第24話 不審人物
3階でも2階と同様に同じ対応をしたが、誰も『不滅の欲望』という言葉を耳にした者はいなかった。
「アルカナちゃん、どうしますか?」
「そうですね。収穫もあったので執事室に戻りますね」
「わかったわ。それでは執事室に戻りましょう」
私は執事室に戻って1人で今後の事を考えることにした。
2人の平民男性から知り得た情報では、来週に『不滅の欲望』の会合がある事、バトルクワイ公爵の息子アルドリックが『不滅の欲望』のメンバーである事、シェラルトはアードリアンという名の兵士には『不滅の欲望』のこと話していた事である。最初に調べるべき点はアードリアンである。ロリポップの話しではこの屋敷に仕えている兵士にはアードリアンという名の兵士はいないとのことだった。
私は全ての兵士を1人ずつ執事室に呼び、『不滅の欲望』という言葉を聞いて動揺をする人物を探し出すことにした。
『コンコン・コンコン』
私が1人で考え事をしていると扉をノックする音がした。私はすぐに扉を開く。
扉を開けるとアーダルベルト伯爵が立っていた。
「どうぞ」
「アルカナさん、失礼します」
屋敷の主人であり身分も上のはずのアーダルベルト伯爵が軽くお辞儀をして執事室に入って来た。
「伯爵様、そのようなへりくだった対応はしないでください。屋敷の当主らしく威風堂々としてください」
「私はアルカナさんを尊敬していますし頼りにしています。なので、私の振る舞いには気にしないでください」
アーダルベルト伯爵は特に表情を変えることなくさらりと答える。
「私が気にするのです」
「そうなのですか。でも、変えるつもりはありませんので諦めてください」
「わかりました」
私はこれ以上の答弁は無駄だと感じて受け入れることにした。
「ロリポップさんから『不滅の欲望』の件は聞きましたが、アードリアンという名の兵士は記憶にはないのですが、1人違和感を感じる兵士を居た事を思い出しました。それを伝えるためにお邪魔したのです」
「違和感の感じる兵士?」
「はい。この屋敷ではクローヴィス、ハーロルトが実質的に管理をし、この二人に逆らう兵士はいません。しかし、この2人と対等に話をする人物がいたのです」
「それはシェラルトなのではないでしょうか?」
「話の流れから私もそのように感じてロリポップさんにシェラルトの特徴を教えてもらったのですが、全くの別人だったのです。もしかすると、その男がアードリアンなのかと思ったのです」
「たしかにその可能性がありそうですね。その方は今屋敷に居るのでしょうか?」
「恥ずかしながら私はほとんど屋敷の事には関与していまんせんので、名前だけでなくどの部署を担当しているのかも知りません。ロリポップさんに特徴を伝えて探し出そうかと考えたのですが、執事であるアルカナさんの判断を仰いでからすべきだと思いました」
「ロリポップさんに探しに行かせなかったことは正解だと思います。その人物はかなり危険だと思いますので単独での探索、またはこちらが探していることに気付かれてはいけないと思います。新しく執事になった私がこれからの屋敷あり方をすべての兵士に説明いたしますので、その際に探し出すことにします」
「わかりました。それならばその兵士の特徴を教えさせていただきます」
アーダルベルト伯爵は兵士の特徴を私に教えてくれると執事室から出て行った。そして、アーダルベルト伯爵と入れ替わる形でカロリーヌが執事室に入って来た。カロリーヌは私専属のメイドなので私の側に常にいなければならない。
「アルカナ様、何か御用があれば何なりとお申し付けください」
「今のところは特に用事はありませんので隣の部屋で待機してもらってよろしいでしょうか?」
「わかりました」
私は全ての兵士を1人ずつ呼び出してアードリアンらしき人物を探す予定だったが、それを取りやめて別の方法を取ることにした。アードリアンと思われる人物像は把握することができた。なので、新執事として、兵士たちを全員集めて就任の挨拶と今後の屋敷の在り方を説明することにした。
そのため挨拶の内容と今後の屋敷の在り方についてじっくりと考えることにした。
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