魔法少女ふたり

十七夜 蒼

第0話 始まりの日

 この世……というか、現代の日本にはニ種類の人間がいる。


『陽キャ』と『陰キャ』だ。


 まぁ待て、『陰キャとも陽キャとも話すやつは何なんだ』と言いたいのはわかる。


 それは、陽キャの中でも陽キャ……『根っからの陽キャ』なんたろう、と私は思っている。


 陰キャの話題についていける程の知識とそれに対する興味、陰キャと関わっているのに陽キャでいられる人気やカリスマ。


 これを持ち合わせている奴が、陽キャ以外なはずがない。


 つまり、私は………





「クラスカーストド底辺の『根っからの陰キャ』ってことだよね……」


 でも、そんな私にも話しかけてくる『根っからの陽キャ』がこのクラスには一人いて、それが……


「おっはよー、真城ましろさん」


「お、おはよ……」


 彼女は今日もその明るめの茶色い髪をハーフアップで纏めている。髪色のせいか、可愛さのせいか、陽キャのように見えるが制服はちゃんと着ており、一切の乱れがない。


 制服をしっかりと着こなすことで伝わるだろうが、彼女はルールというルールを破ったことがないのだとか。


 そんな彼女……『根っからの陽キャ』の少女の名前は柚来ゆずき はふり


 あ、ちなみに私は真城ましろ 清華せいか。黒髪で、ボサボサで、顔は平均より良いけど性格がアレなので陰キャしてる中学2年生。


 そんな真反対な私達が、この後ひょんなことから鬼塚市の平和を守るはめになったのだった……。





「はいどーぞ!熱々の唐揚げだよ!」


「ありがとうございます、事伽こととぎさん」


「あはは、私は唐揚げを売ってるだけ。お礼ならお姉ちゃんに言いなよ!」


「いやいや、私のついでに精華のぶんも買ってるだけだよ」


 この二人は姉妹で、姉が夢々ムムさん、妹が嬉々キキさん。


 嬉々さんはこの揚げ物屋台で、夢々さんは外科医として、それぞれ働いている。


「で、あれから怪我の調子とかはどう?」


「はい、全然問題ありません」


「ん、良かった」


 そう言いつつ夢々さんはパクッと口へ唐揚げを放り投げたが、想像より熱かったのか悶えている。


「にしてもあのときはビックリしたよね〜。私の目の前でこんな可愛い子が轢かれるとは……


 しかも担当医がお姉ちゃんだったのも、巡り合せかな〜」


「はいはい。そもそも轢かれないことが一番なんだよ」


 こんな感じで定期的にこのふたりは私に唐揚げやコロッケとかを奢ってくれる。ありがたいけど、私を太らせる気か?


(……そろそろ時間も時間だし、さっさと食べて帰ろう)


 私がそう思い唐揚げを口に運ぼうとした瞬間……



 ――ビキビキビキ


 地面に亀裂が走り、そこから爆風が巻き起こった。




「っ!?え、え!?」


「わわ、お姉ちゃん……は大丈夫そうだね。精華ちゃん大丈夫!?」


「……これは」


 改めて地面を見ると、やはりコンクリートには亀裂はあり、そこから炎が吹き出してきた。


(よく見ると、炎の柱の中に人影が……!?)




「ひゃひゃ、封印も緩くなっとったから出てきてやったわ!さて、まずは忌々しいここと、『地獄』を滅ぼすかのぅ……」



 その子……いや、はぱっと見は着物を着た私と同い年ぐらいの女の子だが、額には一角の角があった。目つきは鋭く、耳は尖り、口には牙がある。


 そして、見た目よりも不可解なことが湧き上がってくる。


(炎の中で生きていてるし、炎の柱無くなっても空に浮いてるし、むしろ手から炎出てるし、見た目と言い口調と言い……)




「なにこれ……嘘でしょ……」



――――――――――――――――――――――

次回へ続く

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