第555話・眷属を作ってみよう

 ところで、眷属ってどうやって作るんでしょうか先生。


「ん?」


 フォンセ先生、ちょっと首を傾げた。


「んんー……じゃあ逆に聞くけど」


「?」


「友達の作り方って、教えてもらったことがある?」


 …………。


「えーと、そんなノリで大丈夫?」


「だって私そんな感じなんだもん」


「そう言えばフォンセ、会うたびに随分印象が変わっているような気がするけど」


 初対面は気ままで恐ろしい存在。おもてなしの時は無邪気な少女。スピティ神殿騒動の時は威厳ある癒しの女神で、今は厳しい教師。


「しょうがないじゃない。私だって精霊なんだから。周囲の影響を受けたら変わっちゃうの」


「精霊だから?」


「そう。あなたみたいに生まれながらに肉体で守られているわけじゃないもの。この肉体だって私が創った仮の肉体だから、外からの力や意思に影響されちゃうの」


「じゃあ、肉体持ってるぼくは」


「その肉体に入っている限りは、誰かの影響を受けることはない。それより、眷属の作り方。今頭の中でまとめておいたから、教えるわね」


 領域を作りなさい、と言われ、光闇の領域を広げる。


「精霊を招く」


「招く?」


「ここに来てもいいと思う精霊は来て、と願うの」


「願うの?」


 それはまた簡単な。


 とりあえず願ってみる。


 精霊さん精霊さん、この領域に入りたいって言う精霊さんはここに来て下さい。


 すると。


 領域の中に、わらわらと寄ってくる気配。


 何か、細かい精霊がやってきている。一応闇の系列だけど、薄闇とか星明りとか火影とか。


「結構来てるわね」


 フォンセは結界の中には入ってこない。何でも今はフォンセの方がはるかに使える力が大きいので、領域とかに影響を与えたらいけないからって。声だけ届けてくる。


「その真名を預けてもらいなさい。そうすればその精霊たちはあなたの眷属になる」


「え? 真名って、預けたらヤバいんじゃ?」


「ヤバいわよ。特に、精霊にとって、真名を預けるって言うのはその全存在をあなたに捧げるってことなんだから」


 いやいやそれはまずいでしょ。そこまでしてぼくにつきたいって精霊が……。


 いたぁ?!


 何か続々と真名を預けてくる。何か学問所に始めて入った時の自己紹介みたいなノリで名前預けて来るんですけど?!


「弱く不完全な精霊たちは、自分より強い精霊に真名を預けて存在を固定してもらうの。名前を預かる精霊が強ければ強い程安定した存在になれるから、あなたや私ランクの精霊神が簡単に集めようと思ったらすごい勢いで集まるわ」


 いや、転移が得意な精霊を眷属にするって話でしたよね?


「集まった精霊たちをまとめる」


 まとめる?


 闇の聖地では肩身の狭い光混じりの小さい精霊が領域一杯うじゃうじゃ状態なんですけど、まとめるってどうすれば?


「あなた小さい頃に泥団子作ったでしょ?」


 そんなノリ?!


「そんなノリ。とりあえず手近なのをぎゅっぎゅって握って転移が得意な精霊になれって念じる。手近な精霊がまとまったらまた次の精霊をぎゅぎゅって。そんな感じで大きい精霊を作ってみなさい」


 ええー? 精霊の生まれる方法ってそんななのー? 何かもう神秘的で不思議で難しくってって思ってたんだけどー?


「人間がこうすればできるかもと思った、色々な準備とか薬とか精霊を集める方法とかがあって恐ろしく長い時間使って最終的に失敗する方法はあるけれど、それでもいいなら」


 ……分かりました泥団子を作ります。


 とりあえず、手の感覚を精霊寄りにして、ぼくに名前を預けた精霊たちを手の内に集めてぎゅっ、ぎゅっ。


 ん?


 まとまった。


 薄灰色の何か丸いの。エネルギー体だから決まった形を持ってないんで、握られたまま歪んだ丸で安定してる。


 転移が得意な精霊になーれ。転移が得意な精霊になーれ。ついでにエキャルとも仲良くしてください。


 思いながら固めていくと、手の中でゆっくりと形が変わっていく。


 あれ?


 あれれ?


 何でエキャルと同じ形になった? 色は薄灰色だけど、形はエキャルまんまじゃん!


「いらないことを挟んだから」


 何でですかフォンセ先生!


「エキャルと仲良くなってくれって願ったでしょう?」


 はい。


「だからエキャルに近い姿に寄っちゃったのよ。あなたがエキャルを想像したから」


 そんなんで形変わるのか。迂闊なこと考えられない。


「まあ、エキャルと仲良くしてほしいんなら、エキャルと同じ形になっても仕方ないか。これってエキャルに見える?」


「動物なら気配を察知できるでしょ。エキャルと仲良くしてほしいって意識が入ったから、エキャルなら視認出来るわね」


「そうなの?」


「精霊と相性のいい人間や動物が精霊の存在を察知できるってあるでしょ? それ。エキャルと仲良くすることを願われて生まれた精霊だから、エキャルには分かる。エキャルがどう思うかは知らないけど」


 ん~……エキャルの出方かあ……。


 ライバル出現! とか思っちゃったりして。


 いけない、それじゃダメだ。エキャルを運んでもらわなきゃなのに仲が悪かったら……。


「エキャルに言って憑ければ?」

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