静止線
これがほんとうの左様ならなのか、いつもほんとうの左様ならなのか、それだけを尋ねている。左様ならのありかはどこ? いつかはほんとうの左様ならが訪れる。それはいつ? わたしを褒めてくれる人がわたしの周りにはいて、そのさらに周りにはわたしを嫌う人たちがいる。その外側には、わたしを好きだと言う人たちがいるのだろうか。何層にも重なり合った世界のなかで、境界をなくしたわたしに手を差し伸べる人がいる。すれ違うあなた、その心は今わたしに話しかけなかったろうか。否定のなかに肯定を読み解いて、人のこころがそんなに残酷ではないことを確かめる。息遣いはすべてを教える、挙措のひとつひとつまで。わたしという形が溶けて空に向かってなくなっていく時、わたしは何者かに支えられていることをふと感じる。こころが一つしかないものであれば、わたしはけっして生きていられないだろう。なくなりかけたものを、それら(彼ら)は補う。やがて感じ合う時があることをもとめて。信じあうことは、限りなく遠く果てなくて、手を伸ばしては届かないそこへと向かってあがき続ける。わたしがひとつの嘘をついているとすれば、それはわたしが苦しいふりをしているということだ。生きることの重さを確かめ合う者たちは、手を触れずに呼吸からすべてを感じ取る。これはほんとうの左様ならなのか、いつがほんとうの左様ならなのかと、わたしはわたしではない者にこころのなかで訊いている。わたしのなかで何者かがかすかにささやくのだ、「否」と。それはわたしのなかに生まれた誰かのこころなのだろう。わたしだけではけっして生まれ得なかった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます