仮にも人間だったから

僕の両親は、自分の気に入らない相手のことは、それこそ、


『人間じゃない』


とまで平気で言うような人だった。ううん、『言う』じゃなくて、本当に人間として扱わないような人だった。


だから自分達が望んでなかった子供である僕のことは、


<家に勝手に上がり込んだ野良猫>


みたいにしか思っていなかったし、そういう扱いをしてたんだ。


だけどもちろん僕は野良猫なんかじゃないし、仮にも人間だったから自分達の扶養にある間に死なれると責任を問われる可能性があるという程度のことは理解していたことで死なせないようにはしていただけなんだ。


そんな両親を見て育った兄が沙奈子さなこのことを人間として扱わなくたって何の不思議もないよ。


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