第39話 1547年(天文十六年)8月 北山
ふふふーん。モンペ姿な私はごっ機嫌いっぱい、三郎様が仰るにいっぱしの山ガールなのだ。モンペは初めて履いたけど歩きやすくて快適。なんと木綿を使って仕立ててあるのです。これから領内にモンペを広めるから、菊は率先してモンペを履いて富田や杵築を歩けと言われました。知り合いの女衆にも積極的に勧めろとも。歩く広告塔とかファッションリーダーとかインフルエンサーとか色々おっしゃいましたが『山ガール』が一番しっくり来たのでそれに決定!
かくして今日は三郎様と二人で(お付きのものはいますよ)北山縦走です。急な坂や登りにくい所では三郎様が手を握って引っ張ってくれます。ふふー。別に歩きにくくない所でも手を繋いでいいのですよと、こそっと囁いたら顔を真っ赤にしていました。三郎様かわいい♡
…強訴を鎮圧して帰ってきた三郎様は私の目の前で崩れるように倒れた。今まで生きてきてあれほど恐ろしい思いはしたことがない。何もかもが色あせ、音を失い、固まっていく。何も動かない。どんどん黒く、暗くなっていく。息ができない。胸が張り裂けそう。はっきりわかった。ほんの数ヶ月しか過ごしてないのに、私の世界は三郎様抜きではで成り立たないということを。二度とあんな思いはしたくない。そして三郎様。これからもあのように倒れることがあるのだろうか…多分あるのだろう。私は何ができる、三郎様のために。
隠岐から帰られた三郎様は時間をみて私に学問を教えてくれた。今回は特に算術?というものを集中的に教わった。アラビア数字を習ったが最初はなぜこんなものを教えるのだろうと思ったけど、足し算、引き算、掛け算、割り算を習っていくにつれ、なんと分かりやすい、便利な数字なんだろうと感心しまくり。九九も二桁✕二桁を暗唱できるようになったので、計算がとても早くできちゃう。
「シャレでやらしたら、ほんとに覚えちゃったよ。マジか。先祖インド人?」
三郎様がびっくりしていた。ふふん。
これからは坪内に商いを教わってほしいと言われました。菊は領内の経営(差配ってことよね)をしてほしい、特に楽市を中心に見てほしいと言われました。ふふふん!おまかせあれ。これぞ内助の功、出来る嫁の真骨頂でございます。
突然三郎様が山に登ると仰られた。山??わざわざ登る必要があるのー!
はっきり言ってなんで?と思ったけど三郎様が登りたいのなら付いていくまで。モンペという着物を渡され履いた感想を聞きたいと仰った。今後靴も作りたいと言われた。とにかく出発。鰐淵寺の西にある北山に登られるとのこと。ただ登るだけでなく縦走するんだそうです。私は修験者にならなくてはいけないの…やっぱり三郎様、考えが読めない。
でもいいのだ、これはまさしく逢い引き!!!(お付きはいるけど)大黒語(三郎様のよくわからない言葉を指す)で言うところの『デート』なのだから。そう一緒にいることが大事!嬉しくて嬉しくてどうしましょー!
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