第19話 掘り続けた男と温かい雪女
日記にはこう書かれている
7月1日
今日はオアシスアイドルのルココちゃんのライブだ。
友達と一緒に盛り上がり、最高にルココちゃんを盛り上げた。
ライブが終わって帰ろうと思ったときに友達が「ルココちゃんもう一回見れないかな?」と言い出した。
悪いと思いながらも好奇心を抑えつつ控室をのぞこうとやってくると
建物裏でロココちゃん発見。
運命だと思った。
だけど彼女は・・胸の谷間からタバコを取り出すとプカプカと煙を上げ始めた。
「ふぅ~ やってらんねぇ!」などと耳を疑う暴言の数々を口にするルココちゃん。
となりにいた友達はプルプルと震えだしていた。
それよりもショックだったのがしばらくすると
「いやぁ~遅くなって すまん すまん」と言う男の声が聞こえてきて・・
ああ・・ 思い出すだけで頭が痛くなってきた。
俺も限界だった。
でもとなりにいた友達に魔方陣が現れてデカい魔物大暴れを始めた。
友達は童貞をこじらせてしまったんだ!
ルココちゃんたちはスカートをはいて逃げていったけど
魔物は消えることはなくライブステージは破壊されて友達は逮捕されてしまった。
7月15日
友達が治療を受けることになった。よかった。
なんでも 手を触れることもなく童貞の治療が出来る神ナースがいるのだとか。
これで安心だ。後は刑期を終えて元気な姿を見せてくれ。
ただ、俺はあのときのことを後悔している。
自分は違い意気地なしの腰抜けだったいう事が分かってから毎日悪夢を見るようになった。
7月16日
俺はすべての友達との関係を立つことにした。
あの事件から毎日のように見る悪夢もこれで消えるかもしれない。
もう一度、やり直すんだ。強い男になるために
この後も日記は続いた。
そして1カ月ぐらい経ったある日。
8月15日
とんでもない!
ありえない!
悪夢にうなされながらとうとう俺は魔物を召喚してしまった。
魔物は本来なら俺の分身と言うべき存在だだろう。
目を開けると ヤツは俺を覗き込んでいた。
でも ヤツではない。。彼女だ。
俺は自分の心に負けてしまう弱い人間だ。
この魔物の姿がそれを物語っている。
そうだ。もうデビルマウンテンにこもって自分を見つめなおすしかない。
全ての関係を断ってしまおう。
そうすればこの魔物も立派な姿に代わるかもしれない。
俺は強い人間になってみせるぞ!
ここから先のページは無くなってしまっているのでこの先は読めないが
洞窟内の魔物の氷像が彼のその後の行動を物語っている。
俺はさらに周囲を探索して彼の生活用品をかき集めると
野宿をすることにした。
風が吹いてきた。
「あははは あはははは ははははは」
「また あの気持ち悪い風の音がする」
まるで誰かに見られているかのような風の音。
洞窟が笛の役目をして反響音がどうのこうのしているのだろうけど
難しいととはわからない。
怖いと指先が冷たくなってしびれてくるというのは本当だ。
寒くなってしまいそうなのでその前に眠ることにしよう。
そのよる夢を見たんだ。
オアシスの湖でアケミとミリーとリーファと俺でバカンスを楽しむ夢。
水着の3人が超セクシーでたまらなかった。
たまらなくて ゾクゾクした。
震えが止まらない。セクシーだ、、ゾクゾク鳥肌が立って、、
「あれ?」
俺は全裸で洞窟の中に横たわっていた。
まだ 夢の中なんだと思う。
だって 手も足も動かないしよく見ると氷の手かせと足かせが付けられていて
拘束されているじゃないか。
明らかにおかしいので夢だろう。
「あははは あはははは」
また 気持ち悪い風の音がしたかと思ったら目の前に女が姿を現した。
女は俺のとなりに来るとエルフのように長い奇麗な髪をかき上げて微笑む。
おしとやかな口調で可愛らしく語りかけてきた。
「お帰りなさい。ダーリン・・・私よ。ルココよ。・・・心配したわ」
ダーリンとは俺の事らしくルココという日記に出てきた人物と同じ名前の女は
俺との思い出について語り始めた。
「あなたは 彫刻ばかりで私はいつも寂しい想いばかり。
沢山お世話をしたのに。
いっぱい 冒険者たちからアイテムを拾って来たのに。
それなのに・・それなのに本当に姿を消してしまうなんて信じられない。
私が何度命を断とうと思ったかわかる?でも もう大丈夫だから。あなたの事は許してあげるわ」
そうか、ルココは俺を100年前にここにいた男と勘違いしている。
100年前?
ルココは100年も生きているのか?
エルフのように長生きをする種族は他にもいるだろうけど
だけど こんなに暮らしにくい場所に一人で留まり続ける必要があるんだ?
そうか ルココの正体に気付いてしまった。
違う!!俺は叫んだ。
「俺は違う! その男じゃない!!俺はトシユキだぁ!」
ルココは優しい表情から一転してこちらをバカにしたような見下した顔になった。
「はぁ? 話を合わせろや!だりぃーんだよ あははは」
ルココは右手の手のひらを出すと 左手の指先から吹雪を出した。
右手に吹き付けられた吹雪は氷柱の棒になり13cmぐらいの長さまで成長したそのとき
グシャ!
ルココは手のひらを打ち付けて氷柱を潰した。
それを何度も繰り返すのだ。
まるで 田舎のヤンキーがジャックナイフをプラプラと見せびらかすように
グシャ!・・グシャ!・・グシャ!
「そのまま騙されてれば 気持ちよく済んだはずなのによぉ~!
こんな
アン~ゴラ?」
おっ立つとは何のことだろう。
そしてどうして裸にされたのかわからない。
殺そうとしているなら俺が眠っている間にやれたはずなんだ。
「どういうことだ?」
不敵な顔でお腹を抱えて笑い出した。
おかしな薬でも飲んでいそうな笑い方だ。
「あははは あははは 腹いてぇ・・あははは。
アタイはお前がこの山を登ってからずっと着けていたんだ。
今まで一人でこの山を登ろうとした奴にはもれなくアタイの試練を受けてもらっていたのさ。
みんな死んじまったけどね。
だけど あんたは違った。 あんたは強かった。運も持っていた。
だから あんたにはね。
アタイの新しい宿主になってもらうことにしたんだよ!!」
ルココは長い右足を持ち上げると俺のお腹の上をまたいだ。
寝ている俺を両足でまたいで立ちすくむ状態だ。
「宿主の継承って普通なら難しいのさ。けど あんたがむっつりそうな男なのと
アタイが女形の魔物と言うのが相性がよかったね」
また 手に平に氷柱を作っては壊すしぐさを始めた。
グシャ!・・グシャ!・・グシャ!
「じゃぁ そろそろ。継承を始めようか?私の姿をよくみるんだよ。
奇麗だろ?美しいだろ?
アタイは100年前に大人気だった踊り子のルココって女と
同じ顔、同じ体系をしているのさ。
毎晩あんたのために 踊ってやってもいいし歌ってやってもいいと思っている。
・・・さあ よ~く見るのさ。確り見るのさ。
アタイは 魔物じゃない。。。
アタイは、、アタイは、、私はぁ、可愛い女の子だぁ!!!」
俺の体に流れる血が熱い。
この女!俺に何をした!
血が・・熱い!熱い!
「うぉぉぉ!!」
「あははは あははは あははははは」
これで終わりだと思っているのかもしれないが俺は感情を力に変えられるんだ。
「ニンニクマン!! とぉ~!」
ニンニクマンに変身することで拘束から脱出した。
つかさずオナラで攻撃をする
「
しかし オナラはルココの口から吐き出される吹雪によって吹き飛ばされてしまった。
「あんた、それは魔物の力だね。どうやって手に入れたのかは知らないけど
そんな醜い力はアタイが上書きしてやんよ」
ルココは強烈な吹雪のブレスをはき出した。
俺の体は宙を舞って洞窟の壁に叩きつけられる。
「う。。」
俺は自分の持ち物が置いてあるアイテムの上に倒れこんだ。
倒れこんで動けない。
強烈なダメージに加えて登山の疲労と寒さによるダメージも残っているのか・・。
絶望的な状況だと思ったときに
手の先を見ると そこにはイチゴちゃん人形が笑っている。
「こんなときに 笑いやがって・・。ん?」
ルココがこちらへやって来る。
「あははは あははは」
もう一度 やるしかない。
オナラを飛ばした。
ブレス VS 「
「
しかし ブレスには勝てずにまた弾き飛ばされて洞窟の壁に何度も体をぶつけ
ニンニクマンから元の姿に戻ってしまった。
もう・・動けない。
ルココは勝利を確信して近寄るとドヤ顔を俺に近づけてきた。
「あははは あははは もう終わりか?じゃあ 私と継承を続けよう」
ルココはウィンクをすると俺を寝かそうと左手を掴んだ。
「ああ 終わりだ。お前がな!これでもくらえ
「ん? ぎゃぁぁぁ!」
俺は オナラをしたときにシャボン玉にもオナラを閉じ込めて隠し持っていた。
それをルココが近づいたタイミングで顔面にぶつけてやったんだ。
※スキル:虚弱体質を付与しました。
「はぃ~ ゴホゴホ・・咳が出てブレスが吹けない・・ゴホゴホ」
俺はルココを近くに落ちていたロープで縛り付けてやった。
こうして洞窟を抜けると外は朝になっており、目の前には山頂が見えた。
「あれは?」
山頂には氷の木が生えていてアイテムの樹氷の葉がいっぱい下がっていた。
「やったぞ!」
嬉しさのあまりに力が湧いてきた。
氷の期まで力いっぱいに走った。
近くで見ると美しく、氷の彫刻なんか比べ物にならない。
だって この木は生きているんだから。
「おや?」
木の根っこのところに箱が置かれていた。
その箱を開けると そこには日記の続きが隠されていた。
日記にはこう書かれている。
魔物は俺のために色々してくれた。
言葉遣いもきれいに直してくれたし、アレも直してくれたしこれも直してくれた。
いつの日か魔物は・・いいや ルココは本物のルココ以上の存在になってしまった。
でも 認めるのか?
今までルココの見た目を立派な魔物に変えるために氷像を掘り続けてきた。
彼女を否定し続けてきたのにだ。
こんな簡単に手に入る幸せを手に入れてしまっていいのか?
認めることが 怖い・・怖い・・俺がルココを認めたら
もう 今のルココはいなくなってしまうかもしれないから・・・。
日記はここで終わっていた。
本当は両想いだったのにルココにずっと尽くしてほしいと思ってしまった宿主は
辛く当たり続けてしまったんだ。
それでも新しい宿主を求めてやまないルココの気持ちがわからなかった。
ひょっとすると・・ まさかね。
俺は山を下りて診療所の病室へ向かうとドアを開けた。
ガラガラガラ
「ただいま」
「トシユキ!!」
「トシユキよ 戻ったか!」
「あんた やるじゃない?!」
みんなが心配をして俺の帰りを待っていた。
リーファのために行ったのにみんなには心配を掛けちゃったけど
でも それでいいと思った。
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