよ別に。S級のミロク名義は死んだことになってるはずだから。ここにいるのはC級のミロクだ」


 死んだことになっている……? と首をかしげる彼女をよそに、俺はさっさと素材換金を済ませるのだった。






 九十八日目~九十九日目。

 この日はあえて、迷宮探索に費やした。実は隠しダンジョン【喜捨する簾施者】の第二階層への入り口が見つかったのである。

 第一階層のボス、森のジヒュメの娘を討伐した俺は、第二階層へのポータルを開くことに成功していた。


 ポータルの出現場所は小屋だった。つくづくセーフハウスとして優秀な小屋である。


(第二階層を探索している間は、あの森の王と再会しなくて済むからな。ある意味では第二階層のほうが安全かもしれん)


 なんとも情けない理由だが、俺はあの森の王のことを無意識に避けていた。

 最近は気を張りすぎているのか、森の中を探索する際も必要以上に警戒を強くしている節がある。


 迷宮からの聖遺物アーティファクトであるこのトンファーロッドさえあれば、たいていの魔物は退けられる。そして空になったカートリッジに魔力と魔鉱石(主にオリハルコン系の粉末)を十分に装填し終わった今は、パイルバンカーの火力をもってすれば竜でも討伐できるはずなのだ。

 あの森の王だって、もう一度遭遇したとしても倒せるはず。


(倒せるはずなんだけど、なあ)


 やはり心のどこかで、萎縮が払拭できてないのだ。

 早く、不安の種を取り除けるほど強くならないと――そんなことを考えながら進んでいたら、第二階層でも同じような小屋を発見した。今後はここを拠点に活動できるかもしれない。


「……第二階層は、海底か。第一階層の森とは打って変わったな」


 空を泳ぐ光る魚。揺れる海藻。そして海底だというのに呼吸できるという奇妙な状況。

 水中だというのに、水中ではないというこの感覚は、今いる場所が常識の通用しない「迷宮」であるということを否応なしに見せつけてくる。

 敵は空を泳げるのにこちらは空を泳げないなんて不公平だ――なんてことを思いながらも、俺とクロエは迷宮の探索を続けるのだった。






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