第22話 作物を増やそう


 鍛冶屋に鋼鉄のつるはし製作を命じると、彼らは大工や焼き物師と協力して『鍛冶工房』を作り始めた。


 鍛冶仕事をするためにはかまのある鍛冶工房が必要である。


 ちなみに、TOLでも鍛冶屋に最初の命令をするとまず鍛冶工房を作りだすのだけれど、焼き物師がいないとそのかまを作ることができず、いつまでも鍛冶屋が鍛冶を始めない。


 ゲーム的に初見殺しと言えば初見殺しだが、付与可能ジョブが増えた時はせめて一人だけでも領民に付与しておくのが無難だってことだな。


 もちろん俺はそこらへん知っているので、最初から焼き物師を3人育てて来たんだけどね。


「うおおお、鉄を打ちてえ」


「鉄を打ちたくて右腕が痙攣けいれんするぅぅうう!!」


「早くぅ、早くかまを作るんだぁ!」


 なんかヤベー奴らだな。


「じゃ……じゃあ頼んだぜ(汗)」


 俺はそう頼んで鍛冶屋たちの元を去った。


 さて、『鋼のつるはし』ができるまで次の魔境第三地区の攻略ができない。


 厳密に言えばできないことはないのだけれど、つるはしのあるのとないのでは攻略難易度が全然違ってくるので、それまではおとなしくしておくのが無難だ。


 というワケで、今のうちに内政しとくか。


 今日は農業に手を付けていくことにする。


 そう。


 今までダダリで育てることのできた作物はジャガイモだけであった。


 だが、人間一つの作物だけで生きていくことはできない。


 現状、育てたジャガイモをよその商人へ渡し、その債権カネでよその産物を仕入れてきてもらうということになっていた。


 これが貧乏の元なのである。


 ひとつの産物しか育てられない領地は、よその商人に対する依存度が高いからだ。


 ジャガイモは買いたたかれるし、輸入物価も高くなる。


 これを解消するために、産業、産物、作物の種類を増やし、『領地単位での自給自足』を目指していく必要があった。


「というワケでコレらの種を育てられるように研究してほしいんだ」


 俺は以前『種家』を付与した4名に、魔境の各地区で獲得した新素材を提供しておく。


 第一地区……薬草(b種)、ドクダメ草、眠り草、綿。


 第二地区……薬草(a種)、ほうれんそう、ゴマ、骨粉


「新作物の研究はよいことだと思いますが……農地はいかがします?」


「ジャガイモ畑を減らすんで?」


 そこで種家たちがそんな心配をする。


 そりゃそうだ。


 ジャガイモは現状で確実に収穫できる作物。


 一方、新作物というのは育ててみて失敗ということもあるので、いわばギャンブルなのだ。


「いや、減らさないぞ。ジャガイモはうちの主食だからな」


「ではどうするので?」


「農地を広げるんだ。魔境を攻略して領土が広がっているからな。これを開墾して農地を確保する」


「「なるほどー!」」


 こうして種家たちは安心して新作物の研究を始めた。



 ◇



 数日のこと。


 俺はうららかな日差しのさす庭のベンチで、リリアのふんどしのお尻をペロペロと舐めていた。


「気持ちいいー! 気持ちいいわー!」


 少女はびくんびくんとお尻を跳ね、ショートヘアーをサラサラと舞わせている。


 ぷりっとしたお尻と裏太ももの付け根のところをペロペロされるのを、リリアはとても好むのだ。


「あー! あー!」


 ヨダレを垂らして、りんとした美少女がだいなしである。


 ……言っておくが、別にサボっているわけじゃないぞ。


 領民にジョブや指令を与えたら、しばらく待っているのも領主の仕事だ。


 ゲームならこちらで指令を与えている間にあちらの指令が終わっていて次の指令を出して……という具合に時間の流れが早いけど、現実では一日といえばちゃんと一日で、一週間といえばちゃんと一週間かかるから、その間は嫁の尻をなでてやったり、おふくろの肩を揉んでやったりして日常を過ごすのである。


「若ー! 大変でやんすー!……って、うっひょー??」


 そんな時、盗賊から忍者へと進化したリッキーが木の上から降ってきた。


「キャー! ヤダ、エッチー!!」


 と言って、俺に抱き着いてくるリリア。


 むっ、可愛いヤツめ。


 俺はよしよしとリリアの頭をなでてなだめてやる。


「あんたら何やってんでやんすか!? こんな真っ昼間に!」


「悪い悪い。それよりなんだ? 大変なことって」


「……あ、そうだ! 若、女の尻なんて舐めてる場合じゃねえでやんすよ!!」


 リッキーは飛び上がって報告を始める。


 忍者の報告によると、北のガゼット領がダダリ領に攻めてくるそうだ。


「……ガゼット領が? 確かな情報か?」


「間違いねえでやんす。この目で森を進軍してくるヤツらを見たんでやんすから」


「敵の兵力は?」


「おおよそ800。もうじきやってくるでやんすよぉー!!」


「……わかった。すぐに戦闘領民を集めろ」


 そう命じるとリッキーは「御意ぎょいでやんす!」と言って消えた。


「あ、アーノルド。だいじょうぶなの?」


 気づくと、いつも気の強いリリアが俺の腕の中で震えている。


 戦争は怖いからな。


「だいじょうぶさ。そのために準備してきたんだ」


 俺は美少女の頬に頬をぴたりとくっつけてそう答えた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る