☆7 お礼2

 恥ずかしすぎて顔がかなり熱くなってるあたりだいぶ赤いと思う。

 もうかれこれ数分、笑い続けてる冬島さんの姉えりかさん。

「出来ましたー」

 と言ってキッチンの方から出てきたのは肉じゃが。肉じゃがと言えば彼女の得意料理だとか彼女に作ってもらいたい料理ランキングとか奥さんに作ってほしい料理ランキングとかなんとかによく出てくるやつ。…違うって。確かにかわいいけど。

「肉じゃが、おねぇちゃんの好きな食べ物なんだー」

「おいしいしそれに家で唯誓いちかが嫁に感じるじゃん?」

 えりかさんがとんでもない発言をし始めた。俺は危うく何もまだ口に入ってないのに吹きそうになった。

「おねぇちゃんまたそんなこと言ってー。おねぇちゃんのために週一で作ってるんだからね。昨日材料買ってて良かったよ」

「す、すごいな。それ」

「それに万が一材料が余ったらポテトサラダにしたり、豚汁にしたりするの」

「あ、それで豚肉なのか」

「「え?」」

「え?」

 俺の豚肉発言に対して二人がえ?と言いそれに対して俺がえ?と言った。なんか変なこと言った?豚肉が入ってる肉じゃが初めて見たし。ってか牛肉どこ?

「普通肉じゃがって豚肉じゃないの?」

「いやいや、肉って言ったら…」

「「豚肉」」

「牛」

「「「??????」」」



「いっただきまーす!」

 数分いや数秒経って何事もなかったように豚肉の肉じゃがを食べ始めた。

「うまいな」

 食べなれてないから肉じゃがと言われれば違うが食べ物としてはおいしいので問題は全くない。

「でしょー」

 自慢げいや自慢の一品なんだろう。冬島さんが嬉しそうな口調になってる。

「今日もいつも唯誓の肉じゃがおいしいよ~」

 えりかさんは冬島さんの作った肉じゃがを食べてなぜか泣いてる。大の大人が泣くほどおいしいのか。美味しいのは確かだけど。

「はいはい。ありがとう。おねぇちゃん」

 いつものことなのか、軽く受け止めいや、受け流していた。

「あ、そうだ。甘乃かんのくん、おかわりあるけどいる?」

「いるいる!ちょうだい!唯誓ー」

「おねぇちゃんに訊いてないんだけど。ってなんでお酒飲んでるの?」

「唯誓の肉じゃがと言ったら日本酒でしょ!」

「料理の種類関係なく飲んでるじゃん!」

「それは唯誓が日本酒に合う料理を作ってくれるからだよー」

 唐突に始まった姉妹トークだがすでにえりかさんが酔い始める。

「あ、そうだ。ごめんごめん。で、肉じゃがのおかわりいる?」

「も、もらいます」

 思い出したように再度冬島さんが問うてきた。ここで、いりませんとは断れず、おかわりをもらうことにした。おいしいのは事実だし、おそらくここに来ないと食べれない味だと思う。

「はい、どうぞ」

 二人におかわり分が届いた。

「ありがとう。冬島さん」

「新汰くんもお酒飲む?おいしいよ?」

「いや、まだ高校生…」

「おねぇちゃん!」

 えりかさんは冬島さんの声にびっくりして身体を起こした。背筋はピンとしている。ここから少しの間、冬島さんによるえりかさんへの説教が行われた。



  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「先程は姉がお見苦しい姿をお見せして申し訳ございません」

「いやいや、いいよ。全然」

 チラッとえりかさんの方を見ると説教されたことで完全に酔いが醒めたみたいだた。

「あ、そうだ。訊きたいんだけど」

「なんでしょう?」

「家ではこんな感じなのに学校ではあんな大人しいというかあんな雰囲気なんだ?」

 そうえりかさんと会ってからの彼女は教室のときとはまるで違う。今はなんかしっかりしてるというか自然な感じ。そら家だからかもしれないけど。

「それは私が人見知りだからだと思います。まだ、緊張してるんですよ」

「そっか。ありがとう」

 なんだかそれだけじゃないような気がしてる。でも、今は気にしてもしょうがないか。

「そろそろお開きにしますか?こんな時間ですし」

 時計は9を指していた。

「そうだね。そろそろお暇するよ」

「送りますよ?」

「いやいいよ。女の子一人を外に出すことになるし」

 送った帰りに襲われると大変だ。

「重ねて先日は助けていただきありがとうございました。またここへ来てください!」

「いえいえ、そんな。でも、おいしかったよ」

「だろう?新汰くんまた一緒に唯誓の飯食おうぜー」

 また、会話に割り込んできたえりかさん。

「じゃあ、また明日。教室で」

「はい」

 俺は冬島家を後にした。

 

 

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