Chapter 1-6
「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞー」
入店と同時に明るい笑顔に迎えられ、僕らは四人掛けのテーブル席に座った。男子同士、女子同士がそれぞれ隣り合う形だ。三峰が僕の向かいに座ったので、必然的に歩と一之瀬君が向かい合わせになる。
天露屋は一言で言えば、和洋折衷、喫茶店のような甘味処、と言った所か。
和風の店構えに、内装はテーブルやカウンター席を用意した洋風のもの。メニューも団子やぜんざい、あんみつなどの定番の甘味から、パフェやタピオカドリンク、コーヒーゼリーなども人気のラインナップとして並ぶ、バラエティ豊かなものだ。
「お待たせしました。『でらっくす小倉くりーむパフェ』になります」
そんな天露屋で、僕のイチオシメニューがこの『でらっくす小倉くりーむパフェ』だ。大ジョッキにてんこもりのフレークや寒天、生クリームに団子とアイスクリーム。そしてその上から豪快かつ鮮やかにかけられた小倉が眩しい一品である。
このボリュームでお値段なんと、2000円弱と言うお得さ。これにジャスミンティー(400円弱)を追加でなんともリーズナブルなティータイムを楽しめる。
「りーずなぶる……?」
「う、うーん……。そう、なのかな?」
「あーダメダメ。こいつの金銭感覚おかしいから。甘い物が絡むともっとおかしくなるから」
僕が力説したら、三峰には怪訝な顔をされ、一之瀬君は引きつったような笑みを見せ、歩は首と手を横に振った。何がおかしかったのだろうか。
続いて三峰が選んだ『特製あんみつ』が運ばれてくる。看板メニューという手堅いチョイスである。
一方で歩と一之瀬君はと言えば。まずは注文前の様子をご覧頂こう。
「うーん……。ここに来るといっつも迷っちゃうんだよね」
「ここメニュー多いもんなぁ。じゃ、じゃあさ、せっかくだから……一緒のにしない?」
「え? い、いいの?」
「う、うん。あんまり迷ってても仕方ないしさ……一之瀬さんはどれが好きなの? それにしようよ」
ぎこちないながらも、歩は同じものを注文するという体で、一之瀬君の好みを聞き出す事に成功していた。
そんな二人が注文した『抹茶ぜんざい』が届く。一之瀬君は抹茶好きらしい。中々渋いチョイスだ。
「んー! やっぱり天露屋に来たらこれだよー!」
「へぇ、抹茶も結構いけるもんだな」
「でしょ? 赤西君は何が好きなの?」
「うーん、俺はね……」
テンションが上がって緊張が解れて来たのか、ぎこちなさがなくなって会話が弾みだした。
よしよし、いい感じだ。僕は『でらっくす小倉くりーむパフェ』を完食し、二人の様子を横目に食後のジャスミンティーを楽しむ。
そんな僕を、三峰がジト目で見つめていた。
「……いつも思うが、君の胃袋は四次元ポケットか何かなのか?」
「んん? ああ、今日は一日中動いていたから、流石に空腹でね。僕とした事があまり味わずに食べてしまったよ」
「いつもは味わっていたつもりなのか……」
「どういう事だい?」
「いや、なんでもない。忘れてくれ」
頭が痛いのだろうか、三峰は額を押さえながら首を横に振った。あんみつにはまだ、二口くらいしか口を付けていないようで、だいぶ量が残っている。
……ダイエットかな?
「あ! 一之瀬せんぱーい!」
と、新たに入店して来たウチの制服の女生徒が、一之瀬君へ手を振ってこちらへ向かって来たのはそんな時だった。
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