參第91話 コストート経由ルノートへ

 ロンデェエストと王都に入れるバロトゥムの町からどちらに行こうかと考えたが、王都に入ることにした。

 いつもロンデェエストから北や西へ動いていたので、王都を西に抜けてコレイル領からエルディエラ領に入って行こうと思った。

 レーデルスに行くには、ロンデェエストからだと風景が退屈といえば退屈なのだ。

 贅沢になったなー、俺も。


 カザリエスに入ってすぐに中央区へ馬車方陣で動き、この間行き忘れていた魔法師組合に寄ってから西へ向かう。

 魔法師組合にはまた方陣札を預けたので、シュリィイーレの市場で買い過ぎてもなんとかなるだろう。

 皇国だと冒険者組合は全然ないけど、魔法師組合は全部の町にも村にもあるからな。

 そうだ、コレイルとエルディエラの地図を買っておくか。


 中央区から目指すのは、コレイルのリッテルロという町に入れる越領の町ルノートだ。

 まずは少し北側に逸れるがカスレーか、ラントア山地を越える必要があるコストートのどちらか……カスレー方面はロンデェエストに景色が似ているらしいから、コストートに行ってみることにした。

 中央区ほどではないが、石畳の広めの街道が続き幾つかの村が点在している。


 この辺りも王都ではあるが、中央区で商売する商会が囲っている加工工房などが多く、村ごとに染め物だったり革細工だったりと特徴があって、服や鞄、靴などを作っているらしい。

 地代はかかるが他領からの入領費や移動代を考えると、なるべく王都ちょっかつち内の方がいいということだろう。


 村といっても家や建物は町といって差し支えないくらい立派で、在籍人数が少ないから村扱いになっているだけのようだ。

 他領からの出稼ぎが多いってことなのだろうな。

 王都では、五年以上働いてて保証人がちゃんといないと在籍地登録ができないというから。

 でも、王都在籍になると税金も上がるから、変えたくないってのもあるのかもしれないけどなぁ。


 街道には野営もできる広場が設けられていたので、早速カバロ用の天幕を使ってみた。

 あ、俺も一緒に入れる……うわー、これいいなー!

 あんなに小さく畳めるのに、なんでこんなに大きく開くんだ……やたら軽いし。

 タクトの作るものは、理屈が解らんものが多過ぎる。


 俺が中に入っても座って食事ができるし、寝転がることもできる『小上がり』が付けられている。

 ちょっとふわふわで柔らかいから立って歩くのは気を遣うが、このまま横になって眠れるのはありがたい。


 中に入って天幕を全て閉じれば境界設定ができるのか、浄化や洗浄が自動的にかかるみたいだ。

 カバロもめちゃくちゃご機嫌で、入るとすぐにぺたりと座り込む。

 あー……この小上がりっていうか寝床、絶妙な柔らかさだ……横になると気持ちいいー。


 これ、他国に行っても宿なんかとらずに、これでいいんじゃねぇか?

 材料はあの魔竜の鱗だろうから、外からの攻撃なんて受け付けないし、進入も領域指定でできなくなっているみたいだしー。

 これがあれば、心置きなく迷宮の側までカバロを連れて行けそうだなー。

 ……野宿とか野営って……こういうんじゃないよな、絶対。



 翌日、昼過ぎ頃にはコストートの町に着いた。

 この町では、馬車や荷馬車を作る工房が多いのだという。

 コレイルの北側で金属製の部品作っており、エルディエラ南側で幌などの布部分の作製が盛んだから、それぞれ部品のままでコストートに運んで、この近くで切り出される木材で作られた箱部分と一緒に組み立てているらしい。

 町中の店を見ながら、カバロから降りて並んで歩く。

 時折、面白そうな店に入ってみては、新年祝いだという品を買ってみる。


 新しい年に新しく売り出すものや、試作品などを安価で売っているのだそうだ。

 子供の玩具だろう、いろいろな形の馬車が、手の平に載るくらいの小さい物で売られている。

 つい、三個ほど買ってしまった。

 いいや、タクトとタルァナストさんのお土産にしよう。


 そしてここからルノートの町に向かうには、間にラントア山地があるので馬車方陣だけだと言われた。

 続いていそうな道があるのに、通らせないということは何かの採掘場や『接触してはいけないモノ』などの施設があるということだ。

 その『モノ』が物品なのか、建物なのか、人なのかは……解らないが。

 ロートレアのベルタルア連山や、セラフィラントとリバレーラの間にあるトラムガード山脈みたいな『承認者以外の立ち入り』が禁止されている場所だろう。


 馬車方陣を使って王都の最も西にある町、ルノートに到着。

 ルノートは、ラントア山地西側の革製品の町だ。

 残念ながらもうすぐ天光が陰る時刻で、越領門は閉められていた。

 折角町中なんだから宿に泊まろうと、カバロとポコポコと歩いているとなんだか何処も混んでいる。


 この時間が最後の馬車の時間だったからだろう、中心部の宿はどこも入れなかった。

 あれ、馬車方陣から離れると、全然宿がないぞ。

 町中なのに野宿になっちゃうのか?

 いや……今の俺達なら、全然それでも構わないんだが……


 取り敢えず、町の端までぐるっと歩いてみようと、東の山の近くまで行ってみると小さい宿屋と食堂を見つけた。

 泊まれるといいんだがなぁ。

 厩舎がなかったら……天幕で決定だな。


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