ブラッディライト

一憧けい

1<i m not you> 天佑、身代わりの人

第1話 諭明名絃



青空に二筋の雲を残しながら航空機が頭上を通り過ぎていく。多分UNの監視機だろう。派手なアニメ絵の8tトラックが、大音量で何処かの国の歌を流しながら、かろうじてすれ違うことが可能なだけのアスファルト道路を南へと走っている。

「嫌だな」

警官の一人が自転車を止め、トラックが通り過ぎるのを待つ。

「仕方ないよ」

同行の警官が同僚を諌める。

二人ともトラックの積み荷は知っている。

通り過ぎた車両の影から歩行者信号が見えた。

直ぐに青に変わる。

街は沈黙している。

「行こう」

曲と共に遠くなっていくトラックをにらんで、点滅しだした信号を渡った。



前方50m先に耳障りなポップスを流しながら、8tトラックがフェリー乗り場に停車した。通報に依れば「積み荷」を降ろすはずだった。

警備係の人員が六人ほど、トラックの周囲に展開する。

じっと見守っていると後部の扉が開かれた。

ビルの陰に居た警官隊が突入しようとして、制止が掛かる。

フォークリフトが来てパレットに乗った木箱をフェリーへと運んでいく。

見た目にはただの積み荷の載せ替えでしかない。

「臨検掛けられないんですか」

「此処はもう明治以前だ」

トラックもフェリーも外国籍。国際問題になったら勝ち目がなかった。

敗戦後のこの国では。

「私服を残して撤収」

現場の指揮官が無線で指令。

警官隊は渋々と撤収を開始した。


「所在国外移送ですか?」

キープアウトを越えて男が一人立っていた。

「部外者は局外に出ていてもらえるかな」

「依頼を受けて参りました、諭明(ゆあ)と申します」

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