第6話

「着いたー!」

「ここが目的地か。」


着いたのはホテル街だった。


「今はホテル側の善意で格安で政府にホテルを売ってるの。まぁ、こんな情勢じゃホテルで稼げないからだろうけどね。」


そうなのか。

ホテル街はテーマパークレベルで混んでいた。この周辺の住民たちは皆ここに避難してきているのだろう。


「それで、相談なんだけど…………。君、私達の所に来ない?」

「どういう事?」

「そっか、言ってなかったね。着いてきて。」


陽夏はスタスタと歩いて行った。

俺は久しぶりの外だし、何より外を歩くという経験も少なかったため、すぐに見失いそうになるが、陽夏の特徴的な髪を追い掛けて何とかついて行った。

しばらくすると、1つのホテルに着いた。


「ここは?」

「ここは、って言って私みたいな戦闘系のスキルを獲得出来た人が集まっている場所よ。よく分からないけど、って言われているわ。」


ギルド…………。絶対ゲームとかアニメが好きな人が付けただろ。

そんな事はどうでも良いのだが、俺はどうしてここに連れてこられたんだ? 俺は戦闘など出来ない。筋力っていうスキルは持っているけど、まだそこまで使える感じはしない。


「お、俺は戦闘なんて出来ないぞ?」

「あぁ、そうじゃないわよ。ちょっと来て。」


陽夏は建物の中にツカツカと入っていった。

慌てて俺も入ったのだが、あまりの人の多さに圧倒されて立ち止まってしまう。


「うぅっ。」

「こっちだよ!」


陽夏に引っ張られてようやく俺は動く事が出来た。俺ってこんなに人苦手だったっけ…………。

人と会うのなんて通販でものを買ったりした時にその配達員さんに会うくらいなものだったのであまり感じていなかっただけで俺は人が苦手なようだ。


「大丈夫? 体調悪いの?」

「あ、あぁ。大丈夫。」


人が苦手なんて陰キャっぷりを女の子に悟られたく無かったので俺は演技をした。


「そう…………。まぁ、いいわ。じゃあ、ここ降りて。」


陽夏が指を指す先にはハシゴがあり、地下へと続いているようだ。俺は指示に従って地下へと降りるが、その瞬間俺は顔を顰めた。


何故ならそこには手足を切り落とされ、縄で縛られたゴブリンが数え切れないほど居たからだ。

俺は逆流してくるさっき飲んだおしるこを必死で抑えながら叫んだ。


「陽夏! なんだこれ!!」


後を追って陽夏も降りてきた。


「あぁ、ごめんなさい。説明を忘れていたわ。このゴブリン達はスキルをまだ持っていない人にスキルを入手してもらう為のものよ。」

「そ、そうなのか?」


動物保護団体の人達が見たら怒り狂いそうなその光景を見て俺は必死で理解しようとしたが、頭が回らず理解できないままその光景をただ眺めていた。


「その様子じゃ、今からやる事は一苦労しそうね。」

「今からやる事?」

「このゴブリンを殺してもらうわ。」

「は?」


このゴブリンを殺す? 生き物を殺す?


そんなの…………。










「………輝! 晴輝!」


陽夏? なんで叫んで…………。


状況を把握する為に周りを見渡した。

すぐに目に付いたのは


「陽夏…………。なにこれ?」


俺は周りにあるを見て状況を察した。


俺はゴブリンを解体している?


俺は何をやって…………。


「晴輝! 正気に戻ったの!?」

「陽夏、俺は何をやっていたんだ?」

「何も覚えていないのね…………。君にゴブリンを殺してもらう為にナイフを渡そうとしたらいきなりゴブリンに飛び掛ってゴブリンをた、食べだしたの。」

「え?」


俺は口の中に残る感触と生臭い匂いに気付き、思わず吐き出してしまった。


あれ、おしるこっぽいものは無いな。そんなことをふと思った。

はは、本当に困惑すると思考ってバグるんだな。


「このナイフで首を切って! そしたら肉とか血とかは消えるはずだから!」

「わ、分かった。」


俺はすぐに指示に従い、ゴブリンの首を切った。

すると不思議な事に血なまぐさい感じは無くなり、周りに飛び散っていた血なども綺麗さっぱり無くなっていて、残ったのはゴブリンの頭だけだった。


「モンスターの本体は脳って言われているの。その脳から切り離された部位は何故か消えてしまうのよ。それより、大丈夫?」

「大丈夫、ではないね。 頭がグルグルしてる。」

「この症状はに似てるのだけど、晴輝はモンスターを殺したのは初めてだろうし…………。分からないけど、とりあえず休みましょうか。」


俺は腰が抜けていたので、陽夏の肩を貸してもらって、ベットがある部屋へと連れて行ってもらった。

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