謎の箱を拾ったら人生が変わった件ーダンジョンが現れた世界で謎の箱の力を使って最強目指しますー

黒飛清兎

第1話



俺は今、謎現象に遭遇している。

俺は目の前のを眺める。


「…………。」


どう考えてもおかしい…………。

物理法則とか絶対におかしい事になっている。


え? 何でそんなに混乱しているかって? なぜなら…………。





中の箱がスポンジのように柔らかかったり、箱が紙のように薄かったならばそこまで驚く事は無かったはずだ。

しかし、この箱はで出来ている。

どれだけ殴ろうが押し潰そうとしようがビクともしない。

俺の体はボロボロだがな。


何故こんなことになったかを話すと、話は数日前に遡る。


〜数日前〜


俺はスマホを見ながらニヤニヤしていた。

何故なら最近知り合ったハイパー美少女のネムちゃんとチャットでお話しているからだ。

ネムちゃんとは最新のSNSのニャイッターを使って知り合った女の子だ。

俺は本名の御影晴輝みかげはるきから抜いて『カゲ』を名乗っている。

さて、今日もネムちゃんと話そう!

そして、いつもどうりにニャイッターを触っていると、事件が起きた。


『カゲ君! 家もそこまで遠くないみたいだし、今度一緒に会いませんか?』


は?

俺は暫く頭が追い付かずに固まっていた。

ネムちゃんが俺と…………?

俺は急いでメッセージを返した。


『良いよ。じゃあ、2日後の土曜日に大通り駅の前の所に新しく出来たカフェに一緒に行こう。』


女の子と遊ぶ経験など小学生以来無いので、何となく女の子が好きそうなカフェに誘ってみた。


『あー、あそこね! 1回行ってみたかったんだー。じゃあ、土曜日に店の前に待ち合わせね!』


その言葉を聞いて、俺は布団にスマホをぶん投げた。


「いよっしゃぁぁぁぁ!!!!!」


俺は部屋に鳴り響く程の大声で喜んだ。

これってもしかしなくてもデートだよな!?

こうしては居られない! ここは男としてネムちゃんをリードしなくては!


俺はデートプランを考えて、2日間を過ごした。


そして、待ち合わせの日…………。俺は重要な事を見落としていることに気づく。

それは、自分の容姿だ。

ボサボサの髪、ギトギトの肌、膨らんだ腹、カッコイイとは到底言えない顔。この世の陰キャを詰め合わせた容姿だ。

いや、陰キャでももうちょっとマシじゃないか?

てか、陰キャにもイケメンは居るしな。

もういい。考えているだけで悲しくなる。

しかし、どうしたものか。ここからこれ以上良くすることは出来ない。ならば、せめて服装位はちゃんとしていこう。


俺はタンスを開けた。


そして、俺の目に入ってきたのは同じジャージと、同じ黒シャツ達だった。

そうだ、家から出る用事も無いだろうし同じものだけあれば良いだろって言って安い服を大量買いしたんだった。

仕方ない。時間もないしこのまま行くしかない。

俺はそのままの格好でカフェへと向かった。


カフェの前に着くと、カフェの前に置いてあるベンチに1人の女の子が座っていた。

遠くから顔を眺めてみる。

うん。可愛い。

ネットで見た顔よりは劣るが、全然可愛い。

俺は近くまで歩いていき、声をかけた。


「えっと、ネムちゃん……で、いいのかな?」


彼女は、こっちに顔を向け、明るい顔をしたが、俺を見た瞬間に顔をしかめた。


「え、もしかしてカゲくん?」

「そ、そうだけど、何かあった?」

「何かあったって、カゲくんってもっとイケメンだったよね?」


ん? なんの事だ? あ、もしかして…………


「多分、それは加工してるからかな? ちょっと実物は悪くなっちゃうけど。」

「いやいやいや。ちょっとどころじゃないでしょ!!」


彼女はいきなり怒鳴り声を上げた。


「え、ネムちゃんどうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ! よくそんな顔で私と会おうと思えたわね! 」

「え、でも誘ったのはネムちゃんで…………。」

「私が誘ったのはのカゲくんよ! あんたみたいな化け物じゃないの!!」

「ば、化け物!?」


そこまでか? そう思って俺はカフェの窓に映る俺を眺めた。

うん。化け物だ。

来る時に少し急いで来たのと、外の暑さで汗を大量にかいていた。そのため、窓に映る俺はぐちゃぐちゃだった。

これは酷い…………。


「そういう事だから。 さようなら!」


彼女はそう言って、去ろうとした。

しかし、何かを思い出したかのようにスマホを弄り出した。


「これでよしっと。ほら、見て。」


そう言って、彼女が見せてきたのは、俺の顔だった。


「これってまさか!」

「そう。晒しておいたわ!」

「は?」


俺は一瞬何を言っているのか分からなく、固まるが、やや経って急激に頭が回りだて、その言葉の意味を理解した。


やばいやばいやばい!!

オレはネットではちょっとしたイケメンって事で通っている。こんな写真が出回ってしまえば俺は二度とネットが使えなくなってしまう!


「ちょ、消してよ!」


俺は叫ぶが、彼女は無視して走っていってしまった。


俺は走り去るネムちゃんを見つめて呆然とした。


終わった。

顔の写真が晒されてしまうと、仲良くしてくれる人なんて居なくなる。

誹謗中傷コメントを書き込まれて、追放されるんだ。

加工詐欺をしすぎた人は、掲示板などに書き込まれ、ずっと、加工詐欺の人というレッテルを貼られ続ける。

そんな奴と仲良くする物好きは居ない。

ゲームなどの集まりなら分からないが、俺が居るのはどちらかと言えば恋愛とかそういう事をする場だ。

もう戻れない…………。

俺は体に力が入らなくなる感覚を感じた。

そりゃそうだ。ネットは俺の全てみたいな物なのだ。

俺の親はもう死んでしまっている。2人とも交通事故で死んだ。その頃俺は高校生だったが、そのショックで高校は辞めてしまった。

それからは死亡保険で入ってきた金と、親の遺産で暮らしている。

一生分はないが、人生の半分を遊んで暮らせる程度の金ならあった。

俺は無気力に生きていたが、それでも楽しみは一つだけあった。それがネットだ。

ネットは俺に生を繋ぎ止める存在だった。

それが無くなってしまったんだったら俺はもう死ぬしかないだろう。

俺はフラフラとしながらネムちゃんが座っていたベンチに座った。

ここで一休みしたらロープを買いに行こう。

もう楽になりたい。

俺はもう座っている気力もなくなり、人目も気にせず寝転がった。


「いたっ。」


腰に痛みが走る。どうやらベンチの上にはものが置いてあったようだ。

腰の下敷きになったその物を手に取って見てみると、それは、ダイアル式の鍵が付いた黒い箱であった。


何だこれ?


俺は物凄い違和感を感じた。

何故ならそれは俺の触ったことの無い材質のものだったからだ。

金属のようなものでもなく、プラスチックのようなものでもない。木のようなものでもないし、布や柔らかい素材のものでもない。

それを触った感想は、だ。

明らかにおかしい。

そして、もうひとつ気になるのは、ダイアルだ。

6桁の番号を入れると開く仕組みになっているみたいだ。

この異様な雰囲気を放っている箱の中にはなにがあるのか。俺はそれが気になって仕方がなくなってしまった。

しかし、ここで開ける訳にも行かないので、持ってきていた鞄の中に箱を入れ、持ち帰る事にした。



そうして今に至るという訳だ。

俺は何万通りものパターンを全てこなし、箱を開けることが出来たんだ。それでうっきうきで中身を見ようとしたんだが、その中から出てきたのは、箱だ。

そう。全く同じな。

始め、俺は単純作業のやり過ぎておかしくなってしまったんじゃないかと思ったんだが、ほっぺたをつねっても、目を擦っても、ベタベタ触っても変わることは無かった。

そうして俺は初めてそれが現実だと信じた。

だっておかしいだろ? 俺は頭が悪いので、論理的に説明したり、文学的に説明することは出来ないが、それでも、なんというか、おかしい。その一言に尽きる。

よしよしよし。1回冷静になろう。その出てきた箱は一番最初の箱と似ている物だ。ならば、これも開ければ何か出てくる可能性が高い。

多分、箱だろうが。


俺は実験を始めることにした。

まずは箱を何個も開けてみる。箱以外の中身が出てきたらそれはそれでいいし、箱が出たとしてもその箱を比較してみたりすることが出来る。

結果としては、が何個も出てきた。そう、全く同じだ。

どれだけ比べてみても違う所が見当たらない。

だが、俺は重大なことに気付いた。


それは、番号が毎回ランダムなものになっているという事だ。

箱本体は全く同じもののようだが、番号は変わっている。という事は、全く同じという訳じゃないのか?

うぅむ。分からない。

ここまで開けるまでに丸一日程費やしている為、思考能力が低下しているのか、答えになかなか辿り着かない。


俺は悩みの元凶である謎の箱を眺めた。

この箱は悩みの元凶であると共に、俺を救ってくれた存在でもある。この箱は異常だ。そんな存在が身近にあるにもかかわらずそれを解明せずに死んでしまうのは勿体ない。

死ぬのはこの箱の一番奥には何が入っているのか確認してからでいいだろう。


俺は壁に箱を並べた。


「よし! 目標はこの壁一面を箱で埋め尽くす事だ!」


本当にそれほどの量の箱が出てくるのかは分からないが、それを目標とした。


ふぅ。流石に疲れたな。

適当に食事を取って今日は寝るか!

俺はカップラーメンにお湯を入れ、暇を潰す為にテレビをつけた。


『速報です。今日、午前6時頃、男性一人の遺体が発見されました。遺体には、何かで溶かされたような形跡があり、警察は、他殺の可能性も視野に入れ、捜査をすすめています。』


うーん。最近物騒だな。まぁ、俺の家は見るからにゴミ屋敷だし泥棒なんて入って来ないとは思うがな。

俺は毎日の様に食べているカップラーメンを食べ終え、倒れる様にして、眠りに入った。



『速報です。今日、午後2時頃、東京都内に謎の建造物が発見されました。謎の建造物は凹凸のない塔のような形をしており、全長は…………えっと、どんなに高性能な望遠鏡を使っても確認出来ないとのこと。 警察は、謎の建造物の周りを閉鎖し、調査をすすめています。』



◇◇◇◇


「ふわぁぁ。」


よく寝たな。

時計を見る。俺は15時間も寝ていた様だ。

俺はショートスリーパーだし、いつもは3時間ほどしか寝れないのに、今日は何故かぐっすりと寝る事が出来た。

心做しか、体も軽い気がする。

よし! 昨日に引き続き、今日も箱を開けるぞ!


これは本当に単純作業な為、精神にくる。

幸いな事に、いちいち番号を入れる度に開くか確認しなくても、鍵が開くとカチャッと言う音が鳴る。

もう今開けている箱は7個目だが、この音が少しクセになってきた。

カチャッと言う音が鳴る度に達成感?を感じる。

何個も開けているうちに気が付いたが、この箱は中から箱は出てはくるが、箱を中に入れようとしても中に入らないのだ。

やっぱり出た瞬間に膨張しているのか?

金属は熱によって膨張したりすると聞いた事がある。

だが、俺にはこの箱が金属には思えないんだよな…………。


カチャッ


よし。7個目だ。


中から箱を取り出し、もう1回同じことを繰り返す。


その事をもう3回繰り返すと、不可解な事が起きた。


【スキル《解錠LV1》を入手しました】


これは…………どういう事?

箱を開けた瞬間、脳内に直接声が聴こえた。

そ、そうか。俺はとうとう頭がおかしくなったんだ!

だってそうでもなけりゃ、こんな不可解なこと…………。


そう思ったが、よくよく考えればこの謎の箱もおかしい。なら今起こったこともあるのか?


そう考えていると少し冷静になれた。

今のはもしかしなくてもスキルを入手したってことだよな? 俺はこれでもネットの住民。アニメや漫画は色々見ている。

こういうスキルものの定番はステータスと唱えると能力値が出る物だ。

もしかして、俺はその能力に目覚めた!?

善は急げだ! 俺は早速試す事にした。


「ステータス!」


俺の声が部屋に響き渡る。

あれ、発音が違ったのかな?


「すてぃたぁす!」


またまた声が部屋に響き渡っただけだ。

まさか英語じゃなくて日本語か?


「能力値!」


またまた声が部屋に響き渡、


ドンッ


「うるさい!」


隣の部屋の住民が怒鳴り声をあげた。

いや、お前の方がうるせぇよと思ったが、そんなことを伝える勇気もないので、大人しくすることにした。


しかし、ステータスとか、そういう物がある訳では無いようだ。 やはり俺の頭がおかしくなったのか? それともまさか幽霊…………。

うん! きっと俺の頭がおかしいだけだ!


怖くなった俺は、一番有り得そう事を答えにすることにした。

時計を見ると、深夜1時だった。

だが、昨日しっかりと寝たためか全然眠くない。

少し考えた結果、あと一つだけ箱を開けることにした。俺は別にキリのいい数字にしたいと思うような人間では無いため、構わずに11個目を開けようとした。


すると、俺は強烈な違和感に襲われた。

違和感の正体は、ダイアルの1番左のダイアルだ。

このダイアルは…………偶数? 別に分かった理由がある訳では無いのだが、ここは絶対に偶数だと分かる。


「まさかこれがの効果だって言うのか?」


にわかに信じ難いが、多分これはスキルの効果なんだろう。

うーん。もうこれは明日に保留するしか無いな。

今日のところは一旦辞めよう。眠くないと言ってももう夜だし、少し頭をリセットさせるためにも睡眠を取った方が良いだろう。

俺は今日も食事をとってそのまま寝た。




キキィー ドンッ!!


俺はものすごい音と共に起床した。

音から察するに近くで事故が起こったようだ。

俺は野次馬精神で窓から外を覗いて見た。事故は俺の家の目の前で起こったようで、車が近くの家のブロック塀にぶつかっていた。そして、車の前では何やら犬のような大きな動物が倒れていた。

これは…………狼か?

珍しいな。と言うか初めて見た。ここは普通に住宅街だし、近くに大きな森があるとかでもない。

誰かのペットなのか?

まぁ、別に俺に被害が出るわけでもなさそうだし気にしなくていいか。俺は窓をしっかりと閉め、カーテンもしっかりと閉めた。

さて、昨日の続きをしよう。

昨日はワンチャン勘違いだった可能性もある。

取り敢えず箱を見てみるが、やはりダイアルの1番左は偶数だという事が分かる。

これが本当だったら、箱を開ける効率がかなり上がる!

俺は試してみる事にした。


まぁ、試してみると言っても今までと変わらず箱を開け続けるだけなのだ。 俺が偶数だと思ったらそこは偶数だけにする。奇数だと思ったらそこは奇数にするという事をしした。

結果は5個やっただけだが、全てあっていた。これだけやって全て当たるという事は、俺はに目覚めたと言っても過言では無いだろう。

これは、とんでもない事になったな。

取り敢えず、ネットを使って調べてみよう。この世のことなら大体は検索をすると分かる。

んーと、取り敢えず、スキルや謎の箱や黒い箱などで調べてみるが、特にめぼしい情報は見当たらない。


どうやらこの現象は俺にだけ起きているようだ。

ネットに載っていなかったため多分俺だけだとは思うが、国とかが秘匿しているとかの可能性もあるかもしれない。

それなら俺はこの能力を隠した方がいいだろう。

俺は国が嫌いだ。

もし秘匿していなくても、国なんかの助けになる事はしたくない。


取り敢えず、俺はこの箱を開け続けよう。どう考えてもこの物事の中心はこの箱だ。

この箱を開け続けていれば必ず何か分かるはずだ。

というか、まずおれは家の壁一面をこの箱で埋め尽くすという目標を建てた。取り敢えずその目標が達成されるまで開け続けていれば何か起こるだろう。


俺はかなり長いスパンでこのことを解決していこうと思っていたのだが、変化は思ったよりも早く訪れた。




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