第33話 エルフの寿命

 少し開けたところで俺たちはござ・・を敷くとその上に座る。

 ルシオラはそれを確認してから、アイテムボックスから弁当を取り出して並べていく。


 「結構手の込んだ料理を作って来てるんだな?」

 「ホントだね。お母さんと同じくらい上手かも」

 「さすが60歳」

 「ちょっとキョウジさん? エルフは長寿で老化も遅いから、100歳までなら人間でいう所の20歳くらいよ。女性の年齢を老人のような言い方をするのは失礼ではないかしら?」

 「たしかにすまない。人と老化の仕方は違うとは思っていたんだが、エルフについてそこまでの知識はなくてな。悪かった」

 「ルシオラおねーちゃん ヒナおなかすいた」

 「あ、ごめんねヒナちゃん。はいこれ。いっぱい食べてね」

 「おいしそう! いただきましゅ」


 年齢のことで少しルシオラを怒らせてしまったが、ヒナのお陰で空気が弛緩する。

 俺たちの前には料理が置かれそれぞれが食べ始めているのだが、バジュラはヒナの傍に寝そべっているがバジュラの分はないようだ。

 ルシオラはバジュラのことも気に入っているので用意していそうなものなのだが、用意がされていないということは従魔ならどこかに勝手に食事をしに行くとでも思っているのかもしれない。


 「バジュラ、ほらジャーキーだ」

 「わふん」


 俺はアイテムボックスから買っておいたジャーキーを取り出すとバジュラに与える。


 「あっ。ゴブリンがいたら、バジュラのご飯になると思って用意をしていなかったわ」


 ルシオラの声を聞いて、俺はバジュラにゴブリンを食べるのか? という視線を送ると、首を横にブンブンとふっているので、どうやらゴブリンはバジュラのお気に召さないようだ。

 ヒナが捕まえたヘビは食べていたから、食べるものがなければ食べるのかもしれないが。


 俺たちは昼食を食べながらこの後の予定について話し合う。


 「ルシオラの威圧もマシになったみたいだが、この後はどうする? ゴブリンの集落があるならさすがにそこから逃げることはないだろうし、それを考えるとなさそうじゃないか? まぁ、途中からはほぼルシオラの訓練をしただけになったが……」

 「訓練の件は感謝しているわ。調査をする時間をこちらに使ってくれたのだから、ギルドに戻ったら私が魔法の訓練を依頼したという形でクエストを達成したことにしましょうか」

 「いいのか?  だがまあ、あの程度なら常時依頼1回分くらいだろ? それなら別に必要ないぞ」

 「そんなに少ないわけがないでしょう! 困っていた悩みが軽くなったのよ」

 「なら、俺たちは初心者だし俺やレイリーは国や町のこともまだよく知らない。報酬は俺たちが困っていたら助けてくれるっていうのはどうだ?」

 「そんなことで? それだと私だけが得を……」

 「いやいや、困っている時に助けてもらうってのはデカいだろ。ルシオラがさっき自分で言ったことじゃないか」

 「そう言われるとそうね。わかったわ」

 「グルルゥ」


 俺たちが会話をしていると、バジュラが唸り始める。


 「どうやらゴブリンが昼食の匂いに惹かれてやってきたのかもしれません。私が処理してきます」


 レイリーはそう言うと立ち上がり、バジュラが警戒をする方向へと移動していく。

 しばらくすると、レイリーが戻り俺たちに報告する。


 「ゴブリンが3体でした」

 「ふむ。バジュラの索敵範囲を考えると、まだ調査が必要そうなのはゴブリンが出てきた方向か?」

 「そうね。そちら側の奥を調べたら戻りましょうか」


 俺たちは昼食を食べ終えて片づけを済ませると、先ほどゴブリンが出現した方向へと足を進める。

 時折、ゴブリンが散発的に出現するが異常性はなにもない。

 まあ……、俺たちがクエスト達成をした時に倒したゴブリンは俺のダンジョンのゴブリンだしな。

 このまま何も変わりがないだろうとは思いながらもさらに奥へと進んでいくと、グギャグギャとゴブリン同士で争っているような声が聞こえる。


 「ルーナ、ヒナ注意しろ」

 「わかったわ」

 「あい」


 結構な数がいるような声がするので、俺はルーナとヒナに念のため注意を促す。

 俺の声を聞いて二人は剣を握りしめ警戒している。

 俺たちは音を殺して声がする方向へと近づくと、洞窟の前で10体VS10体くらいでゴブリンが争っているようだ。

 ゴブリンの死体も転がっているので、初めはその倍くらいはいたのかもしれない。


 「あの洞窟が集落なのかしら。とりあえずは調査はこれで終了ね。戻りましょう」


 ゴブリンと洞窟を確認したルシオラが今回は調査が目的なので報告に戻ろうと言う。


 「洞窟内にもそれほど数がいるような気配がないし、ここで倒してしまおう。レイリー行くぞ。ルーナとヒナは俺たちが数を減らしたらバジュラと来てくれ」


 俺はそう言うとレイリーと飛び出す。


 「ちょっと! 今回は調査なのだから、倒す必要はないのよ」


 ルシオラは倒す必要がないと声をあげるが、逆に倒してもよいはずだ。


 「ロックブレット!」

 「水魔法だけでなく土魔法まで!? しかも基礎ではなく攻撃魔法だなんて。ギルド登録時にはなかったはず。いったいこれは……」


 ルシオラが何か言っているが、俺は魔法で3体のゴブリンをを始末すると、一気に近寄って剣を一振りする。

 それに合わせてレイリーも同じように剣を振るう。

 いきなり第三の勢力の攻撃にゴブリンたちは混乱している。

 洞窟内にいたゴブリンも応戦に出てきたようだ。

 俺たち二人が半数ほど倒した所で、後ろからバジュラの鳴き声が聞こえた。

 どうやらルーナたちも来たようだ。


 俺とレイリーはルーナたちが入れるように間隔をあけると、ダンジョンで訓練をしていた通りにルーナとヒナ、バジュラが自分たちの役割を判断してゴブリンに襲い掛かる。

 どうやらルーナもヒナもダンジョン産のゴブリンでなくても、しっかりと戦えているので問題はないようだ。


 「まさか私が一切手を出さなくてもこんなに早く倒しきるなんて。それに本当にルーナさんもヒナちゃんも戦えたのね」

 「ゴブリンはもうお得意様よ!」

 「うん!」


 ルシオラがルーナとヒナの戦闘をみて声をかけると、二人は胸を張った。

 

 「洞窟内にはゴブリンはいないようだな」


 俺は洞窟の内部を確認するが、すべて外へ出て応戦していたようだった。


 「合計で40体という所かしら。集落のできかけね。恐らく今回は調査と討伐を同時に達成したということになると思うわ。残敵もいないようだし戻りましょうか」


 周辺を確認して問題がないことを確かめた俺たちは帰路へ着いたのだった。



 ギルドへ報告をしてルーナたちをナンナ家まで送ったあとで、俺はレイリーとダンジョン内で今日の出来事を話す。


 「まさか本当にできかけとは言えゴブリンの集落があるとはな」

 「そうですね。どうやら攻め込んでいたのは私が集めていたゴブリンだったようです。気絶から目覚めた時に、ルシオラの威圧から逃れ、その先に洞窟があったようですね」

 「なるほど。ゴブリンたちにとっては不運だったが、俺たちにとってはラッキーだったな」


 ダンジョン産で常時依頼の達成をし過ぎて、ギルドが調査をする羽目になってしまった今回の出来事ではあったが、結果的には上手く乗り切れた。

 今後はダンジョン産でクエストを達成する場合には、数を調整する必要があるだろう。




 ~ ひなのにっき④ ~


 きょうは ごぶりんのちょうさに るしおらおねーちゃんをなかまにくわえて やまにいった。

 とちゅう るしおらおねーちゃんが まほうのくんれんをしていたよ。 

 まほうは いめーじ? がだいじなんだって!

 ひなも まほう おぼえられるかな?

 おぼえたいなぁ。

 ごぶりんをたおしたら ひなとるーなのたたかいかたがよくなったと にいにがほめてくれた。

 うれしかった。

 

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