第14話 幼馴染の嫉妬
天音が『おいコラ、表出ろや』と言わんばかりに手招きをしてきたので、俺は天音のもとに向かった。
「ど、どうかしましたか?天音さん」
「さっきは随分と楽しそうだったね。私との約束も忘れて他の女の子と楽しくランチなんて。しかも手作り弁当でしょ?あれ。どうせ私は料理下手ですよー。唯人は料理上手の女の子を優先するもんね、わかってるよ」
ダメだ、完全に闇落ちしてる。
‥‥ん?俺は天音と何か約束したのか?
全く記憶にない‥‥いやあるわ。今思い出した。
あれはちょうど一週間前のこと。
◇
一週間前、俺と天音は俺の家でテレビゲームをしていた。一対一の格闘ゲームだ。
「次の試合で唯人が負けたら、来週学校が始まったら学食奢ってよね」
「いいだろう。‥‥いや、待てよ。来週は初日が始業式だからその翌日にしないか」
「りょーかいっ!唯人が負けたら学食奢りだけど、そのかわり私が負けたらお弁当作ってくるよ」
「なんか価値が釣り合ってなくないか?」
「手料理に大切なのは気持ちだよ」
「‥‥‥だな」
結局、ゲームは俺が勝った。天音の弁当(パンドラボックス)を食べるのは気が引けるため、わざと負けることも考えたが、それは流石に天音に失礼なので本気で戦った。
◇
「やっと思い出したんだ」
「‥‥‥ああ」
「せっかく、朝五時に起きて作ったのになー」
天音が手に持っている弁当が入った巾着の紐をぶらぶらと揺らす。
「すいませんでした!」
俺はその場で土下座をした。こんな時にプライドとか気にしてる場合ではない。
「是非頂きます!」
俺は天音から巾着をひったくると、すぐに中から弁当箱を取り出し、蓋を開けた。相変わらずの禍々しさだ。
でも悪いのは俺だ。責任を持って頂こう。
俺はガツガツと弁当を口に押し込む。
天音の手料理を飲み物でごり押さずに食べたのは久しぶりだ。
俺はその勢いで弁当を完食した。
「ご馳走様でした!」
天音の目にハイライトが戻る。
「‥‥‥次他の女の子に浮気したら許さないんだから」
天音が何かを小声で言っている。
「どうした?」
「何でもないっ!」
天音は頬を赤らめ、俺から弁当箱を受け取った。
なにはともあれ、天音の機嫌が直ったので結果オーライだ。
「今日は責任取って、私と二人っきりで帰ること」
「言われなくてもそうするさ」
「‥‥え?」
「あ」
お互いの頬がみるみる紅潮する。
やばい、俺がめちゃくちゃ天音と二人っきりで帰りたがっているみたいになってしまった。
いやまあ、実際そうなのだけれど。
「ふぅん、唯人はそんなに私と帰りたかったんだ?」
「まあ、はい」
俺達の恥ずかしさが限界値に達し、それぞれの教室へと駆け込んだ。
今日は天音との下校デート。しかも2日連続だ。これは俺にとって今世紀最大の幸せかもしれない。
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