第32話 終焉姫
「遂に終焉の始まりが再開したようね」
「そうね。終焉姫様が眠りから覚めた今こそ絶望の進撃を開始しなければいけないのよ」
「あなたの予知眼ではどのような結末を映しているのかしら」
「先に結果を知ってしまったら面白くないわ。でも、これだけは教えてあげるわ。未来は私たちが望む方向に進んでいるとね」
「あの子の絶望が世界をより良い未来へ先導してくれるのね」
「そう言う事ね。でも、気がかりな点が一つあるわ。私の予知眼でさえ見る事の出来なくなった終焉姫様の行動。あのお方はもう私たちの知っている終焉姫様でないと言えるわね」
「それは私達にとっては吉報と言えるのではないかしら。世界を終わらせるには終焉姫様は優しすぎたのよ」
「シルバー様、これでルーザーの町の破壊も終了です」
「何か気配を感じる。北西の方角800m先」
「すぐに確認させます。フント、見てこい」
「わかりました」
ここは獣人国家バリアシオンである。10年前にディスピアの暴発により国の3分の1は跡形もなく破壊された。バリアシオンには3つの大きな町と、その周囲に小さな村が存在していたが、暴発により3大都市のレーベは消滅し、残りのルーザーとフリーダムも建物は倒壊し多数の死者を出した。
フリーダムの町の長であるミーチェは、人間国家には関与しない人間不可侵条約を無視して人間狩りを再開しようとしていたが、終焉姫の暴発によって人間狩りを断念して町の復興に努めていた。
※ミーチェ 猫の獣人 体長150cm。長い白髪で、全身は白と黒のマダラの毛並みで覆われている。見た目は女性のように華奢で可愛げがあるが男性である。細い尻尾は黒色であり猛毒を持っている。性格は自由気ままのワガママ気質であり、自己の欲求を満たすためには手段を択ばない。フントとシィアンの二人の補佐官を絶えず従えている。
※フント 犬の獣人 体長145㎝ 真っ黒の毛並み見た目はモフモフだが剣をはじくほどの堅さを誇る。鋭い牙を持ち強靭な顎の力でダイヤでさえ砕く。四足歩行で走れば人間の10倍は早い。嗅覚が鋭く半径500m内は特定できる。
※シィアン 犬の獣人 体長155㎝ 金色の毛並みで見た目はモフモフだが剣をはじくほどの堅さを誇る。鋭い牙を持ち強靭な顎の力でダイヤでさえ砕く。四足歩行で走れば人間の10倍は早い。嗅覚が鋭く半径500m内は特定できる。
※ シルバー 16歳(女) SSSSランクのレア称号『終焉姫』 スキル 支配の王 無限細胞再生能力を有する。 腰まである銀色の髪に、大きな赤色の瞳、雪のような真っ白な肌。黒の魔道服を着ている。元ディスピア(ダぐネス)は育ての親を殺された事を知ってしまい魔力を制御できなくなり暴発して塵となった。しかし、10年の時を経て再生したが、全ての記憶を失っていた。塵となった状態でもごくわずかな成長はしている。ディスピアは獣人族のミーチェに拾われて、共に行動するようになる。ミーチェは記憶のないディスピアの銀色の髪を見てシルバーと名付けた。ディスピアに関して詳しくは前作『終焉の姫と聖女の姫』にて。
「シルバー様、なぜ、ルーザーの町を破壊するのでしょうか?」
「終わらせるため。全てを終わらせるため」
記憶を全て失ったシルバーは終焉姫の役割を果たす為のマシーンとなっていた。
数日前、ミーチェは崩壊されたレーベの町を探索している時に偶然ディスピアを見つけた。人間の男なら性奴隷として、女なら殺して処分すると過激な思想を持つミーチェはディスピアを殺すために近寄った。しかし、ミーチェに気付いたディスピアは不気味な赤い瞳で笑いかけ、「世界を終わらせる」とささやいた。
ミーチェは一瞬でディスピアに逆らってはいけないと体が察知して、すぐに跪いて頭を下げ「協力いたします」と返答した。
「獣人国家も終わらせるのですね」
「全てを終わらせる。それが私の使命」
「わかりました」
「ミーチェ様、瓦礫の下にエレファントがいました。まで息はあるようです」
「シルバー様、ルーザーの町の長であるエレファントが生存しているようです。彼も私たちの仲間に迎え入れてはどうでしょうか?」
「終わらせる」
「わかりました。フント、殺してこい」
「私が終わらせる」
「火炎球」
「シルバー様、魔力を抑えてください。そのような巨大な火炎球を放たれると私達も死んでしまいます」
シルバーが火炎球と唱えると、上空には直径100mの火の球が出現していた。ミーチェ達は火炎球の熱風により全身から多量の汗を流し、今にも体が燃えてしまうと感じるほどの熱気を感じていた。
「わかった」
シルバーは作り上げた火炎球をエレファントに向けるのをやめて、数キロ先の森に投げ込んだ。火炎球を投げ込まれた森は一瞬で灰になり大きなキノコ雲が発生して太陽の光を遮り闇夜のように暗くなった。そして、数秒後にはすさまじい風圧がミーチェ達を襲い、10mほど吹き飛ばされた。
シルバーは魔法で結界を張っているので問題はない。しかし、これは昨日、自分の放った火炎球の爆風により体が吹き飛んで全身を骨折した教訓を経て学習したのである。
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