03
2日目以降から先生と打ち合いの練習を開始する。さすがに真剣では出来ないので、木刀を使った打ち合いだ。
「フッ!」
先生から横なぎの一閃に反応して防御の姿勢を取ると、それはフェイクで別角度からの一閃が飛んでくる。
ガッと木刀が体に当たる。とても痛い。
「おっと大丈夫かい?」
「――ちょっと……まって下さい」
いい所に入り息ができなくなる。打ち合いが止まったので、いい機会なので先生にフェイクについて聞いてみることにする。
「先生、フェイクについて教えてくれませんか」
「うん、構わないよ」
よいしょ、と言って先生は地面に座る。少し動作がおっさん臭い。
「アーサーはフェイクはなんのためにすると思う?」
「……相手を騙すためですか?」
「そうだね。でも騙すのはあくまで過程であって結果ではない。フェイクというのは本命を当てるために打つんだ」
「なるほど……」
「だからフェイクというのは結果的に本命が当たれば成功だといえるよね。だからその過程で如何に騙せるかが大事になる。」
神様からの特典で剣術の才能を手に入れた。人によって才能に対しての解釈の違いがあるが、俺は才能は磨いていくものだと思っている。どんなに剣術の才能があろうと、その能力を磨かないと花開くことはない。
「フェイクは主に2種類だと思っている。まずは本当のような嘘の攻撃だね。達人になると肩の動き、剣のちょっとした動作、目の動きなんかもフェイクとして使える」
その動きをして相手に間違った対応を取らせるフェイクだ。間違った動きをさせて、こちらの本命を当てる。
「もう1つが嘘のような本当の動きだね。フェイクというのは偽物の情報をいかに掴ませるかが大事だ」
「嘘のような本当の動きというのは、どういう動作でしょうか」
「相手に思いもしなかったと思わせる行動だね。例えば崩れた体制で渾身の一撃を放つ、とかかな。相手に『なにっ!?』と思わせればいいんだよ」
それは、そもそもそういう動きが出来ない状況だから『なにっ!?』と思うのであって、どうやればいいかは分からない。
「では、さっきの先生の一撃は【本当のような嘘の動き】で間違った行動を俺に取らせ、一本を取ったってことですね!」
「ん、いいや違うよ」
「え――」
「あれは【本気で当てようとしたけど、防御されそうだったから辞めて別の攻撃をした】んだよ」
フェイクの道は難しい。
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