第1章7話 幹部登場! 衝撃の事実

制御室にいたロボットを倒した悠の後ろに人獣型のような魔物が立っていた。しかし、本来魔物は人語を話すどころか理解することもできないはずである。


 「あんた、人獣型なのに人語うまいね。練習したの?」


 「?違う違う。確かにその辺の魔物は人語を話せないけど俺ら三王の幹部レベルになると普通に話せるよ。」


 「三王?」


三王とは魔王直属の眷属であり、それぞれが陸海空を統べるもの。その全容は未だに謎に包まれている。


 「そう三王。俺はその三王の一角、陸王の眷属、うしとら。俺そいつら回収しに来ただけだよ。本当は師団長とやらと戦いたいんだけど陸王の旦那に戦うなって言われてるから。」


 「そういえば君、名前なんて言うの?」


 「悠だ、夜岸悠。」


 「悠か。」


しゃべり方は飄々としているが全く隙がなく一歩でも動いたら殺されるような殺気を放っている。威圧だけでは新田隊の萩原を優に超えている。


 「お前ら本物の魔物いるのにロボットなんか作っていたのか。しかも、まるで人間みたいに完璧なコンビネーションまでして。」


 「それはそうだろ、人間をもとにして作ったんだから。」


 「は?人間がもと?」


艮の衝撃のカミングアウトに悠は困惑した。


 「そう人間がもと。魔物だけでは限度があることもあるからなお前らの世界を侵食した時にある程度生けどりして魔物風に改造したの。同僚にそういう能力者がいてね、まさにマッドサイエンティストだよ。」


 「ちなみに君がさっきまで戦っていたコウモリ型は双子の殺し屋をもとに作ったやつだよ。」


その話を聞いて悠は納得した。ロボットにしては完璧といっていいほどのコンビネーション。プログラミングだけでは説明がつかないほどの正確さ。


 「とりあえず、そいつら回収するよ。俺が怒られるからね。」


艮は、電気ウナギ型とコウモリ型に向かって手をかざすと、黒い霧が発生して電気ウナギ型らを吸い込んだ。


 「あぁ、初めて見たんだったな。俺の能力はいつでもどこでも黒い霧発生させられる。もちろん大きさも自由自在。いつでも魔物どもを召喚できる。土産だ、こいつらの相手してくれや。」


艮は、大きな黒い霧を発生させ大量の魔物たちを召喚した。


 「陸王眷属【四門】が一人、『鬼門』の艮。お前と戦えるのを楽しみにしてるぞ悠。まずはこの状況で生き延びてみな。」


艮は黒い霧で帰っていき、制御室は魔物で満たされた。悠はすぐに制御室を出て校舎の外へ向かった。


 「千秋さん聞こえる?」


 「はい聞こえます。どうしました?」


 「訓練は中止だ。教官室と通信をつないでくれ!」


千秋は悠の声から緊急であると察し、すぐに通信を繋いだ。


 「こちら教官室どうした?」


 「1組の夜岸です。オペレーター棟にて魔物発生。数にして100以上至急応援を求みます。」


 「現在、制御室より逃走中。近くのグラウンドまでおびき寄せています。」


 「了解した。少し持ってくれ、すぐに応援を派遣する。」


 「了解。」


悠が魔物をおびき出しているころ、翔と向日葵はまもなくオペレーター棟へ到着するころだった。


 「翔っち、翔っち聞こえる?」


 「姉崎さん!通信が使えるようになったの?」


 「そうみたい。でも、緊急事態、オペレーター棟に魔物発生、数は100以上1人の生徒が対応してるみたい。近くにいる生徒は師団員が到着するまで応戦せよって。」


 「1人で対応!無茶だ。向日葵行くぞもうすぐ着くから加勢しよう。」


 「ええ、行きましょう。」


悠は逃げ切り近くのグラウンドに出た。魔物たちも続々と校舎から出てきた。


 「おいおい、ほとんどが人型か人獣型じゃねえか。千秋さん師団員が来るまであと何分?」


 「教官によると後、10分ほどだそうです。あと5分程度で近くにいる生徒が加勢に来ます。」


 「OK。千秋さんは周辺を警戒してて、何かあったらすぐに報告して。」


 「わかりました。」


悠は腰に携えていた刀を抜き、構えた。


 「やってやる。」


戦闘を開始して5分後、翔と向日葵が悠のもとへ到着した。


 「翔、あれ悠だよ。」


翔たちが目にしたのは耳から血を流しながら四方八方からの繰り出される魔物たちの攻撃を捌き続ける悠の姿だった。悠は翔たちが到着するまでの5分間自分の聴力に意識を集中して魔物たちの攻撃を捌き続けていた。翔たちは悠のその姿を見て圧巻されていた。


 「翔っち、助けないと多分もうあの子長く持たないよ。倒れる寸前。」


京子の言葉に我に返り、向日葵と悠の加勢に向かった。


 「悠大丈夫か!もう少し耐えてくれ。」


悠は翔の言葉に軽く頷き、戦闘を再開した。だが、悠は連戦の中この戦いは負担が大きく、もうふらふらとしていた。今にも倒れそうな時に死角からの攻撃に悠は反応ができなかった。


 「悠、危ない!」


翔が悠を庇うため前に出て、今にも攻撃されそうになった時、どこからか冷たい空気が流れた。


 「よくがんがったな、翔。俺から離れるなよ、あとは任せな。」


 「氷室師団長!」


氷室が現れた時、魔物たちは氷室に向かって一斉に襲い掛かった。


 「おうおう、熱いアプローチだねぇ。冷やしてやるよ。」


 『八寒地獄はちかんじごく安部陀あぶた


氷室の広範囲を凍らせる技に人型、人獣型全ての魔物は凍り付いた。


 「ちと冷やしすぎたかな?」


 「おい翔、隣のやつは・・・大丈夫そうだな。」


翔は悠に目をやると目を覚ましてはないが気絶しているだけのようだった。


 「よかった。」


 「翔!悠!大丈夫?」


離れて援護していた向日葵が駆け寄ってきた。


 「ああ、気絶しているだけっぽい。あれだけ戦ってたらしょうがないよ。」


 「よかった。私たちが行ったころには耳から血を流しながら戦っていたから。」


 「とりあえず、皆がいるところに行ってな。点呼しているところだろうから。」


 「わかりました。」


翔と向日葵は氷室に悠のことを任せて点呼をしているところへ向かった。


 「本当に頑張りすぎだよ。お前は。」

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