第31話 星環転生
「ほぉら、これでサッパリだ。綺麗になったね」
「さっぱりー!」
コンテナちゃんをお婆さんに託し、それからおおよそ一時間後。
どうやら
といっても、お婆さんの上着を被せられただけみたいだけど。
僕もその間に魔力を補給させてもらっている。
ヴァルフェルと互換のある魔力供給機があるなんてビックリだったよ。
なんにせよ
「お嬢ちゃん、もうねんねするかい」
「んーん、ねむくなーい」
「そうかい。なら、アンタ
「うん!」
「それじゃあ、絵本は好きかい?」
「すきー!」
「ならちょっと待ってな、今とっておきの絵本を持ってきてやるから」
小言は言うけど、すごく思いやりを感じさせてくれる人だ。
こうやってコンテナちゃんの事も面倒見てくれるし、扱いが上手だし。
それで絵本を持ってきてくれて、コンテナちゃんに渡してくれた。
するとコンテナちゃんは早速と、近くのソファーに寝っ転がって読み始めていて。
で、お婆さんは家の入口に鎮座する僕の傍へ。
「あたしゃ趣味で絵本を作っていてね、たまに他所の国に寄贈したりするんだ。子どもが好きだからね、扱いにゃちょいと自信があるのさ」
「さっきの話し方でそれがすごく伝わった気がします。ほんと助かりました」
コンテナちゃんのような特殊な子の扱いにも馴れているんだろう。
あの子はなまじ何でもできるから、下手にかまうよりもこうしてほっといた方がいいみたいだ。
その証拠に、コンテナちゃんはもう絵本の世界に没頭しているみたいだし。
それに、お婆さんは僕に話したい事もあるようだ。
「で、アンタはアテリアについてどれくらい覚えているんだい?」
「全く、ですね。魔力が人より高い事は友人に教えてもらいましたが」
なのでお婆さんが入口前に椅子をコトリと添え、毛布を羽織って座る。
絵本を読みふけるコンテナちゃんを見守る様にしながら。
「そうかい。ま、アンタはあの子を悪用するような悪人じゃあなさそうだし、少しだけあの子について補足しといてあげようかね」
「助かります。知っておけば出来る事もありそうだし」
そのアテリアについては僕も興味があった。
なぜ魔力が高いだけで色んな国が欲しがるのかって。
たったそれだけなら普通の人を数人集めるのと変わらないだろうし。
なのでせっかくだと、お婆さんの話を聞く事にした。
「人が死ぬと、宿っていた魂は星へ還り、記憶と知識、知恵を捧げて新たな命へとまた宿る――この逸話は知っているかい?」
「はい。確か昔から言われている転生伝説ですよね」
「そうさ。でもそれは限り無く真理に近い」
「えっ!?」
「魂はね、肉体へ宿っている間に得た知識や知恵を溜め込む習性があるんだよ。そんな情報が活力となり、
そうして始まったのは、まるでアテリアと何の関係も無いような話で。
だけど聞き入らずにはいられなかったんだ。
この話にはアテリアだけじゃない、別の真実さえ垣間見えそうだったから。
「そうして生命波動を高めた魂は、いずれ肉体の死と共に大地を離れ、星へと還る。成長に費やした星のエネルギーを還元する為に生命波動を捧げるのさ。そして再び真っ白となった魂は新たな命へ。その一連の仕組みを、私は【
「ソウル、サイフォン……」
「星はね、その行為を多くの魂で幾度となく繰り返して成長するのさ。長い長い時を掛けて少しづつ、少しづつ」
途方もない話だと思う。
まるで人類史さえもが覗き見えてきそうな程に。
まさか道徳を諭す為の作り話だと思っていた事が事実だったなんてさ。
もしかしたら、過去の人はその事実を知った上で道徳教育を組み立てたのではなかろうか。
「そしてこの星エンベンタリアは長い時を経て、ようやく大きな成長を果たした。そこで星は今までのお礼にと、特に貢献した人類へ特別変わった魂を送り出したのさ」
「特別な魂……それって!?」
「そう、それがアテリアだ」
しかもそうして発展し続けたお陰でアテリアがこの世に産まれ落ちた。
これを理屈の知らない人が聞けばきっとこう答えるに違いない。
「単に人類が進化しただけでは」と。
けどそれは明らかな間違いなんだ。
「アテリアは知っての通り、とてつもない魔力を秘めている。しかしてその正体は、星から授かった知識と知恵によるものなのさ」
「星からの知識と知恵……膨大な、生命波動!?」
「そう。あの子達は生まれながらにして、多くの知識とそれを活用できる知恵を既に身に着けている。しかもあまりに強く固着しているがゆえに、その知識と知恵は死んでもなお還元されず、魂に残り続けたまま転生するのさ」
肉体的に進化しても、生まれた時の知識はゼロだ。
知能指数が昔よりも上がっていても、結局は肉体や脳の
けどアテリアは違う。
彼等はその脳の容量とは別に、魂の追加容量を持っているんだ。
しかも生まれた時からその魂の追加容量分の知識をも積んで。
これがあのコンテナちゃんの異常なまでに広い知識の秘密だったのだろう。
それだけじゃ説明の付かない事もあるけれど。
なるほど、それなら世界が求めるのもわかる気がする。
彼女達はいわば、星が蓄えた知識の宝庫みたいなものなのだから。
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