提案

ブランクによって自分の思い通りに指が動かないことにショックを受けていた絵里奈えりなに、沙奈子さなこは、


「また最初からやり直せばいいと思う」


そう提案してくれた。これには絵里奈も、


「そうだね。じゃあ、玲緒奈れおなの服でも作っていこうかな」


笑顔になって応えてくれた。僕が『焦ることはないよ』と言った時には少し困ったような笑顔だったのが、沙奈子の言葉にはホッとしたような感じだったんだ。僕の言葉よりも同じ<洋裁が趣味>であると同時に<仕事>でもある沙奈子の言葉の方が具体的で届くものだったみたいだね。


パートナーのはずの僕の言葉よりも血の繋がらない娘の言葉の方が届くというのはちょっと残念だけど、それでいいと思う。


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