Chapter 5-2
「軽く流していた所に、あるばいと上がりの宇佐美先輩とたまたま出会ってな。時間も時間だから、彼女の送迎役を無理矢理買って出たんだ」
誘拐犯のワゴン車を追い掛けながら、三峰がそう説明してくれる。肌寒い日にこんな格好で、風が冷たくて仕方ないのだけれど彼女は大丈夫なのだろうか。
にしても三峰がバイクの免許を持っていたとは驚きだ。彼女にできない事なんてあるんだろうか。……ああ、英語か。
「恐らく、奴らは宇佐美先輩を『三峰真綾』だと思って攫って行ったんだろう。慎之介と一緒にいる女性だから、私だと勘違いしたんだろうな」
「いや、流石に僕の顔が分かるんなら君の顔も分かるでしょ」
「私の素性はとっぷしーくれっとだからな。それしか判断材料がなくてもおかしくはない」
もうなんでもありだな、君は。普通の学校に本名で通ってるのにトップシークレットってなんだ。
「私の名前、本名じゃないかもしれんぞ?」
「嘘!?」
「冗談だ」
ふっ、と笑う三峰に、僕もつい笑ってしまう。全く、すぐ人の心の声に反応するんだから。
「さて、ここからが本番だぞ、慎之介。奴らも警察の世話になりたくないだろうから、ここまでは法定速度で走って来たが、道を外れて人目に付かない所に入ったらどうなるか分からん。しっかり掴まっていろ」
「あ……。う、うん」
「どうした?」
三峰の肩を掴んでいた僕は、ええい仕方ない、と三峰の腰に手を伸ばす。後ろから抱き締めるような形で三峰にしがみ付く。
「ひゃう!? な、何をするんだ君は! ここは外だぞ外!」
「君がしっかり掴まれって言ったんじゃないか!」
「そ、それはそうだが……。まあいい、行くぞ!」
大通りを外れ、脇道に逸れて行くワゴン車を追って、三峰は車体を傾かせた。
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