掌編の小箱

深川 夜

東の人魚

 東の国に人魚が住んでいた。

「人魚は船を沈める」と人々から忌み嫌われていた。


 ある夜、漁に出た船が嵐にあった。

 人魚は海に投げ出された人々を助けた。

 十三人目に助けようとした若い男が、人魚の頭を掴み、海の底へと押しやった。

 それきり人魚は姿を見せなくなった。

 嵐の夜も凪の朝も人魚の姿はどこにもなかった。


 今でも東の国では人魚が船を沈めると信じられている。

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