第4話・異界大陸国レザリムスの【月魂国】

 鉄馬は気がつくと、バイクに乗ったまま見知ら浜辺にいた。

(どこだ? ここは?)

 日本の浜に似た風景……松に似た木が防風林で植えられ、富士山に酷似した山が見える。

「ニッポンじゃないよな? オレが知っている富士山は真っ赤だから……山頂も大小が二つで、片方から噴煙が出ているから」

 カッターと融合していた手は元にもどり、手の甲には宝珠が輝いている。


 その時──鉄馬は、異様な気配を感じて振り返り驚く。

 そこに数匹のオカドーがいた。

「ア────ッ」

「ドンナ脳ミソシテイルンダァ」

「オマエハ馬鹿……カ」

 一斉に飛びかかってくるオカドーの化け物。

 鉄馬が身構えるより早く、鋭いウロコのようなモノが飛んできて。

 オカドーを貫通して、粉砕されたオカドーが消滅する。


 鉄馬の前に走り込んできた人物が、一閃で剣を振ってオカドーを寸断消滅させる。

 抜き身で幅広の西洋剣でオカドーを切り捨てたのは、ドラゴン獣人の戦士だった。

 竜人の胸には鉄馬の手の甲にあるのと同じ、宝珠がついている。

 竜の戦士が言った。

「オカドーは化け物、見つけたら容赦なく殺せ……小僧、ケガはないか」

 竜の戦士は、鉄馬の手の甲にある宝珠を注視しながら言った。

「おまえ……別世界から来た、罪人つみびとか?」

 鉄馬は、竜人の問いかけに答える前に激しい空腹感で、バイクごと倒れ意識を失った。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 次に鉄馬が意識を取り戻したのは、どこかの畳の匂いがする寝具に寝かされている感覚と、数人の話し声だった。

「相手の正体もわからないのに、城に連れてきたのですか! 『竜剣』! 軽率です」

「手の甲に罪人の宝珠があったからな。オレはオレの直感を信じた、オレは強運者だからな」


「罪人の宝珠が付いていても、仲間となる罪人の一人とは限らないでしょう……宝珠を持ちながら、ディストーション帝国に寄って敵となった者も、過去にいましたからね……白い鳥の翼の彼のような者も」

「『魔槍』! 去っていったアイツのコトは口にするな!」


 目を閉じた鉄馬が、二人の会話を聞いていると、第三者が会話に割り込んできた。

「まぁまぁ、お二人さん同じ罪人同士でケンカはやめなさい『朔夜さくや姫』の神託預言でも罪人は十四人……『竜剣』が連れてきた彼が、その最後の一人かもしれませんし……違うかも知れません、さあどっちでしょう」


「『竜剣』も『魔呪』も気楽すぎます……姫を守る騎士道の一人としては敵の疑いがある者を、この【月桂城】に安易に入れるのは、わたしは反対です」

「そんなにカッカッするな、この小僧が敵ならオレが剣で寸断して……おっ、小僧が気がついたみたいだぞ」


 和風な城の板張りの部屋に置かれた、畳ベットの上で目を開けた鉄馬が見たのは、浜辺で見たドラゴンの戦士と。

 西洋騎士のように首から下を鎧で包み、片方の膝に宝珠が見える。槍を持った美形の槍士だった。

 槍の穂は卒塔婆そとばの形になっている。


 もう一人は、中華の少林寺拳法の僧侶のような格好をした、肩までの長髪男性で。

 額に宝珠があり顔にブラスネジが数個埋め込まれ、耳にはイヤリング型のピアスをしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る