第18話 向こう側の正義_3
#16
HRが終わって放課後。
生活指導の職員室に女子生徒を呼んだ。
「本法です」
職員室の戸口に立つ女子生徒。
ボブカットの元気そうな高校生。
「座って下さい」
一礼して室内に入ってくる本法、則香。
本法が折りたたみ椅子に座る。
「アルバイトして居るそうだね」
「はい」
硬くなっているがはきはきした返事。
「何のアルバイトをしているのですか」
本題の前に外堀から埋めていく。
「電話番です」
「コールセンター?」
電話対応をソフトに女子で対応するところは多い。
「いいえ。」
「帰宅が十時超えることも有るそうだが」
親や周囲から苦情が出たわけではないが、知っていた。
この国では夜間の労働に時間制限が設けられている。
「残業があるときは」
「拒否できるのかな、残業」
学校側としては基本的にアルバイトは推奨していない。生徒の人権、と言えば人権ではあるが、学校の方針として、勉学に専念するように、と言うのが基本だった。
従ってアルバイトの残業で夜十時を超える帰宅は是正されるべき出来事だった。
本法が少し弱気に回答する。
「理由があって、申請しておけば」
「通常何時間働くのかな」
アルバイトが校則で禁止されている訳ではないので、少々嫌味な質問だった。個人的には社会順応の一環として早期労働は推奨すべき事だったが、仕事の都合で学業が疎かになり単位が取れず落第、中退、になっても困る。自覚してもらえば幸いだった。
「16持から20時までの4時間が基本です」
辞めろ、て言われるのかな、と本法は思い出したらしく、段々声に元気がなくなりだした。
「差し支えなければ業種は?」
「電話番です」
守秘義務があるらしい。
社会人としては当然かも知れなかった。
「わかった。ご苦労さま。出来ればアルバイトの業務報告をしてくれると助かるな」
肩を叩く代りに、少々わざとらしく、ニッと笑ってみた。
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