それこそ人間に虐待された上で捨てられた犬のように

沙奈子さなこが僕の部屋に捨てられていった当初は、僕としても本音ではただただ迷惑に感じていただけだった。彼女に対する同情よりも、自分の生活を乱されるのが嫌で、一日も早く兄が彼女を引き取りに来るのを願っていた。


何しろ当時の沙奈子は、それこそ人間に虐待された上で捨てられた犬のように怯えきっていて、まともにコミュニケーションさえ取れない状態だったんだ。それに加えて僕自身もコミュニケーション能力なんて無いに等しい子だったから、居心地の悪さだけで目眩を起こしそうなくらいだった。


そんなひどい出だしだったんだよ。


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