ファサード(漫画)
前回紹介した「沈黙は星々の乾き」と関連した篠原烏童作品です。
「ファサード」とは主人公のファサード本人曰く、
「外づら」
という意味になるらしいです。
検索をかけてみると、
「建物を正面から見た時の外観」
というのが一般的に知られる建築用語らしいのですが、元はフランス語で英語の「フェイス」と同じ語源のようです。
見た目は西洋人の男性のファサードですが、その中にはいくつもの人格、と言っていいのでしょうか? 人と言えるのはファサードだけなんですが、とりあえずそういうものが存在しています。
狼の外見を持つ「ウルフフェイス」、4枚の翼を持つ白鳥のような「ツイン」や龍のような「ナーク」に意識だけの「プロフェッサー」などが存在しており、その代表がファサード、まさに本人が言うようにみんなの「外づら」です。
人格から人格が交代するには、なぜか一度ファサードを通さないといけないのですが、内部では勝手に話をしたりもしています。
このファサード、もう一つ不思議な特徴が、
「色んな時代、色んな世界に本人の意思は関係なくぶっとばされる」
というものです。
第一話は1999年に戦争が始まった世界の東京です。それまでにも日本には来たことがあるらしく、日本らしいがこの有様はどうだ? そう思っていたところで、食べ物を奪われそうになっている少年「トキオ」と出会います。
トキオは双子の妹と3人で生き残り、崩壊した東京で暮らしていますが、もっと違う場所へ行きたいとも考えています。ですが、どこにどう人間が生き残っているか分からず思い切ることができません。そしてファサードはそんなトキオたちを助けることになります。
ある時はウルフフェイスと同時に出て狼男のようになり、ある時はツインの翼を持つファサードとして空を飛び、トキオと妹たちの3人を新天地へ送り届ける手伝いをするのですが、その途中でまたいきなり、今度は数年後のトキオたちのところへと飛ばされてしまいます。そして彼らの未来を知り、知ったまままた過去に戻り……
こんな感じで実在の世界、想像の世界、色んなところへ飛ばされてお話が展開します。
江戸時代の日本、古代エジプト、古代マヤ、実在はしないおとぎ話や神話の世界。
現在も続いてるらしいのですが、私は15巻までしか持っていないので、その先はまだ未読です。
そしてその7巻、8巻、9巻で、前回の「沈黙は星々の乾き」の舞台、惑星ディネターに飛ばされることになりました。
面白かったのが15巻にある日本神話の世界なんですが、なぜかファサードは「
というのがですね、この日本神話の世界、人物の女性は全員ひよこ! その世界で4枚の羽、2対の翼を持つツインが「アマテルたま」と呼ばれて崇拝されております。ファサードやウルフフェイスたちが意識を取り戻したら、なぜかそんな世界に飛ばされている。
ひよこさんたち、みんなくちばしなので「さま」が「たま」としか発音できない! それで「あまてるさま」が「あまてるたま」と。「さ行」がみんな「た行」でお話するのがなんともかわいらしい。
そしてなぜか男性は人型なんですが、若い頃は髪もひげももっさもさでうっとおしいのに、成人すると神話に出てくる「みずら」を結って、古事記に出てくる男性の形になります。
鳥がひなの頃はほわほわなのに、大人になると産毛が抜けてすっきりするのと同じ理由らしいですが、大笑いしました。
ファサード、分類するとなんといっていいのか分かりませんが、一応ファンタジー?
多分、何巻から読んでもそこから楽しめる作品だと思いますので、目にする機会がありましたら、ぜひとも。
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