第56話 おっぱいハーレム
「お姉様!」
ラナから降りるとレアナが突進してきた。おふっ!
……こ、この兄妹、前世は猪だったのかしらね……?
「淑女がはしたないわよ。もっとお淑やかにしなさい」
と言いつつレアナを抱き締めてあげる。男の子も可愛いけど女の子もまた可愛いもの。まったく、変なところで女が出るのよね。おっぱい好きは常に出ているけど!
「いらっしゃい。寒かったでしょう。中に入りなさい」
叔母様も出迎えてくれたようで、温かく迎えてくれた。
「マーナ。ラン。あとはよろしくね」
二人に指示を出し、左右に抱きつかれながら城に入った。
そのままリビング的な部屋に向かうと、珍しい人がいた。
「あら、マーグ兄様。お久しぶりです」
お父様の兄、マルズ伯父様の子だ。
普通なら伯父様がカルディム家を継ぐのが正しいのでしょうけど、伯父様はマウルテア伯爵家に婿入りしたのだ。
伯父様はガリゴリの肉体派であり脳筋タイプ。剣に生きる人だった。
今は亡きお祖父様がこいつではダメだと判断してお父様に当主を継がせたそうよ。
そんな親がいながらマーグ兄様は知能派。勉強が好きで魔法も精通している。十六か十七歳だからまだ学園に入っているはずよ。
「ああ、久しぶり。三年振りか?」
「そうですね。もうそのくらいになりますね」
なにかのパーティーで会ったのが最後かしら? 王都にいても頻繁に会うほどではない。一年に一回も会えばいいほうじゃないかしら? 別の家なわけだしね。
「今日はどうされたのですか?」
こっちにくるなんてお祖母様が亡くなったとき以来。マーグ兄様から見たら実家でもない。遠い親戚の家くらいなものでしょうよ。
「逃げてきた」
はぁ? 逃げてきた?
「お見合いでもありましたか?」
「ああ。父上が勝手に決めてきたんだよ」
冗談で言ったら正解でした~。
「好みの方ではなかったので?」
マーグ兄様は次男だ。家を継ぐのは伯父様の血を色濃く受け継いだランダー兄様。別に見合いを急がせる必要はない存在なのにね。
「いや、どうやらぼくを婿入りさせたいようだ」
あー婿入りね。意外と男子が産まれない家はある。婿入り話なんてよく聞くわ。
伯父様も婿入りだから、マーグ兄様が婿入りしても抵抗はないんでしょうね。さらに剣とか苦手な人でもある。伯父様的には家から出しても惜しくはないのでしょうよ。
「それは大変ですね」
「チェレミーが羨ましい。ぼくも火傷を追って田舎に引っ込みたいよ」
まあ、これは女だからできた手段。男なら火傷の一つや二つで婚約は破棄されないでしょうよ。伯父様の顔なんて傷だらけだし。
「意志と覚悟がないのなら止めたほうがいいですよ。望まぬ結果となりますから」
まあ、多感な年頃。いろいろ思うことがあるのでしょうけど、嫌だな~くらいで動かないほうがいい。そんな曖昧な気持ちでは絶対叶えられないわ。
「チェレミーは昔から大人びているな」
「仕方がありません。そう生まれてしまったのですから」
前世の記憶を持って産まれたらこの国で生きるのは困難でしない。ましてや男の心を持って女に産まれては地獄でしかないわよ。
「ちなみにお相手はどこの方なので?」
「マークマン男爵のお嬢さんだ」
「……伯父様の部下の方で?」
次男なら男爵家に婿入りさせるのも不思議じゃない。けど、あの伯父様の性格を考えたら息子の部下に息子を与えるとかやりそうだ。長男はやれないんだからね。
「ああ。父上を支える一人だ」
「……伯父様も丸くなりましたわね。派閥を築こうだなんて」
戦いがなくて脳の筋肉が緩んだのかしらね?
「派閥?」
「自分が築いた地位を息子に譲りたいと考えたのでしょう。そのためにマーグ兄様を部下の娘に与える。そうなれば親戚筋となり、一つの塊となる。その塊が強ければ人は集まってくる。より大きな塊となっていきます」
貴族の婚姻なんてそんなもの。仲間を集めて排除されないように血で繋がるのよ。
それが悪いとわたしは言わないわ。それもまた生き残る手だしね。弱いなら群れろ。群れて強くなれ、だもの。
「チェレミー。あなたはそんなことを言ってしまうからダメなのよ。年相応にしなさい」
なんて叔母様に叱られてしまった。
「ふふ。こんな娘なのだから諦めてください。叔母様にはナジェスやレアナという可愛い子供がいるんですから」
未だにダッコちゃんな二人の頭をナデナデする。
「マーグ兄様も確固たる信念や望むことがないのなら家庭を持つのもいいと思いますよ。夢を貫けるなんて者はそうはいないのですから」
わたしは貫いてみせるわよ。おっぱいに囲まれたスローライフをね。まぁ、ドン引きされるから口が裂けても言えませんけどね!
「貫けているチェレミーは強いよ」
「そういうときは立派だよと言うものですよ。特に女性相手にはね」
「ふふ。そうね。チェレミーが男だったら女性に好かれていたでしょうね。妙に男前なところがあるんだから」
わたしも男に産まれておっぱいハーレムを目指したかったわ。いや、今もおっぱいハーレムになってますけどね!
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