第19話
俺たちは足早に夕暮れの街を歩いて行った。
俺の隣で今にも走り出しそうな感じを我慢しながら歩いている少年のような見た目をした人はコナーさっ、コナーだ。
こんな見た目でモンスター達を倒す存在の防衛者をまとめあげている人だという事はいつまで経ってもなれない。しかも俺と同い年らしい。こんな若そうな20代後半居るか、と思ったがよく考えたら俺の見た目も十分20代後半には見えないものだった。
「コナーさっ、コナー。僕のっと、俺の見た目ってやっぱり高校生くらいに見えますっるか?」
「ブッ、ちょ、敬語を頑張って無くそうとし過ぎて口調おかしくなってるよ。見えまするか? って、あははっ。」
しょうがないじゃないか。初めにあった時は本当に年齢が分からなかったんだ。それで年上だったりしたら殺されるかもって思ってたしな。
しかも、それ以前に防衛者のトップってだけでも十分敬語を使った方が良いのだが、彼曰く、他の防衛者たちはその見た目からか敬語を使ってくれる人はほぼ居ないらしい。というか防衛者は殆どが40代程の人達で成り立っているため、年上だからというのもあるだろう。
「ほんとにさ、敬語とか使われ慣れて無いからむず痒いんだよね。それに君の方が強いし立場とかの関係も気にする必要は無いからね。」
「あぁ。分かってはいるんだがな。出会いが衝撃的だったからか抜けないんですーっよな。」
自分でも直そうとは思ってはいるんだが、中々直せない。直るのは当分先になりそうだ。
「晴輝君。」
今までウキウキで歩いていたコナーが立ち止まった。ゴブリンかと思い周りを見回すが何も居ない。
俺が不思議そうにコナーを見つめるとコナーはある一点を見つめ続けていた。
「あっち。あっちにゴブリンが物凄い数居る。」
コナーが指さしたのはよく分からないところだ。そっちの方向を見ても突き当たりになっていてゴブリンの姿など見えない。
俺がそのことを聞こうとする前にコナー君は走り出した。
俺は何が何だか分からずにコナーについて走った。
コナーは迷いなく突き進んで行く。速度は俺の方が速いようなのでついては行けたがどこに進んでいるのかは見当もつかなかった。
しばらくするとギャアギャアと騒がしい声が聞こえてきた。
この声には聞き覚えがある。ゴブリンの声だ。
だが、その声の中に聞き覚えのない声も混ざっている事に気づく。
「ハッ! オリャッ! クソ!」
男の声だ。そこで俺は何故コナーが急いでいたのか、理由が分かった。
俺とコナーは一目散に声がする方向へ走って行く。
ゴブリンはすぐに見つかった。だが、見つけられたのではなく、見つけただ。何故なら、ゴブリンは本当にもの凄い数がいたからだ。
「ハハッ、やばいね。ゴブリンってこんなに増えるんだね。」
「そうだな。軽く100匹は居るぞ。」
そのゴブリン達の向く方向にはナックルの様なものを付けゴブリンに対抗している男の姿があった。男は壁を背に戦っているが、押されているように見える。
「晴輝! 助けるよ!」
そう言ってコナーは少し後ずさった。
「助けるんじゃ無かったのか?」
「まぁ見ててよ。」
コナーは深く息を吸った。そして。
【鬼眼-閉-】
コナーの眼が赤く光る。それと同じ様にゴブリン達の眼も赤く光り、眼を閉じた。
「っ!?」
「今だよ! 殺って!」
くっ、状況が掴めない。だが、やらなくてはいけないことは分かる。ゴブリンの殲滅だ。
ナイフを構え駆け出す。
「っ!!」
近くで見ると異様な光景だ。ゴブリンたち全員が眼を閉じている。だが、自分の意思では無いのか戸惑っている様子だ。
何が何だか分からないがチャンスだ。
俺は駆け出したスピードのままゴブリンの首を切り落としながらナックルの男へと向かって行く。
ゴブリン達は自分がどうなっているのかも分からないまま一撃で頭だけになって行き地面に転がって行く。
「だ、誰だ!?」
ナックルの男が叫ぶが、今はそれどころじゃない。
「死にたくなければ自分の身は自分で守ってくれ! 俺はできる限りの事はやるが俺が死にそうになってまで助けたりはしないからな!」
「っ、あ、あぁ!」
突然眼を閉じたゴブリン達に戸惑って攻撃をやめていた男は俺の話を聞きハッとしたような顔をし、攻撃を始めた。
何だかすごい戦い方だ。俺のように先に首を切り離してその後に脳を破壊するやり方ではなく、初めから直接脳に攻撃している。流石に1発では倒れないが、何発か攻撃しているうちにゴブリンは倒されていた。
「うっ、すまない! もう眼は
やはりこの現象はコナーが起こしたようだ。この間にゴブリンの数は4分の1程度に減った。だが、それでも30体くらい居る。
いける。
俺はそう感じた。虚勢などではなく本心から。
その気持ちを察したのか、ナックルの男は俺に話しかけてきた。
「俺がゴブリン共を引き付ける! だから、お前は首を落としていってくれ!」
ナックルの男は俺の返事を待たずにゴブリン達へ突っ込んで行った。
俺もそれに続いてゴブリンの首を落としていく。
自分にヘイトが向いていないからか楽に倒していける。
それからゴブリンを全部倒したのは僅か数分後だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます