おいでませ、竜の里

第38話

sideアドリアネ


「とまあ、これがここ連日の動きとなります。」


 見ようと思えば、いつでもこちらの世界のことを観測できるでしょうが、一応ヘラ様に報告をします。

 初日の失態以降は、口も挟まず生暖かく見守ってくれていた上司には感謝です、お陰で私のバカンスは出だし好調。


「あんた力の行使しすぎ。」


 それについては、言い訳のしようもないのですが。

 それでも生態系を壊したり、環境破壊(砂浜と森は少し変形させましたが)はしていないですから、あくまでも綾人さんの力添えの為。

 綾人さんの護衛の為に、私に与えられた権限は幅広いが、天使という存在がこの世界に与える影響も無視できない。

 神も天使も、教会側には信仰の対象であるし、そこまで大きな違いも感じとれないから。

 信心深い教徒ならまだしも、厄介な連中も少なからず組織していることも事実。


 報告は他の天使も同席しています、同席といってもオンライン会議のようにその場には居ませんが。

 次の報告はローズのようです、


「綾人さんの生前の来歴を調べてみたんだが…、どうも一般人と呼ぶには、なかなか厳しい生活を送っていたみたいだぜ。」


 語り口から綾人さんの苦労が垣間見える。

 大まかな経緯は最初に綾人さんが口にした通り、母親の蒸発に高校中退、仕事漬けの日々と妹の世話。

 人間的な評判は相当良かったみたいだが、人たらしな性格も相まって嫌がらせやストーカー被害も横行していた。

 人間の負の感情をコントロールすることに長けた神、そいつに描かれた筋書きが綾人さんの人生を狂わせたのだ。

 おっといけない、思わず私と綾人さんの愛の巣を壊してしまいそうになる。

 

「それで外神の行方は分かったのですが?

 まさかホストクラブで遊び呆けていただけではありませんよね?」


 ローズのに焦りが刺す、やはり相手は神だから簡単に尻尾をつかめるとは思いませんが。


「それについてなんだが、綾人さんの父親について、変な事がいつくかあるんだ…。」


 遊んでいただけではないようですね。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 なるほど、それは確かに変ですね。

 そもそも出自にあたる2人ともが行方不明、ローズの捜索にも引っかからないというのは謎ですね。

 この捜査はヘラ様の独断で行われていることなので、他の神に助力を乞うことはできません。


「あと、綾人さんの妹なんだが。

 現在行方知れずになっているみたいなんだ。」


 これは大問題ですよ、ヘラ様の加護が付いている以上は生死に関わることは無いと思いますが…。


「あぁ、それについては大丈夫よ。」


 ヘラ様があっけらかんと言うが、何か知っているのですか?

 片手をヒラヒラと宙に漂わせ、別のことを考えている様子。

 綾人さんの両親の話が出てからは、口数少なくなっている気がします。


「今日はここら辺でお開きにしましょ。

 綾人くんの店がひと段落したら皆んなで伺うとするから、アドリアネよろしくねー。」


 その声に他の天使から歓声があがる、いや待ってくださいよ、大天使全員集合ってどこの終末戦争ですか。

 それも小さな村の言ってしまえばボロ屋に集まるなんて言語道断、ていうか私たちの愛の巣に土足で立ち入らせる訳にはいきません!

 なんとしてでも阻止せねば…。

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