異世界に転生したら貴族の子供だったので、時間もあるし魔法を極めて冒険者を目指すことにします。

にこん

第1話 才能の片鱗

俺の名前はシロナ。

異世界に転生した社畜だった。


前世ではとんでもないブラック企業に捕まってしまい過労によって事故ってしまった哀れな男。

それがこの俺シロナ。


そんな俺だったが神様は何もくれず気付いたらこの名門の貴族の家に生まれたのだが、俺は責任も重くない四男だった。

そのため比較的と言うより完全に自由な人生を送れる事がほぼ確定していた。


そして今日俺は12歳の誕生日を迎えた。

今日から俺も魔法の練習が出来るそうだ。


そんな俺を起こしに来たのはグリーズ兄さんだった。


「おい、シロナ。今日からお前も魔法の練習だろう?先行ってるぞ」

「うん!分かったよ!」


グリーズ兄さんはそう言うと部屋から出て行った。

それに続いて俺も部屋の扉を開けて外に出た。

廊下に出るとそこにはメイド長がいた。


「おはようございます。シロナ様」

「おはようございます。いつもありがとうございます」


メイド長は俺が起きる時間になると毎日のように部屋にやって来て着替えを手伝ってくれるのだ。

俺はその事にとても感謝している。


貴族にとって当たり前のことでも俺にとっては当たり前じゃないし、慣れないものだ。


「いえいえ、これが私の仕事ですから」

「それでも助かっていますよ」

「ふふっ。それは良かったです。さぁ朝食の準備が出来ておりますよ。食堂へどうぞ」

「はい!分かりました!」


俺はそう言ってメイド長と一緒に食堂に向かった。

食堂に着くと既に母上や父上達が席についていた。


「おぉ来たか。早く座れ」

「はい。失礼します」


俺はそう言いながら椅子を引いて着席した。

するとすぐに朝食が出てきた。


パンやスープなどだ。

どれも美味しそうな匂いをしている。


「よし、食べようか。いただきます」

『いただきます』


みんなで手を合わせてから食事を始めた。

そして食べ終わると俺はグリーズ兄さんが向かった庭へ向かう。


これからいよいよ魔法の練習だ。

俺たちに魔法を教えてくれるのはリコというエルフの家庭教師。


彼女は今年で20歳になるらしい。

つまり人間で言うなら成人済みの大人なのだが見た目は完全に子供にしか見えない。

しかし彼女の実年齢は200歳を超えているらしく見た目に反してかなりの高齢である。


そんな彼女だが実は凄腕の冒険者でもあるそうだ。

なんでもランクS級冒険者だと聞いた事がある。

そんな彼女が何故貴族の家の家庭教師になったのかはよく分からないけど今はただありがたく教えてもらうだけだ。


ちなみに俺は彼女には魔法の勉強をする必要が無いと言われた。

理由は俺には魔法の才能があるからだそうだ。

だからと言って甘えるわけにもいかないため暇な時は自主的に本を読んでいる。


そんな努力の成果が今日出てくれたらいいのにとかも思う。


「おっ!来たか」

「お待たせしました」

「あぁ大丈夫だよ。早速始めようか」

「はい!お願いします!」


こうして俺の新しい生活が始まった。

まず初めに俺は基礎的な事を教わった。


魔力とはなんなのか。属性とはなんなのか。

それらを一通り学んだ後に魔法を使う訓練をした。


「いいかい?シロナ君。魔法というのは自分の中に流れている魔素と呼ばれるエネルギーを使って使うんだ。例えば……」


そう言ってリコ先生は自分の手のひらの上に火を出した。


「こんな感じかな?」


「すごい……!」


初めて見る本物の魔法に感動を覚えた。


「じゃあやってみようか」

「えっ!?もうですか!?」


まだやり方しか教わっていないんだけど……。

大丈夫かな?


「大丈夫!私も最初は出来なかったよ。でも何度も繰り返しているうちに出来るようになったよ。それにものは試しさ」

「わかりました!やってみますね!」


俺は集中して体の中に流れる魔力を感じようとした。


(なんだこれ?なんか温かいものが体の中に流れてる?)


「そうだよ!それが魔力だ!」

「うぇっ!?声に出てました?」

「出てたよ。それでそれが魔力だよ。その感覚を忘れないで」

「はい!」

「よし!それじゃあさっき教えた通りにやってみて」

「はい!」


俺はさっき言われた通りに体内にある魔力を動かして


「ふぁ、ファイアボール!」


ボン!と俺の手のひらにファイアボールが出てきた。


「おぉ!出来たじゃないか!」

「やった!」

「やはり君には才能があるみたいだな。流石だ」


そう言って褒めてくれるリコ先生。

だがグリーズ兄さんはつまらなさそうにしていた。


「先生、俺出来ねぇんだけど」


グリーズ兄さんは俺よりも数年前に練習を始めていたはずなのにそれでも出来ないようだ。

そう言えば聞いたことがある、魔法は難しいということを。

それに魔法は才能がなければ使えないということ。


「才能だな。シロナ君には特別才能があっただけさ。グリーズ君がそれを気に病む必要は無いさ」

「そう言われてもよぉ。やっぱ悔しいぜ」

「そうだなぁ。じゃあこうしよう!シロナ君は1人で練習していてくれ。グリーズ君の方は私が見てあげよう」

「分かった。よろしく頼む」

「任せておきたまえ」


俺は1人で練習を始めた。


そうして数十分経った頃。


初めはファイアボールしか出来なかった。俺はファイアソードを出せるようになっていた。


「先生。ファイアソードまで出来るようになりましたけど」


俺は先生にそう報告する。

するとリコ先生はとんでもない物を見たような顔をした。


「早すぎるぞ!?まだ数時間しか経っていないぞ!?」

「そうなんですか?」

「そうだよ!普通なら数ヶ月かかるんだよ!ファイアソードは!」

「そうなんですか」

「ふむ。君はとんでもない才能の塊だな」


そんなことをブツブツと言い続けるリコ先生。


「まだ初日しか見ていないがいずれこの私も越えられるかもしれない」


その時が楽しみだ、と笑うリコ先生。


「まぁとりあえず今日はここまでにしておこう」

「分かりました」

「また明日同じ時間にここに来てくれ。才能があるからとさぼれば意味はないよ?」

「はい!」


俺はそう返事をして屋敷へと戻った。

その日の夜俺はベッドに仰向けで寝ながら右手を天井に向けた。


「魔法……俺には才能があるみたいだな」


リコ先生にもそう言われたし。


「これから毎日楽しみだな。魔法を勉強するのは楽しい。明日からどんなことをするんだろう?」


そう思い俺は瞼を閉じた。

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