☆11 相談
彼にスマホを借りて姉に電話し終わり返した後、私はすぐにその場を去った。行先は姉とついさっき決めた新たな集合場所。より近くわかりやすい場所。
社殿の正面から見て左側に位置する絵馬を書く場所。なぜわかりやすいのか。それは大勢の人は社殿に向かって歩いている。その流れについていけば必ず社殿まで行くことができる。あとは、並んでいる列から左側に出るだけ。最悪、お参りしても左に抜けられれば問題ない。お守りを売っている方でも良かったのだが、そちらも人が多いだろうということでより人の少ない絵馬の方になった。
私が人流れに乗って着いた頃には姉ももう到着していた。
「おお来た来た。大丈夫?
「うん。たまたま良い人に出会ったから大丈夫だったよ、お姉ちゃん」
「そっか。良かった、良かった。合流できたことだし、お参りしてちょっと回って帰ろうか」
「そうだね」
私と姉はこのあと食べきれないほどの量を買ってしまって翌日の朝食にもなった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
まずは冬島さんとしゃべるために連絡を取る。
学校で話しかけてもいいのだが俺は学校ではあまり冬島さんとしゃべらない。それに話しかけづらい。一方、学校外つまりプライベートの冬島さんは笑顔が多く、表情が豊かだ。二つの顔を使い分けてる理由は知らないし訊こうとも思わない。彼女が自然に話すときを待った方がいいと思っているからだ。全く気にならないと言えば嘘になるがこういうのは深く踏み込まない方がいい。
俺は冬島さんに連絡アプリを使って連絡した。
【今日家に行ってもいいですか?相談がありまして】
いや、こうじゃないな。なんか固いというか。
【今から会える?相談があるんだけど】
これは軽すぎかな。
【今日これから空いてる?相談があって】
こんなんでいっか。
俺は冬島さんに送る文章を悩みながらもなんとか決め送信した。
すると、二分ほどで冬島さんから返ってきた。
【大丈夫です】
と簡潔に承諾の返信が来た。
俺はそれを見て既読だけつけ、すぐに冬島家に向かった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
冬島家のインターホンを押すと、ドタドタと音をさせながら冬島さんが出てきた。
「どうぞ」
通され一番最初に俺は冬島家のルールに則りちゃんとその内容を実行する。
「あ、私が言う前にやってくれてるんですね」
「勝手にやっちゃまずかったか?」
「いいえ、そんなことないですよ」
冬島さんは俺が覚えていたことがうれしかったのか顔が微笑んでいる。
「終わりましたね。こちらへ」
案内されたのは前回来たときと同じ席だった。
座るとお茶が出てきた。やはりそのあたりの礼儀やおもてなしが厳しい家なのかと思った。しっかりとしていて、同い年とは思えない。正直俺はそこまでできない。いや、粗茶ぐらいは出すけど。学校での雰囲気と違いすぎる。
「それで、相談というのは?」
「ああそうだった。相談というのは、修学旅行の班の話で」
俺は冬島さんにうちの班員(仮)の状況を伝えてから、誘った。
結果からいうと快諾とはならなかった。班員になることに関してはOKをもらえたのだが、いくつか懸念がありそれを解消することができたならという条件だった。
その懸念というのはまさしく
他の懸念はその後についてくることだ。もし、二人が仲直りできれば良し。そのまま班が確定する。だが、できなかった場合の話だ。俺は立花さんと組むことになっている。そのままであれば、男女同じ人数のところに入れば問題ないのだが冬島さんもいるとなると話が変わる。男子一人を新たに入れるか男子二人に女子一人のところと組むことになる。俺に紫苑以外の友達と呼べるものはいないし、男子二人に女子一人の組み合わせなんてそうそうない。俺らのパターンの方が少ないかもしれないが大差はないと思ってる。
二人を仲直りさせることができれば一番俺にとって居心地がよく楽しいものになるが果たしてどうなるか。
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