赤の他人の意識と視点

たぶん僕自身もあの時の状況を自ら知らずの赤の他人の意識と視点で見ていたら、


『引き離すべきだ』


と思ってしまっていた気がする。


それでも当の沙奈子さなこにとって僕と引き離されるのは途方もない恐怖だったらしくてパニックを起こしてしまって、その場にあったボールペンを自分の左腕に何度も突き立ててしまったんだ。


『ケガしたらおうちに帰れると思った……』


彼女はそんなことを言ったよ。彼女の言う<おうち>は、当時に僕と一緒に暮らしてたワンルームのアパートだったから。


この時は結局、元々の担当者の人が駆け付けてくれて沙奈子は僕のところに残ることになったけど、それが正解だったのもあくまで結果論でしかなかったと思う。


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